まずはこちらのイケメンをご覧ください。
彼の名前は「シン」。恋愛シミュレーションゲーム『恋と深空』に登場する攻略対象のひとり。冷酷無比な暗黒街のボスであり、物理的にも精神的にも激強な男だ。
作中では「他者の力を増幅させることのできる」主人公の力を巡り、シンと主人公は恋の駆け引きをくり広げることになる。
一見すると強面(こわもて)な彼だが、黒猫を保護する優しい一面があったり、一緒にゲームセンターでキャッチャーゲームに興じたりといったギャップを披露してくれる。
『恋と深空』では、シンをはじめとした攻略対象とのさまざまな「デート」ストーリーを美麗なグラフィックで楽しむことができる。
ゲーム本編ではシリアスな恋愛をくり広げつつ、デートやおまけ要素では「多彩なシチュエーションでのんびりとイチャイチャを楽しむことができる」というのがこのゲームの魅力のひとつだ。
そんな『恋と深空』に、冒頭に挙げたシンとの新たなストーリーが実装された。そこに登場するシンの姿がこちら。
何々どうしたどうした?! 魔王のコスプレか?!
……説明しよう。実装されたのは「伝説ストーリー」と呼ばれる特殊なデートストーリーで、本編とは異なるパラレルの世界での物語が描かれる。このストーリーの世界では、「主人公は断罪されるべき魔女」であり「シンは1600年もの間封印されていた竜」となっているのだ。
つまりこの物語においては、これがシンの本来の姿なのである。決してコスプレなどではないのだ。でもその服は流石に気になる……。
正直、この「悪魔・シン」のデザインだけでも語りたいところはたくさんある。しかし、今回の主題はそこではない。じつは今回の伝説ストーリー……内容が マジで 死ぬほど 重い!!
開幕処刑される主人公から始まり、不本意な契約、騙し合いに殺し合い。主人公と攻略対象の間に発生するものとは思えない殺伐とした展開が次々にくり広げられる。恋愛ゲームを遊んでいるのか怪しくなってくるレベルだ。
それでも、最終的にはしっかり濃厚なラブストーリーを堪能できたのだが……。ストーリーを読み終えてホーム画面に戻ったとき、そこで穏やかに座るシンの胸に黙って飛び込みたくなったのは、きっと筆者だけではないだろう。
本記事では先行プレイの機会をいただいた新規ストーリー「雲の彼方へ」の重すぎる物語と、伝説ストーリーを通して描かれる「本編とはまた違ったシンの魅力」についてお伝えしていこうと思う。
※本記事には伝説ストーリー「雲の彼方へ」についてあらすじ程度のネタバレが含まれますが、結末や物語の核心についてのネタバレは避けて執筆しています。
※この記事は『恋と深空』の魅力をもっと知ってもらいたいInfold Gamesさんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。
主人公が攻略対象をガチで殺しにかかる恋愛ゲームがあっていいのか?! 世界を敵に回した竜と魔女の恋が破滅的すぎる
冒頭でも書いたように、伝説ストーリー「雲の彼方へ」は主人公が処刑されるという超ハードな展開から始まる。主人公は魔女として断罪され、怪物の巣くう「深淵」へと突き落とされてしまうのだ。
怪物から必死に逃げる主人公は、深淵に封印された竜と出会い、取引を持ちかけられる。この世界において竜は生まれながらに邪悪な悪魔の化身であり、人間の貪欲な魂を喰らう存在とされているようだ。
しかし主人公は、自身が生き延びるために竜と契約を交わし、彼を封印から解き放つ。
解き放たれた竜・シンは主人公を深淵から連れ出し、ふたりの逃避行が始まる……かと思ったそこのあなた。このゲーム、そんなに甘くない。
封印を解いた衝撃で気を失っていた主人公が目を覚ますと、なんとさっき助けてくれたシンに魂を喰われかけているという大ピンチ状態。目を覚ました主人公はなんとか助かったものの、シンは隙あらば主人公の魂を喰らう気満々だ。
とはいえ、魔女として処刑されるまでは聖堂で育った箱入りお嬢様だった主人公。シンにとっては少々味気ない魂のようで、彼は主人公の魂を育てるため「欲望を叶えてやろう」と提案してきた。
なんとか生き延びたい主人公は「自分を断罪した奴に復讐したい」とシンを聖堂に誘い込み、あわよくば衛兵にシンを倒してもらおうと企むが……。
敵うはずありませんよねえ!
大虐殺の末に聖堂を破壊したシンと主人公は、晴れて「世界の敵」の称号をゲットしてしまう。完全に勇者に討伐される側だ。
そしてシンは主人公の欲望を育てるため、竜のねぐらである洞窟に主人公を住まわせることに。……この洞窟、人間がまともに出入りできるような場所ではないので、実質監禁したようなもの。しかもほぼ確信犯でやっているから質が悪い。
それでもタダでは起きないのがこのゲームの主人公のすごいところ。なんと主人公はシンが油断している隙を突いて、ナイフ片手に暗殺を決行する。
もちろん、あっさり返り討ちに遭ってしまうのだが……命のやり取りがライトすぎる。
こうしてふたりは互いの命を狙いながらも、「世界のすべてを敵に回した竜と魔女」にふさわしく各地で略奪をくり返し、気ままな生活を送ることに。
シンに限らず主人公も余裕で人を殺す。これは竜の影響なのか、それとも主人公に眠っていた魔女の素質なのか……どちらにせよ、破滅的な共同生活であることに間違いはない。
ちなみに、同じ世界観をベースに描かれる星4思念「戮夜に灼く心」のデートストーリーでは、怪我をして帰ってきたシンを手当てするという体で、あわよくば弱点を見つけて殺そうとする主人公とシンのやりとりをASMRで体験できる。
緊張感のドキドキを恋のドキドキとすり替える「吊り橋効果」をこれほど上手く活用している恋愛ゲーム、他になかなか見ないかもしれない。
気を許すにつれて「最強の竜」の化けの皮が剥がれていく。意外とかわいいとこあるじゃん……
本編のシンといえば、冷酷無比な暗黒街のボスとしての顔に加えて、意外と面倒見のいいお兄さん的な一面があったり、動物には優しかったりといったギャップも魅力のひとつ。彼の絶妙な絵心を知ったって心を掴まれた人もいるかもしれない。
伝説ストーリーはパラレルワールドで語られる物語とはいえ、「シン」というキャラクターの芯が変わるわけではない。最強の竜であり悪魔の化身たるシンも、主人公に気を許すにつれて本編のようなギャップを見せてくれるのだ。
時に脱出と暗殺に失敗して意気消沈の主人公に財宝を送って機嫌を取ろうとしたり、時に主人公のために猫を連れてきたり。アプローチとしてはかなりプリミティブ(原始的)で動物的だが、シンなりに考えて、主人公を慰めようとしてくれているのがわかる。
また、この世界のシンは「ある理由」(けっこうなネタバレ要素なのでここでの言及は避ける)から、本編よりもどこか子供っぽい一面を持ち合わせている。
主人公に歌をおねだりしたり、フルーツを取り合って小競り合いをくり広げたり。身長差のある主人公と戯れる姿には微笑ましさすら感じる。
……まあ、その次の瞬間には主人公が暗殺を仕掛けたりするので肝が冷えるのだが。しかしここまで互いに気を許していれば、もはや暗殺もじゃれ合いのようなものである。こんな殺伐としたじゃれ合いがあってたまるか、というのはさておきだ。
主人公も主人公で、シンが本当に自分を殺さないと確信を持つや否や思いっきりシンを振り回し始める。「欲望を叶えてやろう」というシンの言葉をいいことに、町にくり出して買い物三昧、最強の竜を財布代わりにする始末だ。
そしてシンも律儀にそれに付き合ってくれるので、このゴツい男が一周回って健気に見えてくる。
ちなみに、星4思念「戮夜に架ける夢」のデートストーリーでは、心を許し始めたシンが主人公を夜間飛行に連れ出してくれる。
竜にしか見られない上空からの景色を見せてくれるロマンチックなデートの中、急降下飛行で主人公を驚かせるシンのお茶目な一面をASMRで体験可能だ。そしてちゃっかり主人公の暗殺未遂も含まれている。
また、筆者は個人的にシンの「尻尾」にまつわる描写が気に入っている。
優雅に寝そべりながらも尻尾で宝物を弄んだり、取り押さえた主人公に尻尾を絡ませてみたりと、竜の尻尾はときにシンの顔以上に表情豊かだったりする。
どうやらしっかり体温があるらしく、寒がる主人公がシンの尻尾を自分に巻きつけて暖をとるなんてシーンもある。パラレルである伝説ストーリーだからこそできる描写だ。
互いの命を遊び道具にして子供のようにじゃれ合いながら、それなりの幸せを保って暮らすふたり。シンが見せるギャップは、ふたりの間に奇妙な信頼関係が築かれていることを示しているのだろう。お互いに、それ以上の感情を抱いていることに気付くのも時間の問題だ。
……けれども、世界のすべてを敵に回したふたりにそんな時間は残されているのだろうか?
気持ちを通わせたと思ったのに雲行きが怪しいんですけど。シンが抱える”もうひとつのギャップ”が心に刺さる
奇妙な共同生活を通じて、シンと主人公は少しずつお互いのことを知っていく。世界という共通の敵を持ち、生活を共にするふたりの距離はどんどん縮まり、もはや風呂上がりに熟年のカップルのようなやりとりをするまでになった。
シンのことを知るにつれ、自分の中にある感情を自覚した主人公は、ついにその言葉を口に出す。
だが、主人公の告白に対するシンの反応は冷酷な悪魔らしくも、無邪気な子供らしくもなかった。
「雲の彼方へ」のシンには、本編のシンが持たない「もうひとつのギャップ」がある。それは、彼が「1600年以上を孤独に生きた竜である」という事実そのものだ。
この世界の竜は、生まれながらにして邪悪な悪魔の化身であり、人の欲望を弄ぶ。そしていずれは竜自身も欲望に飲み込まれ、理性を失った怪物となってしまうというのだ。
確かに彼は、主人公の小悪魔的な愛情にほだされ、その暮らしに居心地の良さを感じていたのだろう。しかし彼は、そんな愛情がなくとも途方もない年月を生き、その年月の果てに竜の本性を受け入れていた。だからこそ、物語の冒頭でシンは自分を解放してくれた主人公を躊躇いなく喰おうとしたのだ。
長い時を生きた竜であるからこそ、自分が竜の本能から逃れられないことはなによりも良く理解しているシン。そんな彼は、主人公の愛情をただ冷静に突き放した。
否定はしないが、受け入れもしない。シンのそんな反応は、優しさと同時に越えられない壁を感じさせるものだった。むしろ悪役らしく嘲笑ったり、愛情という概念を理解できないでいてくれた方が楽だったかもしれない……。
主人公たちの存在を許さない世界に、呪いとも呼ぶべき竜の本性、そしてなにより幸せな結末を諦めてしまったシン自身。ふたりが愛によって結ばれるにはあまりに障害が多く、読み進める度に雲行きはどんどん怪しくなっていく。
希望があるとすれば、ふたりは互いに対して強い欲望を抱いており、相手を手放すことだけは決してしないであろうということ、そして確かにふたりの間には愛情が存在するということだけだ。頼む、ここから入れる保険があると言ってくれ……!
伝説ストーリー「雲の彼方へ」は、シンの新星5思念「深淵の秘印」と「深淵の彩霞」を手に入れると読むことができる。また、ASMRデートが解放される星4思念を含め、新しい思念を手に入れれば竜のシンと一緒に戦闘に出撃することも可能だ。
力を爆発させたり、尻尾で薙ぎ払ったりと悪魔の化身らしく強烈な戦闘スタイルを見せてくれる。
また、今回紹介した内容は、じつはストーリーの中盤あたりまでしか触れていない。終盤の展開については言及を避けるが、世界のすべてを敵に回した竜と魔女の恋模様は、最後まで重さたっぷりに心を締め付ける物語となっていた。
けれど、最後まで読んだ筆者は思った。非情な世界と膨らむ欲望に押しつぶされそうになりながらも、このストーリーは確かに恋愛ゲームらしい、輝く純愛の物語であったと。
シンの思念が実装される『恋と深空』のアップデートは12月2日より配信されている。運命に翻弄されたふたりの結末は、その目で確かめてほしい。