東海道・山陽新幹線の車両形式は0系、100系、300系……、と100の位が奇数。一方、東北・上越新幹線などは200系、400系と100の位が偶数だった。そして九州新幹線は800系。あれ? 「600系」がない。新幹線の「600系」はどこへ行ってしまったのだろう?
新幹線の「600系」はちゃんと開発され、いまでも走っている。ただし、その車両には「600系」の名前を与えられず、「E1系」になった。
じつは、JR東海が700系の次を「900系」ではなくN700系としたように、東北・上越新幹線などを管轄するJR東日本も、次世代車両の形式番号について悩んでいた。200系、400系、600系……、と続けていけば、やがて800系、1000系、1200系になっていく。前回も書いたように、「1000」の番号は0系の試作車として使われていた。もっとも、それは国鉄時代の話だし、いまは別会社だと考えれば、「1000系」としてもよかったかもしれない。
形式番号が足りない!
JRにはもうひとつ、悩ましい問題があった。在来線車両の形式番号も足りなくなってきたのだ。電車の車両形式は、国鉄時代から電車は数字3桁と決められていた。113系といえば直流電化区間の普通列車用。781系といえば交流電化区間の特急列車用である。形式番号のしくみを知っていれば、数字を見ただけで用途がわかる。
国鉄時代のルールは次のようになっていた。100の位は電化方式を示す。1~3が直流電化区間専用、4~6が交流・直流両用、7~8が交流電化区間専用。10の位は用途を示す。0~3が普通列車用、4が荷物車など事業用、5~7が急行用、8が特急用、9が試験車両。1の位はモデル番号を示す。0と1、2と3、4と5、6と7、8と9が同じ形式で使われ、形式全体を呼ぶときは奇数を使った。
しかし新型車両が次々と登場すれば、やがて番号が足りなくなる。実際、10の位が「8」だけしかない特急用車両の番号が足りなかった。当初は全国から急行が姿を消していたこともあり、急行用の番号を特急用に割り当てた。その第1弾が、1989年に誕生した常磐線特急用の651系だった。
特急用の車両形式は急行からの転用で間に合わせたけれど、国鉄がJRへと分割民営化され、各社が国鉄時代のルールを使い続けると、同じ形式番号が他のJR会社で発生するかもしれない。だからといって、いちいち番号を調整するにも手間がかかる。
番号重複を「E」で回避したJR東日本
そこで、JR東日本は形式名の先頭に「East」の頭文字「E」を付与すると決めた。東を示す「E」を頭につけるだけで、JR他社の番号とは区別できる。在来線では1994年、E351系とE217系がつくられた。新幹線のほうは、600系にEを付けると「E600系」になるけれど、これだと交直両用の在来線用車両とまぎらわしくなる。
そこで、新たなルールとして「E1」から順に番号を付けると決めた。これにより、600系としてデビューするはずだった車両は「E1系」となった。新幹線はJR東日本を代表する路線であるし、「E」が付けば従来のルールにこだわる必要もないという、思いきった判断だった。そう考えると、JR東海のN700系に付与された「N」も、JR東日本の「E」と同じで番号の重複を避けるアイデアといえそうだ。
ちなみにJR四国は、「国鉄ルール」をやめて大手私鉄のような4桁の数字(8000系など)を使っている。今後、JR東海の在来線やJR西日本、JR九州、JR北海道がどんな形式番号のルールを決めていくのか、興味深いところだ。
新幹線の車両形式
営業開始年月 | 形式 | 投入路線 |
1964年10月 | 0系 | 東海道・山陽新幹線(初代) |
1982年6月 | 200系 | 東北・上越新幹線(初代) |
1985年10月 | 100系 | 東海道・山陽新幹線(2代目) |
1992年3月 | 300系 | 東海道・山陽新幹線(3代目) |
1992年7月 | 400系 | 山形新幹線(初代) |
1994年7月 | E1系(600系) | 東北・上越新幹線(初代「Max」) |
1997年3月 | 500系 | 東海道・山陽新幹線 |
1997年3月 | E2系 | 長野新幹線(初代)、東北新幹線 |
1997年3月 | E3系 | 秋田新幹線(初代) |
1997年12月 | E4系 | 東北新幹線(2代目「Max」) |
1999年3月 | 700系 | 東海道・山陽新幹線 |
2004年3月 | 800系 | 九州新幹線(初代) |
2007年7月 | N700系 | 東海道・山陽新幹線(5代目) |
2011年3月 | E5系 | 東北新幹線 |
2012年度(予定) | N700A(N700系1000番台) | N700系マイナーチェンジ |
2013年春(予定) | E6系 | 秋田新幹線(2代目) |
1000形 | 0系試作車(1962年) | |
2000形 | 機関車(1963年) | |
900形~ | 事業用車両に割り当て | |
L0系 | 中央新幹線営業運転試作車 |