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国内外の川を愛し、30年ほど前に鹿児島でも約10年間暮らした。野田さんと一緒にユーコン川を下るなど親交のあった落語家・林家彦いち(鹿児島県出身)に、思い出や野田さんから学んだことを聞いた。
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(林家彦いち)
「野田さんも高齢だったこともあって、もう一回みんなで遊びに行こうとは言っていたんですけど、うーん、結局それが叶わぬままというところがちょっと・・・心残りですかね。」
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◆彦いちさんから見た野田さんは?
(彦いち)「大先輩ですし、アウトドアのレジェンドなので、ひとくくりに僕が言えた立場じゃないんですけど、僕が知る側面では、とにかく中高生時代から野田さんの文章を読んでいて。当時はアウトドアとか野営とかっていうのが、どうしてもボーイスカウト的なものとしてあったんですけど。そうじゃなくて外遊びを自由にしているとことがすごくワクワクしました。ある時ご一緒することがありまして。仲間の輪の中に入れて頂いたっていう感じですかね。で、『おい、彦さん、行くぞ。カナダに行くぞ』って。」
◆「カナダ先に行くけど、財布忘れたから持ってきて」
(彦いち)「野田さんから、『カナダに先に行くけど、財布を忘れたんで持ってきてくれ』っていう電話がかかってきて。忘れた財布を預かって持っていくんですけど、野田さんが住んでた徳島の図書館のカードとか入ってまして、『それも持ってきてくれ』って。そんなのユーコン川でどんな役に立つのか分からないですけど、言うことは絶対なので(笑)。レジェンドの言うことは絶対なので、図書館のカードが入った財布を持って、カナダに追いかけて行った記憶がありますね。いまだに謎ですね(笑)。
◆カナダ・ユーコン川300キロ、カヌーで下る
(彦いち)「僕なんか一歩踏み出すだけでドキドキしているんですけど、野田さんは自分のフィールドみたいな感じでのびのびと。カヌーで下った流域は、グリズリー(クマ)のいるところではあるんですけど、夜はクマのおそろしい話をたくさん聞かせて、人を脅かして安心して自分は寝るっていう。いつまでも…大きなアニキではあるんですけど、ちょっと上のアニキな感じもするし…なんて言うのかなあ…とにかく面白かったですね。クマの足跡を野田さんが自分でせっせせっせと作って、僕は作っているの知ってるんですけど、『でっかい足跡があるぞ』と言ってきたり。父親が子どもになにか教えているような、からかっているような様子もあって(笑)。
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