グラハン電動化加速、JAL・ANAが導入するローダーの機能
羽田空港、電源を整備 環境対策・労働負担軽減
航空会社で貨物の空港地上支援業務であるグランドハンドリングに使用する機材を電動化する動きが加速している。電動化しているのは、手荷物などが入ったコンテナやバラ積みの貨物を積み卸しするハイリフトローダーやベルトローダー。二酸化炭素(CO2)低減など環境問題への対策に加え、静音性の向上で作業者の労働環境の改善につながる。(高屋優理)

日本航空(JAL)が導入したのは、独トレペルが製造した電動ハイリフトローダーと、スペインのEINSAが製造した電動ベルトローダー。2024年12月から羽田空港に導入し、運用している。電動ハイリフトローダーは手荷物や貨物を入れた航空機専用のコンテナやパレットをけん引するトーイングトラクターと連携し、航空機内へコンテナやパレットを搬入、搬出する。電動ベルトローダーは動力コンベヤーにより旅客機の後方のバラ積み専用貨物室から手荷物や貨物を降ろす。
それぞれリチウムイオン電池(LiB)を使用し、オンボードチャージャーを備え、車両で充電ができる。4―5時間でフル充電でき、ハイリフトローダーで半日、ベルトローダーで2日間稼働する。JALは米ボーイング767型機以上の大型機のグランドハンドリングでハイリフトローダー2台、ベルトローダー1台を1セットとして運用。3月にはさらに導入車両を1セット拡大する。
今回、導入できたのは、羽田空港が電源設備を整備したことが背景にある。JALが羽田空港で運用するハイリフトローダーとベルトローダーは現在もほとんどがディーゼルを動力としており、CO2排出の問題を抱えている。
グランドハンドリング企画部の金子誠アシスタントマネージャーは「他の空港の電源の設置状況を調査し、設置可能な空港には順次導入を進めていきたい」と話す。
全日本空輸(ANA)はベルトローダーを、ディーゼルエンジン車から電気自動車(EV)に改修し、24年11月から運用を始めた。グループの全日空モーターサービス(東京都大田区)が1994年から29年間使用し、廃車対象となった車両を改造した。2年がかりで車体の経年劣化した部位の板金などを修理して、レストア(復元)した。
これと並行して、構造設計も自ら進め、電子回路の設計と配線図を書き、この設計に基づき、電子回路を組み上げた。エンジンや燃料タンクを外した上で、LiBや走行モーター、荷役モーター、減速機、電子制御ユニット(ECU)などを調達し、搭載した。
改造したベルトローダーは最速1時間の充電で1日稼働し、1台当たり年間2・1トンのCO2排出量を削減。すでに1台を追加で改造したほか、6月までにさらに1台を改造する計画だ。ANAグループではベルトローダーを386台保有し、ベルトローダー以外にもグランドハンドリングで使用する特殊車両を40種類、約1万4000台運用している。今後、改造する機材を広げることも含め、取り組みを拡大する。