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誤差数㎚実現…物材機構、電顕試料の厚みを制御する新手法

物質・材料研究機構(NIMS)の埋橋淳主幹エンジニアと大久保忠勝グループリーダーらは、電子顕微鏡の試料の厚みを制御する手法を開発した。数ナノメートル(ナノは10億分の1)以下の誤差で狙った厚みに調製できた。電子顕微鏡は厚みによって見え方が変わってしまう。複数の研究室で厚みをそろえると結果を比較できる。人工知能(AI)活用やデータ共有を支える基盤技術になる。

集束イオンビーム走査型電子顕微鏡(FIB―SEM)で試料を削る加工の自動化ソフトを開発した。FIB―SEMは透過型電子顕微鏡(TEM)などで観察する前に試料の観察箇所を露出するために使われる。ただFIB―SEMでは厚みを測れないため、技術者が見た目で判断する職人技になっていた。

そこでFIB―SEMのイオンビームの反射電子の強度から厚みを測る。反射電子は試料内部まで深く侵入してから反射されるため、一定の厚みまでは強度が厚みに比例する。試料ごとに比例範囲を求めてから設定強度までイオンビームで削れば目的の厚みの試料が得られる。実験では18ナノメートルの目標に対して2ナノ―3ナノメートルの誤差に抑えられた。自動化し加工時間も短縮した。

従来は厚みを精密に制御できなかったため、解釈に使うシミュレーションを画像に合わせてきた。これが研究者の間で解釈が変わる要因になっていた。制御可能になると複数の研究室で試料の厚みを統一して検証できる。

FIB―SEMメーカーに機能追加を提案する。大学には無償提供する。ベルギーの国際半導体研究機関「imec」などへ提供する予定。複数の研究室で活用すればデータ品質が向上し、AI活用を加速できる。

日刊工業新聞 2025年02月05日

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