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「現地現物」体験で徹底…トヨタ、足場固めの現在地

礎石を磨く、トヨタの足場固め(下)
「現地現物」体験で徹底…トヨタ、足場固めの現在地

設計者は「ドア道場」で現場の部品組み付けを学ぶことができる

トヨタ自動車のパワートレーンカンパニーDL(ドライブライン)開発部では、品質問題が起きる土壌をなくすべく、全員参加のワーキンググループを立ち上げて駆動部品に関する知識・知見の向上に努めている。その具体的な取り組みの一つが手書きによる図面作成だ。

「(部品の)穴の径の寸法をどこを基準に記載するのかが難しい」と手書き図面のポイントを振り返るのは、同部第1DL開発室の鈴木巧さん。「トリポード」という三つまた部品の製図を担当した。「製造する際には、どこに位置合わせをするのかなどを知っている必要がある。正しい図面がないと正しく作れず、それが品質問題につながる」(鈴木さん)と気を引き締める。

製造現場での工程確認も重要な学びの機会だ。DL開発部ではトヨタの工場に加えて旭鉄工(愛知県碧南市)など仕入れ先11社を回り、工法や工程の理解を深めた。同開発室の矢作優真さんは「現地現物を徹底することをあらためて認識した。製造現場の苦労は設計者として知るべきエッセンスがたくさんあった。(これまで)モノづくりに負荷をかける寸法になっていなかったか」と自らに問う。

同部ではこれらの活動を通して設計者の図面を描く力、図面から製品を想像する力など基礎力の向上を図る。2025年度も学び直しの活動を継続しながら、部品単位でなくユニット(機能部品)に視野を拡大し、分析力を高めるなど設計のレベルを引き上げる狙いだ。

製造現場を体験し、設計者の知見や技能の向上につなげる取り組みは他の領域でも加速する。車体部品の設計者らが取り組むのが「ドア道場」だ。24年夏ごろに設置し、これまでに約100人が学んだ。

同道場ではフロントとリアのドア部品約50点を1日かけて組み付ける。現場と同じ体験をすることで、現場をおもんぱかるような組み立てやすい、作りやすい部品の設計につなげる。クルマ開発センターボデー開発部の匂坂享史主査は「3次元(3D)画像ではなく実体験により工夫できることが分かる。現地現物の重要性をあらためて理解する」と目的を語り、「知見と意識の両面で気付く力を高め、足場固めにつなげる」と説明する。

自ら考え、悩みながらも挑戦を続ける現場が何よりの強みであるトヨタ。佐藤恒治社長は25年も余力づくりと足場固めは全社活動として継続する方針を掲げる。自動車産業を取り巻く環境変化が大きく、速いからこそ“クルマ屋”であるトヨタにとって「クルマをしっかり作る」重要性は限りない。(名古屋・川口拓洋が担当しました)


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日刊工業新聞 2025年2月13日

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