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「地域の役に立てていない」…JR東日本、久留里線の一部廃線

「地域の役に立てていない」…JR東日本、久留里線の一部廃線

JR東日本は久留里線の事業環境を踏まえ、久留里―上総亀山間を廃線とする方針を示した

バス接続・ルート協議

JR東日本が木更津―上総亀山間を結ぶ久留里線の久留里―上総亀山間を廃線にする方針を打ち出した。久留里線が通る君津市や千葉県などと約1年間協議し、スピーディーに一定の理解を得た格好だ。廃線の時期は決まっていないが、廃線になれば、震災以外の理由では初めてのケースとなる。(高屋優理)

「地域の役に立てていない」―。JR東日本の土沢壇千葉支社長は久留里線の厳しい現状をこう表現する。久留里線は1912年に開業し、木更津―上総亀山間の32・2キロメートルを結んだ。その後、廃線の対象となる久留里―上総亀山間の路線9・6キロメートルを延長した。この区間の平均利用人数は87年の1日823人から減少が続き、21年に55人となった。23年は64人に微増しているが、今後も少子高齢化や人口減少の中、久留里線沿線の過疎化が一層進むことが予想される。

JR東日本は「利用者が少ない線区の経営情報」を開示し、営業費用に対する運輸収入の割合を示す「収支率」を公表。この中で、23年度の久留里―上総亀山間の収支率は0・7%と、JR東日本管内で最低となった。収支は2億3500万円の赤字で、100円の収益を得るために必要な経費を表す「営業係数」は1万3580円となった。

厳しい事業環境を踏まえ、JR東日本は君津市や千葉県に検討会議の設置を申し入れ、23年5月に「JR久留里線(久留里・上総亀山間)沿線地域交通検討会議」を設置した。検討会議では、JR東日本が沿線の2243世帯を対象にアンケートを実施し、移動実態を調査し、約半数の回答を得た。この中で、一度の移動需要は多くても20人程度であることや散発的な少数の移動需要があること、高齢化が進み駅までの移動が難しくなっていることなどが明らかになった。

検討会議は24年10月に「自動車中心への交通体系への移行が望ましい」との報告書を公表。通勤、通学などのまとまった移動需要については中型バスやマイクロバスなどによる輸送、散発的な移動需要には、デマンドタクシーによる需要が適しているとした。

JR東日本と君津市などは検討会議設置から約1年、水面下の交渉を含めても3年程度で、廃線の方針を固めた。何年も廃線に向けた協議が続いている区間があることを考えれば、非常にスピーディーに一定の結論が出たことになる。また、JR東日本管内で、大きな震災の被災区間以外での廃線は初のケースになる。

報告書では、まとまった移動需要については、久留里線の運行本数である1日8・5往復以上のバスの運行が望ましいとの見解を示している。また、久留里駅での接続の確保や、バス停の増加、増便など柔軟な運行本数、ルート設定も必要としている。土沢支社長は「廃線ではなく、あくまでモードチェンジ」としており、バスの事業主体や運行形態についても、引き続き協議を継続し、検討を進める方針だ。

日刊工業新聞 2025年02月14日

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