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JRグループでも珍しい…JR東海、基板修理内製で得た成果

JRグループでも珍しい…JR東海、基板修理内製で得た成果

JR東海は電子基板の検査・修繕の内製化を進める

故障原因解明、コストも安く

JR東海が在来線での電子基板の検査・修繕の内製化を推進している。工場だけでなく、車両基地である車両区も一体となった取り組みはJRグループでも珍しい。従来、故障発生時には、メーカーに機器一式の修理を任せていたが、社内での対応により原因の根本解明や予防保全につなげる。修理にかかる費用の削減効果も見込める。1月下旬時点で33人いる社内資格取得者を毎年6人程度増やす方針だ。安全・安定輸送に磨きをかける。(名古屋・狐塚真子)

2021年度に在来線で発生した不具合のうち、約7割が電気的故障によるもの。電子機器に搭載される基板に由来する故障がその多くを占めていた。今後、機器の多重系化や高性能化に伴い、電子基板の搭載数増加が見込まれる中、検査・修繕の内製化による修理対応の迅速化やコスト削減が重要になる。

そこでJR東海は22年10月に名古屋工場(名古屋市中川区)、同11月に五つの車両区に「基板検修室」を設置した。現在は不具合が多く、列車の遅延などにつながりかねない機器を中心に修理する。

その成果が、これまで誤作動が多く発生していた自動列車停止装置の「ATS―ST」の不良原因の特定だ。調査のため恒温槽を名古屋工場に導入し、事象が発生しやすい朝の時間帯の気温環境を再現するなどして原因究明につなげた。

メーカーに検査・修理を依頼していた場合と比べると年間約100万円のコスト削減にもつながる見通し。予防保全の観点から、24年12月からは、機器の不良にかかわらず、全数を恒温槽に入れて検査する方針にも変えた。

2月に名古屋工場(名古屋市中川区)で実施した競技会。参加者は素子の取り換えなどの技術力を競った

車両区では放送用のマイクや、半自動ドアの発光ダイオード(LED)スイッチの修繕を行っており、LEDスイッチ単独ではこれまで500万円規模のコスト削減効果が得られた。今後、名古屋工場では、自動列車停止装置の「ATS―PT」や、ブレーキ受量器用の試験が可能な設備の導入を予定する。

実際に修繕を行うには、外部講習の受講と社内技能認定試験の合格が必須条件となる。社員の認定取得後も、技術力の向上につなげようと、25年2月には2回目となる社内の技術競技会を開催。各拠点から選出された6人の代表者が、修繕の腕前や、不具合の場所を見極める力を競い合い、日々の取り組み成果を発揮した。

基板検修を担当する車両部検修課の市川八郎課長は「ここ数年で『(原因が)分からないから仕方ない』ではなく、『社内で一度基板を見てみよう』と社員の意識が変化したことが一番大きい」と話す。今後は中長期のコスト削減幅や、検査・修繕に関わる最適な人員体制の構築について検証していく方針だ。

JR東海は10―15年かけて年800億円のコスト削減を目指す業務改革の推進を22年に打ち出した。最新技術の活用などによりコスト削減の幅が拡大すれば、同目標達成にも貢献できそうだ。

日刊工業新聞 2025年02月28日

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