試作自動化・AI活用も…産総研「ペロブスカイト太陽電池」開発法を革新
産業技術総合研究所がペロブスカイト太陽電池の開発を進めている。ペロブスカイト太陽電池は薄く軽く、建物壁面や自動車など、従来型は設置困難な場所で発電できる。再生可能エネルギー比率を高める有力候補になる。産総研は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)事業において自動作製システムを構築した。試作効率が10倍になり、開発が加速する。
「条件が数万から数百万はある。人手ではとてもではないが探索しきれない」と産総研の村上拓郎研究チーム長は自動作製システムの意義を強調する。ペロブスカイト太陽電池は光を受け取るペロブスカイト層の上下に電子を運ぶ電子輸送層と正孔を運ぶ正孔輸送層を重ねて電極で挟んだシンプルな構造が特徴だ。ペロブスカイト層では光のエネルギーによって電子と正孔が生じ、それぞれを電極に流し分けることで電流が発生する。
構造は単純だが材料の組み合わせは膨大に存在する。太陽電池は長く使い続けるため、耐久性を担保する必要があった。水分や熱など、劣化のメカニズムはさまざまでそれぞれに対策が必要になる。村上チーム長は「発電効率を高めた上で耐久性を担保することが難しい」と指摘する。

従来のアカデミアは耐久性検証などの論文生産効率が悪い領域を産業界に委ねてきた。そのため高性能とされる材料は見つかるが、実用化までたどり着いた例は限られる。産総研は自動化で研究効率を高めて挑戦する。劣化の原理解明は実用化に不可欠だった。
自動作製システムは1日当たり160枚のペロブスカイト基板を作製できる。それでも数百万条件を試すには数が足りない。村上チーム長は「人工知能(AI)技術で有望な条件を絞り込む。ハードとソフトで探索効率を上げる」と説明する。自動化で試作のバラつきが抑えられ、AIが学習しやすい高品質データを得られるようになった。再生可能エネルギーの普及に向け、開発法自体も革新していく。
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