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EV市場失速が大誤算、車載半導体メーカーが人員削減に動き出した

EV市場失速が大誤算、車載半導体メーカーが人員削減に動き出した

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車載半導体メーカーが人員削減に動き出した。背景にあるのは需要低迷により、在庫調整が長引いているためだ。電気自動車(EV)が急拡大すると車載半導体需要も伸びると見込み、各社はパワー半導体などで供給力強化を急いでいたが、EV市場の失速が大きな誤算となった。業界では車載半導体の需要回復時期が見通せず、影響がさらに長期化する懸念もある。(小林健人)

ルネサスエレクトロニクスは全従業員の数%に当たる最大数百人規模の人員を削減する方針だ。2025年春に行う定期昇給も延期する方針で、実施されれば2年連続となる。同社の24年12月期連結決算は減収営業減益だった。

ある従業員は「会社からの説明は少ない」と不安を漏らす。また、2年連続の人員削減について「(人員削減を)慣例化しようとしているのではないか」と述べ、「『日本はまだ離職者が少ないが、待遇が悪ければ海外では次々に辞めている』と説明があった。嫌なら辞めればいいということか」と憤る。

同じく自動車メーカーを主要顧客にするロームも25年3月期に12年ぶりの最終赤字を見込む。4月に社長に就任予定の東克己取締役専務執行役員は「痛みを伴う改革もあると思う」と言及しており、ある業界筋は「人員削減や工場閉鎖もあるだろう」と漏らす。

欧米メーカーでも同様の動きが出ている。蘭NXPセミコンダクターは全社で最大1800人程度の人員削減を実施する可能性があるとする。すでに独インフィニオンテクノロジーズは24年8月に1400人の人員削減と1400人の配置転換を行うと発表している。加えてスイス・STマイクロエレクトロニクスや米オン・セミコンダクターも人員削減を検討している。

欧州の自動車メーカーは業績が悪化しており、車載半導体メーカーも影響を受けた格好だ。また、自動車の最大市場である中国では現地メーカーの台頭で競争が激化していることも要因の一つだ。日本や欧米の車載半導体メーカーがこれまでのように中国で販売できるかは不透明感が広がっている。

一方、日本ではこの数十年、電機メーカーの半導体事業の撤退に伴い人材の空白が生じた。戦略物資になった半導体では今後、ますます人材の重要性は高まる。各社には継続性という長期視点が不可欠だ。


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日刊工業新聞 2025年03月05日

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