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時速320km・ブレーキ距離15%短縮…JR東日本が開発着手、「東北新幹線」新型車両の全容

時速320km・ブレーキ距離15%短縮…JR東日本が開発着手、「東北新幹線」新型車両の全容

JR東が開発に着手する東北新幹線次期車両「E10系」(イメージ)

座席で仕事、広い荷物置き場

JR東日本は東北新幹線の次期車両「E10系」の開発に着手する。10両編成のE10系は、現在運行する「E2系」「E5系」の後継車両。最高時速は320キロメートルで、地震対策として逸脱防止用のL字車両ガイドを採用するほか、スマートメンテナンスに対応可能なシステムを導入する。2027年に第1編成を完成し、走行試験を実施後、30年度の営業運転開始を目指す。

喜勢陽一社長は「現行のE2系、E5系の後継車両となるが、移動の時間をよりさらに快適に価値あるものにしていきたい」と述べる。車両で仕事や勉強ができる「TRAIN DESK」をさらに発展し、シート配列を1列減らして4列にし、ゆとりを創出。「テーブルでマウスが動かせるようにする」(喜勢社長)と、ビジネスマンや学生を意識し、利便性を高める。コンセントやUSB電源を全席に設置するほか、Wi―Fi(ワイファイ)ルーターを増設するなど、リモート会議などができるように通信環境も改善する。このほか、インバウンド(訪日外国人)の拡大などをにらみ、荷物置き場を拡幅。車いすから降りずにそのまま乗車できるスペースも設置する。

こうした快適性、利便性のベースとなる安全対策については、次世代新幹線開発の試験プラットフォーム(基盤)「ALFA―X」で検証してきた技術を活用。L字車両ガイドに加え、高減速度ブレーキで、現状より15%のブレーキ距離短縮を実現。地震時の揺れを吸収し、車両の損傷や脱線を防止するための左右ダンパーなどを採用する。

また、走行しながら軌道の状態を監視する軌道検測装置を採用し、スマートメンテナンスの装置を支える、大容量データに対応したシステムも導入する。持続可能な鉄道システムの確立に向けて、冷却モーターが不要なブロアレス誘導電動機を採用。車両駆動インバーターに高効率な炭化ケイ素(SiC)素子を採用することで、車両駆動システムの効率向上を図る。自動運転に向けた機能搭載の検討、準備も進める。

このほか、新幹線荷物輸送サービス「はこビュン」の拡大を見込み、荷物輸送用ドアを設置。旅客と貨物の動線を分けることで、スムーズな輸送の実現を目指す。始発、終着駅以外での積み下ろしも可能とすることで、はこビュンサービスの利便性向上にもつなげる。

外装は英国のデザインファーム「tangerine」が担当し、東北地方の山々を想起させる緑色を基調としたカラーリングとした。JR東日本が海外のデザインファームを採用するのは、初めてとなる。

JR東日本はこれまで最高時速360キロメートル運転を目指し、技術開発を進めてきたが、E10系は同320キロメートルでの運転を見込む。喜勢社長は「360キロメートルは技術的には可能だが、第1編成は320キロメートルを前提に作り、次の課題として位置付ける」と話す。詳細な仕様については、設計を進めながら固めていく方針だ。

日刊工業新聞 2025年03月06日

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