Location via proxy:   [ UP ]  
[Report a bug]   [Manage cookies]                

“在来種のアリはヒアリの定着を防ぐ”ネット上にウワサ広がる → アリの研究者は「在来種では勝負にならない」

ヒアリ強すぎ……。

» 2017年07月10日 21時00分 公開
[イッコウねとらぼ]

 外来種のアリ「ヒアリ」が各地で発見され、人的な被害や生態系への影響が懸念されています。ヒアリの危険性が続々と報じられる中、ネット上では「在来種はヒアリと戦ってくれるので、むやみに殺虫剤をまくべきではない」とのウワサも流れています。

 ヒアリはどのくらい危険な生物なのか、一般家庭ではどのような対策を講じるべきなのか、また在来種は本当にヒアリと戦ってくれるのか。環境省に問い合わせたところ、アリの生態に関しては専門家でないためコメントできないとのこと。そこで、アリの生態系に詳しい日本蟻類研究会所属の准教授に取材しました。


ヒアリ 在来種 在来種VSヒアリの行方は……

 准教授はヒアリに刺された時の危険性について「警戒はするべきですが、アナフィラキシーショックさえ起こさなければ、命を落とす危険性は少ない」とコメント。しかし、アリ塚を踏んでしまうとそれをきっかけに襲ってくるケースがあるほか、子どもが誤ってさわってしまい襲われることもあり、その攻撃性の高さから油断は禁物としています。また、刺された時の痛みは強烈で「子どもであれば泣き叫んでしまうほど」だとか。

 人的被害に注目しがちですが、それ以外にも従来の日本の生態系を破壊してしまう危険性も。また、家畜への被害や植物の根にかみつくことによる植物への影響も懸念されているそうです。


ヒアリ 在来種 誤ってアリ塚を踏んだりしないように注意(東京都環境局より)

 ネット上で言われる「日本の在来種がヒアリと戦ってくれる」という話については「ヒアリは非常に強いため、勝負にならない。戦ってもほぼ在来種が負けてしまうだろう」とコメント。かつて、アメリカにヒアリが侵入した時にもアメリカの在来種はヒアリに追いやられてしまったそうです。

 今後ヒアリが日本に定着する可能性については、「なんとも言えないが、気がつくと増えていたということはあり得る。女王アリが次々見つかるようなことがあれば、その可能性はある」としました。

 ヒアリの対策について、殺虫剤をまくことはある程度有効ですが、それも抜本的な問題解決につながらないとのこと。現状、ヒアリの「弱点は無い」(准教授)そうです。


ヒアリ 在来種 殺虫剤は抜本的な解決にはならないようです

 また、東京農工大学 農学研究院 動物生命科学部門の佐藤俊幸准教授にも話を聞きました。やはり在来種で天敵となりうるアリや寄生蠅といった生物は、現状国内には見当たらないそうです。ヒアリは攻撃力も繁殖力も高く、ひとたび定着すれば新たな女王アリが巣別れしていき、あっという間に生息域を拡大していくんだとか。

 既に定着している北米では、在来種のアリがいるフィールドといないフィールドに女王アリを単独で置いた場合、在来種のアリがいるフィールドで女王アリを排除したという実験結果もあると佐藤准教授。しかし、これはあくまでも営巣初期の女王アリ単独の場合です。働きアリがいた場合、抑止することはほぼ不可能だそうです。

 現在はまだ定着は確認されておらず、水際で防げるかどうかという状況。ヒアリは「港湾施設や都市部など人の手が入って整備されているところのほうが定着には好都合」なんだとか。在来種のアリもおらず、ヒアリの女王アリが単独でも営巣しやすければ定着も容易になるのは明らかです。「過剰反応でなんでもいいから周辺の在来種のアリを殺しておけば安心という問題ではない。在来種にとってもいい迷惑」と佐藤准教授。

 22年前に大阪で初めて発見された特定外来生物の毒グモ「セアカゴケグモ」は、現在41都道府県にまで生息域を広げています。ヒアリの場合も、定着を許せば交通網の発展もあって飛び火的に生息域を拡大していく可能性も高いと、この段階での定着阻止こそが重要と注意を呼び掛けています。

※【追記】7月11日12時に東京農工大学佐藤准教授のコメントなどを追記しました。また、当初ヒアリに「かまれる」という表現をしていましたが、「刺される」に修正しております。

関連キーワード

ヒアリ | 取材 | 家畜 | 家庭 | 研究者


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2502/08/news015.jpg パパに抱っこされる娘、13年後の成人式に同じ場所とポーズで再現したら…… 「お父さん若返った?笑」「時止まってる」2人の姿に驚き
  2. /nl/articles/2502/10/news083.jpg ありふれた鍵の穴に、毛糸でビーズを編み付けると…… 自慢したくなるふわふわアレンジが話題【海外】
  3. /nl/articles/2502/09/news037.jpg 着陸する戦闘機を撮ったはずが…… タイミングが絶妙すぎる1枚に「一部の専門家には貴重な一枚」 投稿者に話を聞いた
  4. /nl/articles/2502/09/news026.jpg スーパーで売れ残った瀕死のケガニを水槽に入れたら……翌日、まさかの展開 胸を打つ光景に「鳥肌立った」「泣きそう」
  5. /nl/articles/2502/09/news027.jpg マインクラフトで作った“超有名ゲームでおなじみの場所” 2カ月かけて建築した大傑作に絶賛「背景まで……」「全部ブロックだ!」
  6. /nl/articles/2502/09/news024.jpg 海釣り中、黒猫に「ちょっと来い」と呼び出された釣り人 → 付いて行くと…… 運命のような保護から2年、飼い主に話を聞いた
  7. /nl/articles/2502/10/news027.jpg ふと横にいる1歳息子を見ると……“まさかの姿”が100万表示 ママ絶叫の光景に「あああ!!」「これは尊すぎてやばい」
  8. /nl/articles/2502/09/news043.jpg 太巻きずしを手軽に作る方法が目からウロコ “身近なもの”で簡単にできる技に「天才的」「もっと早く知りたかった」
  9. /nl/articles/2502/06/news012.jpg 古いバスタオルをザクザク切って縫い付けると…… 目からウロコの再利用に「すてきなアイデア」【海外】
  10. /nl/articles/2502/10/news028.jpg 散歩中、花を見つけた柴犬が…… “1秒後の展開”に感涙の声「ほわああああ泣ける」「あと100000000000年生きるべき」
先週の総合アクセスTOP10
先月の総合アクセスTOP10
  1. ドブで捕獲したザリガニを“清らかな天然水”で2週間育てたら…… 「こりゃすごい」興味深い結末が195万再生「初めて見た」
  2. 「配慮が足りない」 映画の入場特典で「おみくじ」配布→“大凶”も…… 指摘受け配給元謝罪「深くお詫び」
  3. 母「昔は何十人もの男性の誘いを断った」→娘は疑っていたが…… 当時の“モテ必至の姿”が1170万再生「なんてこった!」【海外】
  4. 風呂に入ろうとしたら…… 子どもから“超高難易度ミッション”が課されていた父に笑いと同情 「父さんはどのようにしてこのお風呂に入るのか」
  5. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  6. 市役所で手続き中、急に笑い出した職員→何かと思って横を見たら…… 衝撃の光景が340万表示 飼い主にその後を聞いた
  7. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. DIYで室温が約10℃変わった「トイレの寒さ対策」が310万再生 コスパ最強のアイデアへ「天才!」「これすごくいい」
  9. 「こんなおばあちゃん憧れ」 80代女性が1週間分の晩ご飯を作り置き “まねしたくなるレシピ”に感嘆「同じものを繰り返していたので助かる」
  10. 岡田紗佳、生配信での発言を謝罪 「とても不快」「暴言だと思う」「残念すぎ」と物議