タモリ流の散歩に学ぶ
人生を豊かにする地形散歩
「東京には失われた川がいっぱいあるんですよ。たとえば蟹川の水源は歌舞伎町の裏にいけばその水源があるし、太宗寺に行ったら水源がある。散歩が冒険なんですよ」と、タモリさんは2009年に始まった『ブラタモリ』の第1回目(早稲田)の放送で言っていました。初期の『ブラタモリ』には、タモリさんが普段どのような散歩をしているのかを垣間見れる発言がちょこちょこあります。江戸時代や明治時代の古地図を片手に、古い道や坂道、暗渠になってしまったかつての流路などをたどる。普段から古地図を見るのがお好きで、気になるところに目星をつけて現地を歩いていたようです。そうすると何か違和感を感じる場所があり、そんな場所には護岸跡などかつての川の痕跡を見つけたり、古い道や坂道などでは、武士や町人が歩いた同じ道を歩いているところが面白いと言ってました。つまり、タモリさんの頭の中では江戸時代の風景が目の前に広がっているのです。ご自身も「人生ってのは妄想なのよ。妄想が一番楽しいの。我々妄想族っていわれてますから」と言ってましたが、現在の場所に昔の人の気配を手繰り寄せ、土地の記憶に思いを馳せる。散歩ひとつとっても、タモリさんは人生を豊かに過ごされているなぁと感じます。
散歩を冒険にするスマホアプリ
そんなタモリ流の散歩を真似しようとしても、何から手をつければいいかわからないですよね。そんな時に役立つのがスマホ用のアプリです。散歩用のアプリはいろいろあると思いますが、新之介がいつも使っているのは「スーパー地形」。『ブラタモリ』でも立体的な地形図がよく出てきますが、エンドロールにいつもお名前がでてくる杉本智彦さんことDAN杉本さんが開発したアプリです。
たとえば、現在地の地形はもちろん、明治時代の地図や断層の位置、地質図など、現地で知りたい情報はすべてこのアプリで対応できます。また、GPSで歩いた軌跡を記録できるので、いつどこでどのようなコースを歩いたかもわかる。GPSの軌跡は動画にもできるのですが、動き方が結構チャーミング。下の動画は背景を変えた2つをつなげたものですが、動画作成自体は簡単にできますよ。とくかく新之介の欲求をすべて叶えてくれるアプリなので私にとっては神アプリかも。古地図に特化したものだと関西の方なら「関西時層地図」がいいかも。「スーパー地形」は今昔マップと連動していますが、明治中期の地図に対応していない場所があるので、私が古地図歩きをするときは「関西時層地図」も使っています。東京の方は「東京時層地図」を使っている方が多いように感じます。
事前に地形の目星をつけるためには「カシミール3D」
スマホ用ではないですが「カシミール3D」というパソコン用のソフトは、地形散歩の下調べには欠かせない優れもののツールです。私はもともと30年近いMacユーザーなのですが、「カシミール3D」を使いたいがためにメインマシンをWindowsに変えてしまいました。主に立体的な地形図の作成に使うのですが、鳥の目線で風景が描写できる「カシバード」という機能がとても魅力的。標高の高さを色設定できるので、海水面を数メートル高い高さに設定すると、まるで縄文海進の時代のような景観をつくることができます。東京と大阪、名古屋、福岡の鳥観図をつくってみたのですが、東京駅や大阪駅、名古屋駅、博多駅は海の底。縄文時代の海岸線を妄想して歩くのも面白いですよ。
タモリさんのように、妄想を膨らませながら散歩ができると、人生はきっと豊かになるのでしょうね。私もタモリさんを見習ってそうなりたいと思いながら地形散歩を楽しんでいます。
(追記)カシバードと今昔マップの融合