「なろう系はキモい」と言われる理由の本質を言ってしまおう
「なろう系はキモい」……
あるいは「そう思われるのはなぜ?」という質問が、度々届くので、今回まとめて語ろうと思う
思いつくのは色々あるだろう。
・読んでるのが弱者男性が多そうだから、とか
・チートだのハーレムだの作者の願望が出すぎてるようにみえるから、とか
・似たりよったりにみえるから、とか
・単純に、読んでないやつがなんとかして馬鹿にしたいからだ、とか
色々あるだろう。
そして、上のはどれも、大きく間違ってるわけではない。
でも、それだけで終わらせるには安易といえる
というわけで
「なろう系」が馬鹿にされる理由の本質
バッサリ言いたいと思います。
それは……
「タイトルあらすじで説明しすぎてるから」です
これだと思うよ。ガチで。
ちなみにこれの善悪の話はまだしないよ。あくまでまずは分析から。
ピンとこない人も多いと思うので、補足します。
だってこれを批判する大半の人、読まずに批判してるでしょ?
タイトル羅列だけみて。そんでタイトル羅列でうんざりするわけだ。
↓みたいな質問とかがまさにそうだね。
もちろん、あらすじも含まれるよ。
その、タイトル+あらすじをみてうんざりするわけだ。
「なんか……やたら直接的だな」と。
そんで人って直接的なものを品がないって感じるからね。
例をだしますよ。
今の漫画やアニメのヒット作も、もし「なろう的」タイトルだと想像してみ?
鬼滅の刃も
「鬼に家族が殺されたので、成り上がって鬼を全滅させることにした」とか。
ぼっち・ざ・ろっく!とかも
「引きこもって3年間、狂ったようにギター練習してたらプロ級になってて、いつのまにか配信者としても有名になったし表にも出ます」とか。
そうなってたらどう思う?
この作品たちに「絵がなくて、文章イメージしかない」としたらどう思う?
こういうタイトルばっかりが、アニメの原作として並んでたらどう思う?
同じように「品がない」とか「似たのばっかり」って感じるはずだと思うよ。
中身なんか別に似てないよ。
似てないけど「似てる」って感じるんだよ。伝わります?
何が似てるか。
「品のなさ」が似てるんですよ。
品の無さを通じて、それで、同じ作品ばかりに見えてしまう。
それがなろう系と呼ばれるものに共通して感じるものなの
だから、なろうを読んでる人は「なろうが同じものばかりって目が腐ってるのか?苦渋をなめるのも山程あるし、ストーリー全然違うのたくさんだが?」となってるが、そうじゃない。似てると感じてる音はそこではないのだ
あ、ちなみに先にいっておくけど。
俺自身は、なろうやなろう系を別に見下してないし、なんなら時代の最先端だと思ってるし、特別に品がないとも思ってないし(他メディアも根底は同じ)、そもそもそれが悪いとも思ってないからね。あくまで、こういう批判者の視点の切り取りね。
で、この「品」ってものに関して少し深堀りするんだけど。
これって、凄く気にする人、多いのよ実は。世の中には。
これ過半数を余裕で超えます。
クリエーター的な資質をもつ人からすると理解できないけどね。
で作品に「品」がないとするとどうなるか。
「それを読んで楽しむ俺も、品がなく見られるから、読みたくないなあ」
となるわけです。
こういうのが無意識にでるのが、なろう系たたきね。
まあもちろん。これって、面白さを追求するクリエーターからすると、くだらないんですよ。だって、それって「他人からどうみられるか」ってのを気にしてるってことだからね。
「作品の評価じゃなくて、それを見てる自分がどうかってので、読む作品決めたり、作品の良し悪し決めるって正気?中身をみろよ!」ってなるけど。
それは正しいけど、それが通らん理由があるんですよね。
なぜなら「品」は、「社会的影響力や地位」に結構直接影響するから、です。
学校だとクラス内カーストとか揶揄されるじゃん。
無視しすぎると、ああいうのの底辺にいくことになる。
それはなぜかというと。
品というか。
下品の定義なんだけど。
「人間の本能的欲望を直接叶えると、
ストレートに提示されてるもの」
これを「品がない」というのよ。
風俗のチラシみたいな「即抜き30分いくら!」みたいなね。
「巨乳のねーちゃんたっぷり!」とか。ああいうのをいう。
で、それに、ほいほい乗っかる、あるいはがっつくとしますよ。するとどうなるか。
「あいつは、あれにすぐがっつくぐらい、それを「持ってない」人間なのだ」
というふうにみなされるわけです。
品なくみえるものに、他人の目があるのに飛びつくリスクはこれ。
これが、みんな「無意識的に」理解してる
そして「それを持ってない」と他人に周知されるということはどういうことか。
「カーストが落ちる」というわけです。
金にとびつけば貧乏だとみなされ、エロに飛びつけばモテないと思われる。そうすると、例えば男であれば、格下に誰からも見られるようになり、人付き合いも減り、非モテであればより非モテになり。味方も減り。自分の遺伝子を残せなくなり、それはもう本能的な拒否といえる。
普通の人は「持ってる」人と近寄りたいし「飢えてる」人からは遠ざかりたい
だから「品がない」ものは敬遠される
もちろん、本音ではほしい。金持ちだって金はほしいし、エロが好きな人は大概もっとエロい目にあいたい。
「飛びつきたい」だが「人にそれと知られたくはない」
これが、人の本能に近い本音というものである。
欲しいものにストレートに飛びつくのは、社会的な地位低下のリスクがあり。それはそのまま自分の生存に関わる。そしてそれを人は「下品」とよぶ
だから「品があるかどうか」を人は気にするのだ。
「それを楽しんでる自分がどう見られるか」を人は気にするのだ
なろう系、がそこに不合格なのはそのためだ。
大人向けになるほど、ストーリー構造が子供向けと同じでも。
やたら「分かりづらく」なるのはそのためだ。
本質的には「自分と似た主人公が、自分が嫌いなタイプの悪役を成敗して、そこに自分を重ねてスカッとする話」だとしても。
「パッケージングからもそう見える話かどうか」は大きく異なる
逆にいうと「品のないもの」を叩くことで……
あるいは、それを作り出して叩くことで……
それに余裕がある人間だ、と遠回しにPRできる。
これが、なろう系などを叩く理屈にもなる
また、嫉妬もあるだろう。
「俺は飛びつきたいのを我慢してるのに、これみよがしに飛びつきやがって……」と。
「飛びつくコイツラが何かしらの制裁をうけなければ、俺が我慢してるのが馬鹿みたいになるので、コイツラは制裁をうけるべきである。なんなら俺が叩く」
というふうなのもあるだろう(叩く本人はここまで言語化しないだろうが)
……長々語ったが「なろう系はキモい」といわれるのはなぜか。
「タイトルとあらすじが直接的である」
これがかなりのコアである。
そして、そこにネット小説特有の事情が重なり加速する
・いうてマイナー趣味であり、アニメ、漫画人口に劣る(小説読まない人からは格好のたたき場。数多いほうが『図にのりやすい』)
※人は「自分の趣味は叩かない」ので、趣味の人口差はたたきに繋がる
・市場規模もそれらより少なく影響力も弱い(叩きたい人からは格好の略)
・文字しかないため、タイトルあらすじで具体的にPRして差別化しないとそもそも読まれない(これはかなり避けれない)
※漫画やアニメも、絵が使えないと多分、だんだんなろう的なタイトルになっていくはず。品を保てるのは、絵があるから。
・小説ジャンルがそもそもアニメ・マンガなどに比べ、絵がない分、狭い。ネット小説というアマチュアだとよりそれが加速する。どうしてもジャンル幅は狭くなり「似たのばっかり」と思わせやすくなる
・流行の速度が異常であり、一つ流行ると100増える。
・商業作品が「品がありすぎる」ため、ストレートな作品を望んだ読者が「なろう系的な作品」を強く歓迎する
これらが複合し、より「強い欲望実現のるつぼ」になるのがネット小説である
特に最後の理由は相当にでかい。語るとこれだけで数時間かかるので、より詳しくは僕のカクヨムにある「なぜなろうが覇権をとったか」のエッセイでも読んでほしいが。
しかし根本的には「品」が「タイトル・あらすじで透けすぎる」からである
ソードアート・オンラインなども、内容を悪辣にいえば相当なろう的ではあるが、実際はそこまではそうみられていない。
タイトルの恩恵である。
ちなみにネット小説の作者はこれを踏まえて「内容が伝わるし、読者が望む欲望を満たすんだけど、見た目的には品がよい」という作品を作り上げると、それは極上といえる。
クリエイター気質の人が想像する以上に、人は。
「これを求める自分が、他人からどう見られているか」
というのは、気にしている。
子供よりも大人が。男性よりも女性はこれを気にする。
それは面白さの本質ではないが、人の本能ではある。
長文、読んでくれてありがとう
ああ、最後に一つだけ追記しよう。
これを踏まえて「よし!品のある小説を……!」と考えるネット小説家がいたら。それはまず落ち着いて考えたほうがいい。
作家の存在意義は「妄想の代行」だ。
いかに品が良いものが望まれていても。
「ガワ」にしかすぎない。
中身は、欲望の代行でなくてはいけない。
中身が先。ガワは2番目だ。
この順序が覆ることは決してない。
面白く、かつ品のあるものが望まれたとしても。
面白くはないが、品はあるもの。こんなものは求められていない
ゆめゆめ、忘れなきように。
読了感謝。いいねとか、拡散くれたら喜びます
※追記
最後に少し喋ったけど「品」のない話が一律で悪いわけではない。
あまりにそればかりだと人は「表では言わないだけで、裏でめっちゃ買う」は全然あるし。なろう系が売れてるのは実はそういうとこだったりする。
表では叩く。しかし。
叩きながら買う人も、たくさんいたりするのが、このジャンルなのだ。
そんでしばらくたったら「良い感じの作品」として持ち上げられたりもすることも、たくさんあるのだ。
「言わせとけ」
「アニメで流行ったらどうせ持ち上げる。2周遅れの戯言よ」
「今、悪く言われてるだけだ」
この態度でも、全く問題ない
己の欲望を、信じよう