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ハリウッド式脚本フォーマットの基本

これまでは脚本の演出についてまとめてきましたが、今回は「ハリウッドの脚本ではどこに何が書かれているのか?」というフォーマットについてです。

ハリウッド式フォーマットのルールは、字体から余白のサイズに関するものまでたくさんあります。

その全てを紹介することは難しいので、今回は「これさえ押さえれば基本はわかるはず!」という最もベーシックな部分をご紹介します。

はじめに: フォーマットにこだわる理由

一貫したフォーマットを使うのは、読み手に伝わる脚本を書くためには欠かせないことです。

脚本のフォーマットを授業で教わった際、教授が「脚本を書く時は、製作陣みんなが同じ一つの映画を作ることを忘れちゃいけないよ。」と言いました。

みなさんもご存知の通り、映画は多くの人の力が合わさって作られます。そのため脚本を読む人みんなが作品の全体像を把握するための手段が必要です。

それを助けてくれるのが脚本です。脚本にはカメラの動き、編集法、照明、演技、セット、衣装、小道具などを決めるためのアイデアが沢山埋め込まれています。

脚本はスタッフ同士が作品に対する共通認識を持つためのコミュニケーションツールになってくれるのです。

そのため脚本家はその映画に関わる人達みんなが理解できる脚本を書く必要があります。だからこそ、誰がどの作品に取り組む時でも一貫したフォーマットで脚本を書くことが求められるのです。

基本の6要素

フォーマットに関しては細かいルールが沢山あり、初めて書いた脚本を教授に見せた時は私もクラスメートも訂正されまくりました。

ですが、その沢山あるルールの中でも毎回必ず使うものとたまにしか使わないものがあるため、初めてハリウッド式のフォーマットで脚本を書きたい人がまず最初に覚えるべき基本的な項目を選びました。それが次の6つです。

  1. ト書き

  2. 役名

  3. セリフ

  4. 括弧

  5. エクステンション

この6つさえ押さえれば、ハリウッド式フォーマットの基本的な読み方/書き方がわかるはずです。

それぞれがどのような配置で書き込まれるのか、私が宿題で書いた脚本を例に見てみましょう。

①柱、②ト書、③役名、④台詞、⑤括弧
⑥エクステンション

それでは、一つずつ詳しくみてみます。

#1. 柱 (Scene heading)

すべてのシーンは柱から始まります。柱には上の画像のように全て大文字で「屋外/屋内 場所 時間帯」の順番で書きます。

  • 屋外のシーンならばEXT.と書き、屋内ならINT.と書きます。例)「EXT. CONVENIENCE STORE - NIGHT」(屋外、コンビニ - 夜)

  • 時間帯はどんな光の中で撮影して欲しいかを示すためのものなので、基本的にはDAY (昼)・NIGHT (夜) くらいの描写で充分です。もしこだわりがあれば夕方・朝・夜明けなどのように細かく書いても構いません。

  • シーンは続いているけど場所が変わった場合は新しい柱を書き、時間帯の代わりにCONTINUOUSと書きます(下図)。場所は同じで時間のみが経過したことを示したい場合は、新しい柱の時間の部分にLATERと書きます。


#2. ト書き (Action)

柱の下の段からト書きを書き始めます。ここでは登場人物の姿、行動、場所の様子など、スクリーン上で見えるものや聞こえる音を全て描写します。

  • キャラクターの性格やバックストーリーなど、見えないものや聞こえないものは書かないのが原則です。そういった情報はセリフやビジュアルを通して脚本家が演出しなければなりません。

  • しかし具体的な形のない事柄でも、製作陣の意思決定に役立ちそうな情報は書き込みます。例) 「彼が現れた途端、部屋に緊張感が漂う」のように画面から感じられる雰囲気などは書いてOK。

  • 必ず現在形を使います。過去形や未来形は使いません。

  • 長くて読みにくいト書きは好まれないので、どんどん改行して段落を変えます。改行するタイミングを決めるのは、ショットが変わる時です。一続きのショットの中で起こっていることを描写するあいだは改行しません。改行すると、ショットを変えることを提案しているとみなされます。

ト書きの段落が変わればショットも変わる
  • 初登場するキャラクターの名前は大文字で書きますが、2回目以降にその名前を書く時は大文字ではなく普通に書きます(下図)。もし一般名詞を役名として使う場合は、2回目から最初の文字のみ大文字にします。例) 1回目→POLICE OFFICER、 2回目以降→Police officer

  • 初登場するキャラクターの名前の後には大抵の場合、括弧で年齢を書きます(下図)。

初登場のキャラクターは大文字で書き、年齢を括弧の中に書く。
  • 重要な音は大文字で書くことがあります。これは絶対に守るべきルールというわけではないのですが、サウンドエフェクトが必要であろうと思われるときや場面の雰囲気を演出するのに重要な音がある時などは大文字で書かれやすいです。例) He KNOCKS on the door. (彼がドアをノックする。)

  • 重要なアイテムなども大文字で書かれることがあります。例) She steals the LIP STICK from Emily. (彼女はエミリーから口紅を盗む。)


#3. 役名 (Character's name)

  • セリフの上に書かれる役名はページのほぼセンターに位置します。(厳密に言うとページ左端から3.7インチ開けた場所)

  • 全て大文字で書きます。


#4. セリフ (Dialogue)

  • セリフはト書きよりも少し右側に寄ったところから書き始められます。(左端から2.5インチ)

  • セリフはこのように段落がドンッと下がるため、パッと見ただけでどこからどこまでセリフか一瞬で見分けがつきます。


#5. 括弧 (Parentheticals)

括弧の例
  • 括弧の中には、キャラクターがどんな様子で話しているのかに関する描写が書き込まれます。

  • 括弧はセリフと差別化するために、セリフよりも少しだけ右に入り込んだところから書き始められます。

  • 括弧と台詞の行は別々に分けます。


#6. エクステンション (Extension)

エクステンションが書かれる場所

エクステンションは、セリフがどのような形で聞こえてくるのかを示すものです。

  • エクステンションは全て大文字で、役名の右側に括弧で書き込まれます。

  • 役名の右に(V.O.)と言うエクステンションが書かれているときは、voice overの略です。心の声やナレーションなどを意味します。

  • (O.S.)はoff screenの略です。登場人物がその場にいて声は聞こえるものの、画面には映っていない状態を表します。

  • (INTO PHONE)など、登場人物が電子機器などを使っている場合にもエクステンションが使われることがあります。

  • 1人のキャラクターが喋っている最中にト書きが挟まる場合はそのキャラクターの2回目以降のセリフの役名の横に、(CONT'D)と書きます。


英語で脚本を書く人のためのソフトウェア

ハリウッド式の脚本にはルールがこれだけ沢山あり、さらに字体や文字サイズ、余白のサイズまで全て決まっているので全部手作業で設定するのは面倒です。そのため、私もクラスメートも自動で全て設定してくれる脚本執筆用のソフトを利用していました。

大抵のものが有料なのですが、2回まで無料で書けるものや期間限定で無料で利用できるものもあるので英語で脚本を書きたい方は是非試してみてください。

ハリウッド作品の脚本は大抵、無料で読めちゃう

ハリウッド映画の脚本は、ほとんどの場合ネット上で無料で読めちゃいます。そのため、細かいルールや演出の工夫などを簡単に学ぶことができます。

私が受けた脚本の授業でも、好きな映画の脚本をネット上で探して一通り読み、フォーマットや演出について気づいたことを箇条書きにして提出するという宿題がありました。

脚本の授業でも教科書でも、全てのルールを網羅することは困難です。しかし、プロの脚本を読むと学校では学びきれないことを学ぶチャンスになって面白かったです。

英語でプロの脚本を読んでみたい人は是非、好きな映画のタイトルと一緒にscriptと打ち込んで検索してみてください。

まとめ

ここまで読んでいただいてありがとうございました。

それではまた!

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