欧文で「〜」は使いません。ハイフンとダーシの話
今日はデザインの話。その他のデザインの話はこちらにまとめています。
欧文のルール
日本人は知らない欧文(主に英語)のルールというものがあります。これは英語の授業でも教えてくれません。それゆえか翻訳者からの原稿にも、このルールに則っていないものがすごく多くあります。
知っておくと何かとアドバンテージになるので少しずつご紹介していきます。ご紹介した欧文のルールはこちらのマガジンにストックしていきます。
欧文で「〜」は使わない
考えてみると「そりゃそうか」ってなるのがこの「〜」。日本だと
午前10時〜午後7時
というように使用します。便利でわかりやすい符号です。
「〜」は波形という日本の約物
これは「波形」というつなぎ符号です。約物(やくもの)という記号の一種。波形の意味は、「…まで」。だから
東京〜大阪まで
という表記は間違いです。「東京〜大阪」で「東京から大阪まで」という意味になるからです。波形は、この他に語句の省略や長音を強調するために使う音引き「ー」の代わりにも使います。「どんだけ〜」というように。
欧文に全角はない
冒頭に「考えてみると」と述べたのは、欧文は半角(例:100mm)ですが、日本語は全角(例:100mm)が基本です。なので全角でしかない「〜」を欧文に使うってことはありえないんですが、どうもこのへんはプロではないと分かりづらいので混合しがちなんです。
雑誌や書籍の原稿では、このへん混ざってくるものがよくあります。欧文の原稿なのに全角の「()」を使っていたりなど。ちなみに欧文の()は、全角の(つまり和文の)「()」より少し下がっています。欧文には「y」などのようにベースライン(文字が載っている見えない線)より下に伸びている文字があるからそれを包むために下がっています。「:」これも少し下がっているのはそのためです。もちろん左右のスペースは半角なので小さいです。では欧文では「10時から19時まで」をどう表現するのでしょうか。
欧文の「…まで」の約物は「–」。その名をダーシという。
「–」という記号を使います。その名をダーシ(dash)と言います。ダーシには、面倒なことに二種類あります。そしてこれハイフンではないんです。ややこし。でも慣れるとそんなにこんがらがりません。 それでも面倒なら「…まで」の意味の英語にはダーシを使う、だけ覚えても良いでしょう。
入力の仕方は、
option + -(ハイフン)
ハイフンは数字の「0」の横にあるやつです。そしてこう使います。
10 a.m.–7 p.m. または 10:00–19:00
ダーシの前後にはスペースは入れません。そして余談ですが、
AM 10:00 – PM 7:00ではありません。AMやPMは時間のあとにきます。
10 a.m. / 10 A.M. / 10 am / 10 AM
が正しい。AMと時間の間にはスペースが入ります。
2種類のダーシとは
ちょっと面倒ですが、2種類のダーシの違いを知っておくと欧文のルールにより詳しくなれます。
「–」 はenダーシ
さっきつかった option + -(ハイフン)で入力した「–」はenダーシ(en dash)。2つの数字をつなげるときに使います。たとえば
see pages 40-52
1804–12
Monday–Friday
10:00-17:00
人の名前や地名をつなげるときにもenダーシ(エンダーシ)は使います。「リチャードさんとジノリさんの説」という表現には、
Richard–Ginori theory
となります。これにハイフン(-)を使って
Richard-Ginorit theory
と表記すると「リチャード=ジノリ」という一人の人の説になります。わかりづら!
「—」はem ダーシ(em dash)
この長いダーシはem dash(エムダーシ)と言います。こんな長い線を何に使うのかというと文章をつなげるとき、囲むときです。
例:
And yet, when the car was finally delivered—nearly three months after it was ordered—she decided she no longer wanted it, leaving the dealer with an oddly equipped car that would be difficult to sell.
こんなふうに繋げたり、囲ったりにつかうので、「,」や「()」のように使います。
enとemの意味
ものすごく直感的な理由でenとemを表現しわけているのですが、それは
nとmの文字幅
mはみてのとおり、ざっくり言ってnの幅の倍あります。短いダーシはnで、長いダーシはmというわけです。
ところでですが「じゃあハイフンはいつ使うのか」。
ハイフンの役割
ハイフン「-」は、基本、単語を折り返すときに使います。
例:
Jack London のTo Build a Fireから抜粋
これがハイフンの基本的な使い方です。このほかには2つの名前をひとつにしてまとめて使うときにもハイフンを使います。
例:
Rolls-Royce
それから2つ以上の単語を組み合わせてひとつの単語にするときにもハイフンを使います。
例:
up-to-date
まとめ
余談ですが、お店が閉まっているときに「Close」という看板を出すのは間違いです。「Closed」が正解。
さて日本語で表記するぶんには、わたしたちの感覚でおおむね間違いはないのですが、ちょっと英語でも書いておこうか、というときに小さな間違いをけっこうしがちです。
通じれば、用は足りますが、それがちょっとした高級店だったらどうでしょう。英語圏の人たちから見ると、「いたらなさ」が目についてしまつことでしょう。この「いたらなさ」とは、わたしたち日本人がタトゥーなどで間違った漢字の使い方を目にしたときに感じるようなものです。
どうせ英語表記を使うなら、間違えがちなものから覚えておくと、効率が良いのではないでしょうか。
欧文のルールを知るのに良い本
イケメンのドイツに住む日本人の書体デザイナー、小林章さんの書籍です。すごくすごくわかりやすい。
高岡さんの「欧文組版」もより深い欧文ルールを知ることがデキる本です。