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カルロス・ゴーンの逃げた国に行ったら色々終わってた話

つい先日レバノンという国に行ってきた。日本人からしたらカルロスゴーンが逃亡した先としてお馴染みのあの国である。この国は中東のパリと呼ばれるベイルートを始めとして欧米人観光客が多く訪れる綺麗な国であった。昔は。

しかし近年は宗派間の対立、格差社会の進行、政府の腐敗が重なり経済や国民生活は落ちぶれていった。ただでさえ弱っていた所をコロナとベイルート港爆発事故が襲い完全に失敗国家と成り果てた。カルロスゴーンどんまい。

と言うわけで今回は経済崩壊した国家で過ごしてみるとどんな状況なのかを書き連ねていきたいと思う。

街中にいるヒズボラ民兵

まず最初に首都ベイルートでは1日の約半分しか電気が使えない。夜間と昼数時間程度電気が流れるだけである。外貨準備高がほぼ底をつき発電用の燃料が買えないからだ。僕らの行った時はまだ半日使えた。酷い時は3日間完全に電気止まってたらしい。クソ

ここ最近ロシアによるウクライナ侵攻により資源価格やあらゆる物価が上昇している。財政的に余裕のない国では緩和策を打ち出すことができずレバノンのような破綻国家に落ちぶれる国が出て来るだろう。それでは思いつく限り実際に遭った事を挙げていきたいと思う。

1.エレベーターもエスカレーターも使えない。


これはほぼ最初に受けた洗礼だった。ホテルに着いてチェックインをして大量の荷物をエレベーターに乗せようとしたら使えない。5階(レバノンはGround階が存在するので実際は6階)までを荷物担いでえっちらほっちら登らなければならなかった。クソ

輪番停電のスケジュール把握するまでは大変だった。把握した後でも朝の6時以降4時間ぐらいはガッツリ停電しているので朝早くから観光する時は諦めてウォーミングアップがてら階段降りていた。

金持ちで自家発電の燃料を買える人はこれを回避できる。しかし預金引き出し制限があるので外貨を現金で持っている人だけを指す。いくら口座にレバノンポンドを大量に持っていても全く意味がないのである。クソ


2.信号が機能していない

中東一帯の国家はそもそも信号がある国が少なく勝手に各々が進みたいように進むところが多いが、レバノンベイルートは一時期中東のパリと呼ばれているだけあって市内に信号は割とある。ただ元々あったのに機能していないせいで交通整理している警察官や軍人が皆無なのである。クソ

このせいでイラクとかよりも断然酷かった。二つの幹線道が交わるところは皆が我先にと突っ込んでくるので危険度がかなり高い。突っ込まないなら突っ込まないで後ろから突っ込まれるから突撃あるのみである。このせいで歩行者や自転車乗っている時にはかなりヒヤッとすることが多々あった。たまたまその区画が通電している時間帯で信号がついていると感動した。クソ


3.Wi-Fiが止まるので大容量simカードを買わなければならない

停電して困ることの中で上位に来るのがネット環境の問題である。停電するとホテルのWi-Fiも自動的に落ちる。日中基本的にホテル内のWi-Fiはついてないし街中のレストラン、カフェ、シーシャ屋に行っても「う〜ん、電気つくの18時だからそれ以降だったらWi-Fiあるよ〜」と言われる始末なので基本的にPCで作業するにはテザリングするしかない。クソ

不幸中の幸いというかキャリア回線には優先的に電力が回されているらしく常時ネットにアクセスできなくはない。だが全てそれで回さなければならないので11日間で25GBくらいは使った。ヘビーユーザーがどう対応しているのか気になる。クソ

全部の会社が自家発電機持っているわけではないだろうしパソコン持っていても日中仕事とかどうするんだろうね。クソ


4.クーラーがつかない

日中の停電している間はクーラーがないので暑い。僕が行ったのは11月の前半ごろだったのでせいぜい最高気温が26〜28度程度だからまだ耐えられる範囲だったが真夏はかなりきついと思う。ベイルートはかなりアップダウンの激しい街なので少し歩いて休憩しようかと思ってそこらのレストランに入ってもクーラーついてないことが多いので夏は大変だと思う。クソ

後クーラーがつかないのでホテルの窓を開放して涼をとるともれなく蚊が入ってくる。蚊が飛べないと言われる高層階は高層階で前述のようにエレベーターが使えないのでどちらを選んでも地獄である。クソ


5.店で買う飲み物が基本ぬるい

日中停電して起こること、そう冷蔵庫が使えないのである。暑い中歩いて冷たいもの飲みたいなと思いスーパーやカフェに入って飲み物を買っても全部ぬるい。ごく稀に冷凍庫に飲み物入れている店が一部凍りかけのペットボトルを売っている。見つけられるかどうかは運次第。ぬるい炭酸ジュース飲まされるのはかなりきつい。クソ


6.日が昇ったら起き日が沈むと寝る生活になりかける


日が沈んだ後の停電したホテルの室内、
向かい側の居宅は自家発電を持ってるからか明るい

他の区画のことは把握していないので分からないがベイルート地区は昼以降18時まで停電している。そしてベイルートは大体日本と同緯度なので11月の前半は夜17時頃には日が沈む。つまり日没から1時間ほどはホテル内が真っ暗なのである。

昼間明るいうちは自転車の修理をしたり街中歩いたりやることはあったが、その時間帯にホテル内にいると真っ暗で何もできず、通信容量食うから動画で暇つぶしする事もできないので睡魔が襲ってきて寝落ちしてしまうことがあった。都市部にいながら江戸時代の百姓みたいな生活スタイルになりかけた。クソ


7.オール電化だと詰む。

レバノンでは2箇所ホテルに止まったが1軒目のホテルがオール電化だった。そのおかげで日中停電している時間帯に温水シャワーが浴びれなくて困った。クソ


6時に停電した時の写真

朝6時には停電し次に電気が供給されるのは朝の10時頃なのだがその後は不安定極まりない。遅めに起床して朝シャンしようとしたら途中で止まる。もしくはシャワー浴び終わった!じゃあ髪乾かそうとおもってドライヤーをつけようとしたら停電。海外生活で伸び切った髪が乾かずとても困った。女性には厳しい世界である。クソ

破綻国家でオール電化はデメリットでしかない。いわゆる「卵は一つのカゴに盛るな」である。

8.充電器を挿しっぱなしにできない。

頻繁に停電するのでパソコンの充電器やバッテリーを挿しっぱなしにできない。停電が復旧した時に電子機器を破壊する恐れがあるのでコンセントに充電ケーブル挿したまま外出することはできない。輪番停電みたいに予めわかっている停電ならまだ対応可能なのだがそれ以外にも分電盤停電はしょっちゅうあるので充電しながら外出できない。クソ

バッテリー程度なら壊れてもせいぜい数千円の範囲なので繋ぎっぱなしにしていたがパソコンのデータ消えたら発狂すること間違い無いので外出する時はケーブル抜くことは勿論のこと、睡眠時や部屋にいて停電した際に慌てて抜いていた。クソ

9.レストランの開店時間が変則的

レストランにも色々あり自家発電機を持っている店からない店まで様々である。自家発電機のない店で日当たりの悪い場所に立地しているとメインストリートに面してるのに昼から暗い。奥まったところにある店は悲惨である。クソ

店によって対応はまちまちでググっておすすめの店に行ってみると真っ暗であったり「◯時から停電直るからその後に来た方がいいよ〜その時間ならWi-Fiもとんでるよ〜」と謎のアドバイスを受けたりする。逆に暗くて雰囲気醸し出してる店もある。

お酒飲むところなら暗くても構わないが(レバノンはイスラム教徒だけではなくキリスト教マロン派もいるのでお酒飲める場所は飲める)ググった情報がほぼ当てにならないので運任せである。クソ

10.公定レートと闇レートが14倍の開きがある


レバノンポンド紙幣


一部の百戦錬磨の旅行者を除いて「闇レートって何?」という感じであろう。国家政策で外貨を集めていたり制限をかけていると市場に出回る外貨の需給関係にズレが生じ政府が指定する自国通貨と外貨の交換レート(公定レート)に比べて明らかにいい交換レートでドルやユーロの交換できる場所が出てくる。これが闇レートである。

レバノンは終わってる国で(終わってる経緯は話すとそれだけで1万文字超えるので適宜ググるなり参照されたし)自国通貨の信用がないので公定レートだと$1=1530レバノンポンドだが闇レートだと$1=21500レバノンポンドで取引されている。実に14倍の差である。自国通貨の価値が低く米ドルが一般に通用する国は今までにもいくつかあったがここまで交換レートが乖離していた国は初めてであった。

ただ闇レートと言っても空港の両替所以外は広く一般に使えるレートである。街の中心部の大通りにある両替所も全部闇レートを基準に交換可能である。

11.クレカがまともに使えない

これはなぜかと言うとクレカを利用すると上記の公定レートの値段で決済されるからである。実勢レートで800円ぐらいで食べれるご飯がクレカで支払うと公定レートで請求されるので1万円を超えてくる。全てが14倍になるからである。クソ

事前にこのことは知っていたので米ドルを現金で持っていった。自国内通貨の信用が著しく低いせいでタクシーやホテル、レストランは両替しなくてもドル支払いできるし何ならそっちの方が交渉で安くしやすい。

1ドル札ですら何も問題なく使えるし交換レートも100ドル札と基本的に同じレートである。ホテルや商店だとみんなその日の交換レートを把握していて米ドルと欧州ユーロは準法定通貨ぐらいの立ち位置を占めている。

12.ゴミ回収されないのでごみ収集場所がゴミで溢れかえっている。


空き地で積み上がったゴミ


財政危機を引き起こした国あるあるの光景である。財政状況が不安定になるとごみ収集は滞りやすい。ギリシャ危機が勃発した時のヨーロッパも南欧諸国はたまにゴミの山ができていたがレバノンは現在進行形だったので量はかなり多かった。クソ

同様に街路樹を剪定する予算がつかないから木が伸びっぱなしであったり、道路が陥没しても放置されたりしている。歩いていても自転車に乗っていても車に乗っていても不便な世界である。クソ

13.水が不味い

僕は各国の水道水を飲んでどこまで胃が耐えられるか試しているのだがレバノンの水道水は本当に不味かった、今まで飲んできたいろんな国の水道水に比べるとレバノンの水道水は水道管がタヒんでる味した。ミャンマーとかイラクとか北朝鮮とかそんな国より断然酷い。

このお湯に入るとお肌ツルツルになりますよ〜って謳い文句の温泉に錆びた鉄がを加えたような味がした。上水道か水道管がタヒんだまま維持管理出来てないと勝手に推察してる。クソ


終わりに


ベイルート港湾爆発事故の爆心地

ざっと書き連ねただけでこれだけ不自由な生活であった。現地人には「君達なんでこの時期にレバノンなんか旅行来てるの?」と煽られる始末。

旅行している分にはこうやって文を認めることができるからまだいいものの暮らすのはかなりきついと思った。日々当たり前のように享受する先進文明のありがたさ、インフラの重要さに気付くことはできた。

先日フランスも国際逮捕状を発付したのでカルロス・ゴーンはこんな感じの国で余生を過ごさなければいけないだろう。そしてウクライナ危機でさらにレバノンの情勢は悪化すると思われる。

先進国の豚箱に入れられる事からはまんまと逃げ果せたわけだが結局破綻国家という鳥籠の中の鳥である事は変わらなかった。どっちが良かったのかは当人しか分からないだろう。

さらば、カルロス・ゴーン


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