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「1%の仮想」展で思ったこと

VRChatで行われたヨツミフレームさんの個展 「1%の仮想」展が面白かったので超まじめに思ったことを書いていくよ

展覧会の詳細はこちら
様子はこちら

そもそもVR内の美術展ってだけで世の中的には十分新しいことだけど、ここではそこには触れず、詳しい作品解説もしません!(ただ私が思ったことを書いてヨツミさんに届けばいいや的なやつです)

ただ、VRに向き合った美術展として、最初にして最強のクオリティのものだったことはここに記しておきます

・・・・・・・・・

小さくて深いが新鮮だった

最近いろんなVRChatイベントが大規模化していくなかで、この展覧会は初めて深さ方向に突き詰めたものだと思う
展示品の多くは手のひらに収まるもので、例えば同じ日にあった「バチャフェス」と好対照をなしてたのが面白かった

なので、手のひらサイズの小ささの中にも面白さは込められる、っていうのがまず心に残ったポイント!(もちろん小さくない作品もあるけど)
そんなの当たり前って思うかもだけど、容積に制限のないVR空間でまずやりたくなるのは、巨大なものをつくること
でもここではそういった欲望とは真逆の小ささに向かっているのが新鮮だった(天体望遠鏡とか折り紙とか半田ごてとかは、小さいというかバーチャルの中でリアルを強調するための「実寸」ということなんだと思うけど)

どこからがアート?

1%の仮想(→本質)というテーマは、VRでやるアート展の出発点らしくリアルとバーチャルの境界を問う直球かつ究極のテーマだから、無駄に難しい言葉をつかって「絶え間ない実在/非実在の反転・揺らぎ・往復運動」とか言ってみてもそれは当たり前の話!

(作者の意図そのままをわざわざ難しい言葉で言い直して批評と称してるの、よくあるよね!)

VR空間っておかしなことが常に起きているもので、おじさんが百合百合してるのも日常だけど見ようによっては強烈な現代アートだよね
この展覧会でも最初のインスタンスは大幅な人数超過(45人くらい)してたから、処理が重くて落ち着いて展示見れなかったんだけど、じゃあと言ってフレンド以外のアバターをデフォルトに変えてfps稼いだりしてるのって、現実ではありえない十分に面白い現象だよね
(この展覧会混雑してるから人消そうとか、そもそも混んでるから処理落ちするとか、現実ではありえないこと)

展示物のなかにはIPアドレスからリアルな位置情報を漠然と表示させるものや、デスクトップ環境だと見えない作品、人によって見えているものが違う作品など、バーチャルであることを強く意識させる面白い作品が多くあったけど、実は同時に周りで起きているすべても同じくらいおかしなことだらけなんだよね

でも、それらはVRCの住人にとって日常で、アートとしては認識されない

VRCの外の人にとっても、知らないから認識されない

認識されないものは存在していない、ので、それをこの展覧会でとても美しい作品の形で認識のレベルにもっていったところが、ヨツミさんのシンプルかつ強烈なアートの力でした

(この展覧会はなんとかVRC内外の人にできるだけ届けるべき……誰か、私のこんな走り書きじゃなくて、ちゃんとVR空間やVRChatの説明から丁寧に始めた美術批評を書いたほうがいいと思う、絶対に、この展覧会はそのぐらいの衝撃のはずだから)

ところで、以下のこれは展示作品でしょうか?
入り口付近の壁に埋まってたこれ、展示品かな?ちょっと異質で違うよね?誰かのアバターの置き土産かな? と、こんなことが日常的にVRでは起きている そういうこと

ホワイトキューブ

もうひとつ大事なこととして、私がバーチャル建築家だから特に気になるのは、展示空間がいわゆるホワイトキューブってところ
しかも細部までとても丁寧で、例えば注意喚起するピクトグラムまで現実の美術館であることを印象付ける操作をしているよ

ひとつはさっきの話の続きで、実はホワイトキューブには「これはアートの展覧会ですよ」というメッセージが込められているので、こういう空間に来るとだれもが自然にアート作品を鑑賞する身体になる
だから、ハンバーガーを積むという行為も、(シェーダーの面白さがあってこそではあるけど)この空間ではアートになる

それから、これはこの記事を書いたあとでヨツミさん本人との会話のなかで気づいたことだけど、今回はテーマ的にホワイトキューブであることが特に重要だった
“Virtual” を問いかける作品群が、最大限リアルを装った空間に展示されているという倒錯…!

もちろん会場をつくったのもヨツミさん自身
VR内の展覧会って、アーティスト自身が会場設計もできちゃうという大きな特徴があるよね!
つまり会場自体も展覧会の全体テーマを共有するアートの一部になるね(そうなると建築家がデザインするよりアーティスト自身がデザインしたほうが面白い、ということにもなるよね)

余談①

展覧会自体の存在を問う「1%の本質」ではHMDごとのデフォルト背景に飛ばされるんだけど、そこにあるベースステーションの位置が私の部屋のリアルな位置と違かったので、やっぱりこれはまやかし!展示会は実在した!!と思いました

余談②

あと、この展覧会は一周すると二周目で状況が微妙に変化するんだけど、これはSTYLYのNEW VIEW AWARDSの出展作品「Emma VR」でも用いられた方法で、これって「ループものノベルの空間化」だと思う
ループものっていいよね、心に響くよね、感情揺さぶられるよね

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以上、とりとめもない思ったことでした
VRChat始めて、ここまで何かを書き残したいと思ったのは初めてかも
ヨツミフレームさんありがとうございました!

2018.9.24 初稿
2018.9.25 一部加筆修正

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番匠カンナ@バーチャル建築家
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