植物性代替肉とは、肉を食べることに対する環境・動物福祉への配慮から、植物性の材料を用いた肉の代用品です。
植物性代替肉でも特に大豆ミートは、大豆タンパク質を原料としている為、味や食感が肉に近いため「第4のお肉」として普及し始めています。
普及し始めている段階なので、「良い情報と悪い情報」「事実と嘘」が錯綜しています。
そのため、情報を精査しながら植物性代替肉(大豆ミート)の「メリット・デメリット」をまとめました。
両面を知りながら、植物性代替肉(大豆ミート)を使用してみるのか検討してみてください。
目次
植物性代替肉(大豆ミート)のメリット
植物性代替肉が世界で浸透するほどのメリットがなぜあるのか疑問になると思います。
植物性代替肉(大豆ミート)を導入するメリットとして、以下のものが挙げられています。
【植物性代替肉(大豆ミート)のメリット】
- メリット①:環境負荷の低減
- メリット②:動物福祉(アニマルウェルフェア)の改善
- メリット③:食の多様性への配慮
- メリット④:健康的な食の提供
- メリット⑤:食の安定供給
メリット①:環境負荷の低減
食肉を生産するためには、畜産動物の「穀物・水・土地」が大量に必要です。
畜産物1kgの生産に要する穀物量(とうもろこし換算)は、農水省HPより、以下の通りになります。
名称 | 畜産物1kgの生産に要する穀物量 (とうもろこし換算) |
牛肉 | 11kg |
豚肉 | 7kg |
鶏肉 | 4kg |
鶏卵 | 3kg |
1kgのトウモロコシ生産に灌漑用水1,800Lの水が必要で(環境省HP)、牛肉1kgを生産するために20,600Lと莫大な量の水が必要になるのです(環境省のバーチャルウォーター量自動計算より)。
これだけの穀物・水を生産するために広大な土地が必要になり、南米のアマゾンでの森林伐採の7割が畜産に由来するだと国連食糧農業機関(FAO)で報告されています。
また、家畜のげっぷに含まれるメタンは、二酸化炭素の25倍以上の温暖化効果があるので、地球温暖化の原因の1つです。
日本の農林水産分野で排出される温室効果ガス(GHG)の量は、約5,001万t(2020年度)のうち約15%に当たる約747万tが家畜の消化管内発酵と考えられています。
畜産肉から植物性代替肉(大豆ミート)に変更することで、これらの環境的負担を軽減することが可能です。
メリット②:動物福祉(アニマルウェルフェア)の改善
食肉を安価に大量消費するために、動物福祉(Animal Welfare:アニマルウェルフェア)に配慮が全くされていない飼育方法が一部で行われています。
動物福祉は、英国で提起された以下の「5つの自由」が基本原則です。
- 飢え、渇き及び栄養不良からの自由
- 恐怖及び苦悩からの自由
- 物理的、熱の不快さからの自由
- 苦痛、傷害及び疾病からの自由
- 通常の行動様式を発現する自由
特に家畜動物は、過密飼育・非衛生・薬剤多用など負担がかかってしまい、対策が急務です。
植物性代替肉(大豆ミート)が食肉の需要を奪うことで、動物福祉(アニマルウェルフェア)に配慮されていない畜産農家を減らすことができます。
メリット③:食の多様性への配慮
ベジタリアンでも完全菜食のヴィーガンから部分菜食のフレキシタリアンなど幅広い考え方があります。
肉類を食べられずたんぱく質の供給源が少ないので、ベジタリアンになりたくても難しかった方が多いです。
タンパク質の補給源が乏しかったことから不健康なベジタリアンも多く、食の選択肢を狭める原因でした。
肉類を使わない植物性代替肉(大豆ミート)は、ベジタリアンでも食べることができ、豊富な大豆などを原料にしているのでたんぱく質不足を解消できます。
日本だと肉を食べることができない僧侶のための精進料理に「がんもどき」を導入しており、ベジタリアン的発想は先進的だったといえます。
ベジタリアンを後押しすることができ、食の多様性を推進できるでしょう。
メリット④:健康的な食の提供
植物性代替肉(大豆ミート)は、コレステロールや脂肪分が少ないです。
製造過程で余剰成分のカット・不足成分の補充もコントロールすることができます。
ミンチ肉とミンチタイプの植物性代替肉(大豆ミート)を比較するために表でまとめてみました。
肉類 | 植物性代替肉 (大豆ミート) | ||||
牛ひき肉 100g | 豚ひき肉 100g | 鶏ひき肉 100g | ダイズラボ ミンチレトルト100g | ソミート プラントベース100g | |
エネルギー | 251kcal | 209kcal | 171kcal | 116kcal | 181kcal |
たんぱく質 | 17.1g | 17.7g | 17.5g | 14.5g | 19.7g |
脂質 | 21.1g | 17.2g | 12.0g | 3.4g | 8.9g |
※肉類は食品成分データベース、植物性代替肉は各社サイトより引用
カルビ肉についても比較するために表でまとめてみました。
牛カルビ | NEXTカルビ2.0 | |
エネルギー | 498kcal | 286kcal |
たんぱく質 | 11.7g | 39.4g |
脂質 | 47.5g | 4.0g |
※肉類は食品成分データベース、植物性代替肉は各社サイトより引用
植物性代替肉(大豆ミート)を使うことで、脂質が少なく、ヘルシーな食生活を送ることができます。
食肉に含まれない食物繊維・ミネラルが豊富に含まれているものもあるので、積極的にそうしたものを選びましょう。
メリット⑤:食の安定供給
2019年から2050年にかけて、世界人口は77億人から97億人に達するという国際連合の予測があります。(国際連合広報センターHPより)
これだけの人口に対して食糧を供給することは困難で、世界の食料需要量は2050年には2010年比1.7倍(58.17億トン)となり、畜産物と穀物の増加が大きいことが指摘されています。(農水省:2050年における世界の食料需給見通しより)
人口増加に伴って世界の食料需給が逼迫する中、食の選択肢が増えることは食の安定供給に寄与します。
また、土地生産性を向上させることで、限られたスペースで生産が不可能だった量を補うこともできます。
植物性代替肉(大豆ミート)のデメリット
植物性代替肉(大豆ミート)は、喜ばしいメリットだけではありません。
見過ごすことができないデメリットに、以下のものが挙げられています。
【植物性代替肉(大豆ミート)のデメリット】
- デメリット①:味・食感・風味が肉に劣る
- デメリット②:エネルギー・資源が必要
- デメリット③:添加物が豊富で栄養が少ない
- デメリット④:大豆特有の成分
- デメリット⑤:価格が高い
デメリット①:味・食感・風味が肉に劣る
植物性代替肉(大豆ミート)は、最新の技術を用いて、本物の肉の風味・味わいに感じられるように努力されています。
しかし、味・食感・風味が完全に再現しきれていません。
まだ技術の発展途上のため選択の幅が狭く、肉と簡単に代替できないのは残念です。
調理の仕方・調味料の工夫が必要ですが、カレーやハンバーグなど一部の料理においては問題なく植物性代替肉(大豆ミート)に置き換えられます。
まるで挽き肉のような大豆ミートも近年では日本で生産されているので、挑戦してみてください。
デメリット②:エネルギー・資源が必要
植物性代替肉(大豆ミート)の原料として、大豆・エンドウ豆が主に使われています。
国内で生産できれば良いのですが、食用大豆の自給率は約20%と低く、海外からの輸入に頼っているのが現状です。
輸送時にCO2が大量に排出するなど、多くのエネルギー・資源が必要な状態になります。
国内での食糧自給率が低い中で、植物性代替肉(大豆ミート)の原料を生産するための土地などの資源を確保するのは難しく、今後技術が発展してもこの問題は解消されにくいでしょう。
デメリット③:添加物が豊富で栄養が少ない
植物性代替肉(大豆ミート)は化学的に精製されるので、添加物が豊富に含まれる場合があります。
健康に配慮して無添加の商品が増えていますが、注意して大豆ミートを選択しましょう。
食品の表示について、プラントベース食品関連情報を消費者庁が提示しているのでご確認ください。
牛ひき肉 | 豚ひき肉 | 鶏ひき肉 | |
鉄 | 2.4mg | 1.0mg | 0.8mg |
亜鉛 | 5.2mg | 2.8㎎ | 1.1mg |
ビタミンB12 | 1.5μg | 0.4μg | 0.2μg |
代替肉は動物性原料が使われていないため、動物由来のビタミン・ミネラルが摂取できません。
特に肉類に豊富に含まれている「鉄・亜鉛・ビタミンB12」を他の手段に摂り入れるのは非常に困難で、ベジタリアン歴の長い方はサプリメントに頼っている方が多くいます。
植物性代替肉(大豆ミート)に完全にシフトする際には問題になるので、部分的に導入しましょう。
植物性代替肉(大豆ミート)で注視されている添加物について、下記にてまとめていますのでご参照ください。
デメリット④:大豆特有の成分
大豆には、女性ホルモンであるエストロゲンと構造が類似している「大豆イソフラボン」と呼ばれる成分が含まれています。
大豆イソフラボン約250mg/100g含まれ、大豆イソフラボンの1日の上限摂取量70~75mgとされています(大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A(農林水産省))。
骨粗しょう症・乳がん・前立腺がんなどの予防効果が期待されるが、乳がん発症・再発のリスクを高める可能性も示唆されています。
内閣府食品安全委員会の大豆イソフラボンを含む特定保健用食品の安全性評価の基本的な考え方によると、「妊婦及び胎児においては、動物実験において有害作用が報告されていること、大豆イソフラボンのトポイソメラーゼII阻害作用を鑑みると、特定保健用食品として日常的な食生活に上乗せして摂取することは、推奨できない」ことが報告されています。
そのため、肉類を全部植物性代替肉(大豆ミート)に置き換えることは一定のリスクがるので、部分的な導入が望ましいです。
デメリット⑤:価格が高い
技術発展途上なので、植物性代替肉(大豆ミート)のコストは割高です。
低価格化に向けて各社努力しているところですので、今後の課題になります。
需給の逼迫で今後穀物価格が高くなっていくと、コストの低減は厳しいかもしれません。
まとめ
植物性代替肉(大豆ミート)の「メリット・デメリット」をまとめました。
【植物性代替肉(大豆ミート)のメリット】
- メリット①:環境負荷の低減
- メリット②:動物福祉(アニマルウェルフェア)の改善
- メリット③:食の多様性への配慮
- メリット④:健康的な食の提供
- メリット⑤:食の安定供給
【植物性代替肉(大豆ミート)のデメリット】
- デメリット①:味・食感・風味が肉に劣る
- デメリット②:エネルギー・資源が必要
- デメリット③:添加物が豊富で栄養が少ない
- デメリット④:大豆特有の成分
- デメリット⑤:価格が高い
メリット・デメリットをしっかり吟味した上で、植物性代替肉(大豆ミート)を導入に踏み切りましょう。
日本で製造されている植物性代替肉(大豆ミート)をまとめていますので、参考にしてみてください。