野球善哉BACK NUMBER
「軍隊のように厳しい練習」も今は昔。
CS初進出を果たした広島の変貌ぶり。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2013/09/30 12:20
野手出身ながら、調整を自主性に任せるなど、投手起用に柔軟さを見せた野村謙二郎監督。短期決戦のCSではどんな采配を見せてくれるのだろうか。
スタジアムの喧騒に混じって売店でどんぶりを食べていると、広島カープファンの弾んだ声が聞こえてきた。
「今年はCSがあるから、また球場に来られる機会が増えていいね」
実に16年ぶりのAクラス入り。
今年ほど広島カープファンにとって熱い年はない。Bクラスが定位置だった赤ヘルがついにクライマックスシリーズへの出場を決めたのである。広島カープファンは、「CS」という言葉を口にできる喜びそのものに、心を躍らせているかのようだった。
果たして、今季の広島は何が変わったのだろうか。
昨季まで広島の投手コーチを務め、現在は解説で活躍する大野豊氏はいう。
「例年と比べて対照的なのはいつも9月くらいに失速するところが、今年は9月に調子がいいというところでしょうね。まずは先発の4本柱が確立しているということ。後ろの投手陣も、ミコライオが安定しているのと、今村(猛)の調子が良くないのを永川勝浩・横山竜士らベテランが奮闘して助けている。守備にミスの多いチームだったけど、終盤にしっかり守れるチームになりつつある」
磐石の強さを誇った9月の広島投手陣。
9月に入って15勝7敗。
エース・前田健太を中心にバリントン、大竹寛、野村祐輔の4本柱はセ・リーグ屈指の安定感を誇っている。
野手陣に目を移しても、丸佳浩・菊池涼介の若い1、2番は、出場機会を増やす中でパフォーマンスを高めてきた。打率こそ低いものの、2人の成長がそのままチームの好調につながっていたと言っても良いシーズンだった。そこに7月から加入した助っ人外国人のキラが上手く絡み、チームの得点源として存在感を示した。さらには、野村謙二郎監督が野手のコマを臨機応変に組み合わせて、無駄なく使いきったことで戦えるチームを作っている。
丸・菊池のほかに、捕手の石原慶幸が固定されているが、他のポジションは日替わりで組んでいる。スタメンに固執せず、試合の中で積極的に交代させていくイメージである。場面に応じて勝負を仕掛けていき、スタメンだけで勝負をしない。チームの総合力で勝負しているというのが今季の広島の戦いだ。
ここ数年下位に低迷してきた中で、丸、菊池ら若手が登用される機会が増え、チームは徐々に力をつけていった。
そうしたチームの底上げが、故障がちだった大竹や永川、梵英心、廣瀬純ら、中堅・ベテランクラスの復活も促したし、赤松真人・迎祐一郎ら移籍組も、チーム内での居場所を見つけた。
そもそも「赤ヘル軍団」といわれたころから、広島は育成力に定評があった。