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猛牛のささやきBACK NUMBER

「毎日、朝起きるたびに葛藤が」オリックスの“職人”が34歳で引退決断の理由「僕の中ではあのバスターのせいで…」伝説プレーと知られざる重圧

posted2025/02/10 11:05

 
「毎日、朝起きるたびに葛藤が」オリックスの“職人”が34歳で引退決断の理由「僕の中ではあのバスターのせいで…」伝説プレーと知られざる重圧<Number Web> photograph by JIJI PRESS

劇的な「サヨナラバスター」を決めてチームメートに祝福される小田

text by

米虫紀子

米虫紀子Noriko Yonemushi

PROFILE

photograph by

JIJI PRESS

 昨年、惜しまれながら現役を引退したオリックスの小田裕也外野手。新シーズンからは育成コーチとして後進の育成に腕をふるう名バイプレーヤーが、出番に備えて技を磨き続けてきた現役時代の思いや、忘れられない“あのプレー”の裏側を語った。〈全2回の後編/前編から読む〉

 小田裕也と言えば、伝説の“サヨナラバスター”を思い起こす人が多いのではないか。

 オリックスが25年ぶりのリーグ優勝を果たした2021年のCSファイナルステージ第3戦。ロッテを相手に2連勝していたオリックスは、第3戦に勝つか引き分ければ日本シリーズ進出が決まるという状況だった。

中嶋監督の耳打ち

 2対3と1点リードされて迎えた9回裏無死一、二塁の場面で、小田が打席に入った。

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 打席に向かう際、中嶋聡監督(現スペシャルアドバイザー)から「いろいろ状況が変わるだろうけど、思い切っていけ」と耳打ちされていた。

 最初のサインは、小田が予想していた通り“バント”だった。

 だが、マウンドに集まってから一旦守備位置に戻っていたロッテの内野陣が、再びマウンドに集まり、吉井理人投手コーチ(現監督)も出てきて入念に確認作業をしていた。何か仕掛けてくると予想できた。

「あ、バスターか」

 そのあと、小田に二度目のサインが出た。“バスター”だ。

 誰もがバントと予想していたシチュエーションでのバスターのサイン。しかも小田はこの年の公式戦でわずか1安打だった。だが小田は驚かなかった。

「『あ、バスターか』ぐらいな感じでした。毎日ベンチで、1球1球、瞬間瞬間でサインがコロコロ変わっていくのを140試合以上見ていましたから」

 むしろホッとした気持ちもあったという。

「バントのほうが緊張するので。『絶対決めないといけない』というのがあるから、ガチガチになるんです」

「ファッ!となった」理由

 あの9回は先頭だったT—岡田が右前安打で出塁し、代走で山足達也が送られた。次打者の安達了一にバントのサインが出たが、初球がファウルになり、ヒッティングに切り替わった。

「安達さんが打ったら、僕がそのまま(打席に)行くぞと言われていて、打たなかったら頓宮(裕真)が代打で行くことになっていた。で、安達さんが打った。

 ベンチはみんな、ワーッと盛り上がっていたけど、僕だけ暗かった(苦笑)。『はー、バントやん』みたいな感じで。そこからのバスターだったから、ファッ!となったのかもしれないです(笑)」

【次ページ】 劇的バスターの“呪縛”

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