FLUIDや、LLamaなどのメンバーが集結した京都のオルタナティヴ・ロック・バンド、OUTATBEROが3ヶ月連続で新作をリリース!!
最初のリリースは、FLAKE RECORDSのDAWA店長の呼びかけによりリリースが決まった7インチ・アナログ盤『NO TOWN/HARPS』。OUTATBEROにとっての未知であった"電子音楽"の領域に足を踏み入れ、京都の電子音楽の雄、PsysEx(サイセクス)のサウンド・プロデュースによる挑戦の1枚。
OUTATBERO / NO TOWN/HARPS
【Track List】
01. No Town / 02. No Town (PsysEx Remix) / 03. Harps
続く2枚目は、そのPsysExの糸魚健一が運営するエクスペリメンタル/エレクトロニカ・レーベル"shrine.jp"より、OUTATBEROのフロントマン、Bの初のソロ・アルバムである『FINE DAY IN MAY』がリリース!! 儚いヴォーカル。概念の脱却とスリルをもたらす先鋭的なクラブ・ミュージック / ワールド・ミュージックの要素。そして生々しさが生み出す緊張感とユーモア。糸魚健一がミックスダウンからマスタリングを。ジャケット・デザインは今回の7インチ作品と同じく、世界的トップ・アニメ・スタジオでも活躍するクリエイティヴ・ユニットsankakuが手掛け、パッケージとして完成された1枚が誕生した。
B FROM OUTATBERO / FINE DAY IN MAY
【Track List】
01. HARPS / 02. BREATH / 03. ENEMY SKIN / 04. LIKE A MOTION / 05. MAN AND GOAT / 06. NO TOWN / 07. THE NIGHT
※M1,M6 self cover and remix "NO TOWN,HARPS / OUTATBERO"
そして今回のインタヴューにてはじめて触れられた、OUTATBERO、2枚目の7インチ・アナログ盤『FORGETALL/DIVISION』が10月にリリースされる。
2枚のフル・アルバムを完成させ、次への進化へ挑むOUTATBERO。今回の3枚のリリースの経緯とともに、彼らの変化を紐解くフロントマンBのインタヴューをお届けします。
INTERVIEW : B(OUTATBERO)
インタヴュー&文 : 飯田仁一郎(OTOTOY編集長 / Limited Express (Has gone?))
自分たちで感動するために分かんないことやるしかなかったのかな。
――8月28日に7インチ・アナログ『NO TOWN/HARPS』を出しましたね。そして、9月25日にソロ『FINE DAY IN MAY』を発売。10月にも7インチ・アナログ作品『FORGET ALL/DIVISION』を発売予定ですが、これはどこからリリースするんですか?
B(Vo、Gu) : 『NO TOWN/HARPS』と同じ、FLAKE RECORDSから出します。出したい! と頼みました。8月に1枚OUTATBEROの作品を出し、その作業をしているなかでソロも出そうって話が出て今回のアルバム、その制作の中でその次の10月も出せたら綺麗だなおもしろいなって思ったんです。
――3か月連続リリース、おもしろいですね。前作はFLAKE RECORDSではなかったと思うんですが、それはどういう経緯で?
B : 今年の春くらいに、uri gagarnのリリース・パーティに出たときに、 FLAKE RECORDSのDAWA店長が観にきてくれていたんです。そのときに「うちから7インチ出そうよ」って声をかけてくれて。もともとDAWAさんは僕らの作品をよく扱ってくれてたし、インストア・ライヴもさせてくれて、良くして下さったんです。実はそれまで作品を作る気はなくて。作る音楽は分かってきてたんですけど、形にするにはまだかなという状況でした。でもDAWAさんが7インチ出そうよ、って言ってくれたことが嬉しくて。これまでのアルバムに比べて(今回の場合)バンドの負担って小さいじゃないですか。だから慎重に理想的にやれる気がしたんです。
――なるほど。そもそも、7インチというものに憧れがあったんですか?
B : 僕にはなかったですね。でもレコードっていいじゃないですか。最近レコードを良く思う人も増えてきたように、僕もすくなからずボヤっとそう思ってたんです。僕が作るべきなのが7インチなのかと言われると、ちょっと自分では分かんなかったんですけど、FLAKE RECORDSから僕らがそれをいまこのとき出すことにはすごく意味があるなって。
――先ほど、「作る音楽はわかってきたけれど」と言っていましたけど、それまでに何か行き詰りがあったんですか?
B : 「ボロフェスタ」とかにも出演したあたり、ロック・バンドとして演奏の熱量を得られたと思うんですよ。それを僕らは良しとしていたんですけど、なんかやっぱり行き詰る感じがあったんです。そもそもこういう音楽をやりたかったかどうかがわからなくなって、次やることを探していたんですよ。スタジオにシンセサイザーを入れてみたりしたことで、ちょっとずつやってみたいことが見えてきたんですよね。
――それはいつごろからですか?
B : アルバムが出たあとですね、2011年の冬。最初のうちは結構うまくいかなかったんですよね。どうやってそこを乗り越えたかといったら、結局根性しかなかったんですけども。運よくみんな負けず嫌いな精神を持ってて。
――「これでいいのか」ってなって、メンバーと話し合ったりはしたんですか?
B : 話し合うというよりも、ひたすらスタジオで「こういうことやってみよう」って試行錯誤しました。僕も含めなんですけど、それぞれのプレイに不満が出てきて、それが良くないなって。「これでダサくなったら負けだな」というプレッシャーもあって。そのモヤモヤしている流れで、僕がテクノ / エレクトロニカの音にはまっていったんです。これまで聴いてきたはずなのに、ふとしたタイミングでこれまでにない興味が湧いたんです。電子音楽やヒップホップにはすごく難しい音楽のイメージがあって、どっぷりと要素を扱おうとすることに抵抗があったんですけど、「俺でもできないだろうか」という、好奇心に似た気持ちが湧いたんです。
―― 『FINE DAY IN MAY』を出すレーベル・shrine.jpや、アンダーグラウンド・ヒップホップとは、京都メトロで?
B : 例えば、「NIGHT TIME HIGH」という、ダブとかレゲエ、ベース・ミュージックのイベントがあって。がむしゃらでひたむきで、音楽もすごいかっこいいなと思ってます。身近にそういったことがあるからこそ、ロック・バンドのなかでギターを弾いて歌ったり、っていうのは僕的には素直にやれることだとわかったし、でも化けたいなと思って。自分とは違うものに触れて受け入れられたことで、ちょっと恐れてた電子音楽も僕らしく表現できないだろうかと。不安はありました。
――バンドとして進化したかったんですか? それとも、新しくて、聴いたことないものを作りたかったのでしょうか? そこに対する挑戦ってすごく大変だと思うのですが。
B : 結果、果敢に挑戦できたといえます。OUTATBEROって、曲を作っては自分たちで感動して、その感動をライヴで爆発させるようなバンドだと思うんです。だから次、また曲が作れる。自分たちで感動するために分かんないことやるしかなかったのかな。
――まず自分たちを感動させるために新しい挑戦をしたと。
B : 曲を作っていくうちに新しいOUTATBEROが見えてきたんですよね。それまでちょっと噛み合いが悪くなっていた部分が良くなってうまく回りだして。最近ライヴではすごくやってる曲があるんですけど、そのへんから上手くいきだしました。
聴いてるうちよくわかんなくなって、気が付いたら終わってる音楽好きなんですよ
――そこから段々と良くなっていったんですね。ところで今回ミックスとマスタリングを担当したPsysExの糸魚さんとはどういう経緯で?
B : DAWAさんに声かけてもらった後、みんなで話し合いをして、そのときに糸魚さんの話がでてきました。糸魚さんはかっこいい、糸魚さんがやってくれるならできると思って。ここ数年で感動したライヴといえば、糸魚さんです。僕らのワンマンライブやったときに、ゲストでPsysExがライヴしたんですよ。
――憧れの人だったんですね。
B : toricoのメンバーにしてもfluidにしても周りの多くの人があの人のすごさを語れるし、僕らみんな素直に尊敬してたので、思い切ってお願いしようと思いました。糸魚さんもOUTRATBEROのことをすごく好きでいてくれて「やるやる!」って一瞬で仕上げてくれて。自信がなかったけど、糸魚さんがやるって言ってくれたおかげで恐れがなくなりました。何やっても大丈夫な気がしましたね。
――それは良かったです! 頼んでみて、どうでした?
B : かなり大胆なミックスですよね。やっぱすごいなと思いました。あとはFLAKE RECORDSとあまり繋がりがないからこそ一層いいなって思ったんですよ。そこに俺らがいることで初めて交わるんであれば、なんかこれは別の意味もあるなと思って。
――それはおもしろいかもしれないです。ソロの話はどうやって進んでいったんですか?
B : 糸魚さんに「アルバムとかどうするの?」って言われて。「アルバムは考えてるですけど、まだなんですよね。自分が追いついてなくて」って答えて。7インチ作ったことで、何かしらの作品に向かっていく良いスタートが切れたので、良いタイミングだとは思っていたんです。でもバンドとしてはまだ準備が整わない、「俺1人ってどうですか?」っていったら、その場でソロのリリース日が決まりました。
B FROM OUTATBERO / FINE DAY IN MAY
――まだソロの曲もないのに(笑)。
B : (笑)。『NO TOWN/HARPS』をつくってノってたんで、速攻「やります」って言っちゃいました。
――なるほど。ソロ・アルバムにも「NO TOWN」と「HARPS」が入ってるんですよね。正直「NO TOWN」はわかったけど、「HARPS」は同じ曲だと思えませんでした(笑)。ソロとしてまた別バージョンを作った、っていうニュアンスなんですか。
B : 『NO TOWN/HARPS』から確実に繋がるものだったので、ハッキリとそうだと示したかった。OUTATBEROの方は、曲をどう表現するかわかっていたし、まとめるのはスムーズだったなと思うんです。でも、バンドでやりたいこと、まだ自分で聴いたことないようなOUTATBEROをつくるには自分がまず変わらないといけない。完全に解体して考えたかった。
――バンドを成長させるために自分の確信を高めた?
B : かなりそのつもりもありました。アルバムを作った理由としては、それが一番分かりやすい。いちバンドマンのソロ・アルバムですけど、ただやっぱshrine.jpから発売だし、それも糸魚さんのミックス / マスタリングだから、僕としてはあまりナメたものは作れへんっていうのはありました。
――バンドのために、B FROM OUTATBEROとして実験をしたんですね。
B : 実験とするなら、良い実験やったと思います。とはいえ、ソロとしても形にならなかったら嫌なので、焦りました。手探りでちょっとずつ作ったんです。1トラックずつ、エフェクトを組んで、何かしらやっと形になり、それがやっと聴けるものになってきて、嬉しかった。
――かなり手探りだったんですね。その実験の結果、どんな音楽に辿り着いたんですか?
B : 聴いてるうちよくわかんなくなって、気が付いたら終わってる音楽好きなんですよ。むしろ、それが僕の"FINE DAY IN MAY"に対する感想かもしれない。鮮やかで乾いた遠くに在る"無"。最初は「いいなぁ」と思いながら聴いてて、しばらくたったら何も考えてもないし、ただ聴いてて入り込んでいるだけみたいな。作りながらそういう音楽になりそうって思いました。その時々、部分部分に反応してしまうようなアルバムになればと思ったんです。
――なるほど。なんとなくわかります。
B : あとは、世界観。例えば、パリ郊外暴動事件を思い出したんです。発端は、警察に追われたアフリカ系の移民の若者3人が変電所かなんかに逃げ込んで、3人のうち2人が感電死する事件。それで他の若いやつらが暴動起こして、めっちゃ広がって。それをふと思い出して。『NO TOWN』ってそれをモチーフにしてるんです。ジャケットは火炎瓶持ってる青年。近頃、メッセージ性と具体的な世界観ていうのは実はバンドの方にはあるんですね。反動で、ソロの方はメッセージ性はあまりないです。ただ誰か2人の間に起こった出来事や感情が展開されるだけのような。でも、それぞれ舞台が違うだけで言ってることは全部一緒かもしれないです(笑)。
『FINE DAY IN MAY』はあらゆる意味を込めて、納得のいくもの
――なるほど、それは興味深いですね。ソロ・アルバムは実際できあがってみてどうでしたか。聴き比べたんですけど、濃度も人数も違うし、アナログの方が音に厚みがありますよね。
B : 濃いものって、難しいじゃないですか。濃すぎて鬱陶しいときもありますし。バンドは、濃度を扱えるようになってきた。それに対して個人の作品には軽薄さを求めました。このアルバムには興味深い要素をたくさん入れられれば良かったんですよね。それを自分なりに距離をおいて聴けるのがいいと思います。曲にそもそもの意味を持たせすぎてもよくない。
――マニー・マークのソロとかとても好きなんですけど、そういえばそうだなと思いました(笑)。らしくないから良いというか。
B : どっかのタイミングで濃密に聴こえる瞬間っていいなと思うんです。移動中に聞いたりして、「めっちゃ自分、ぼーっとしてたな」って思うこととか。2曲目の「BREATH」とか、ラストの「THE NIGHT」とか、使いたい音を最も使えたし、すごく気に入ってるんですよ。ジャンクなベースの音で、バランス感覚もかなり違和感があるものができました。ベースが急にボーンとでっかくなったりとか、均整のとれていない感じって、不安な感じがあるけど、僕はその感覚がほしかった。それってバンドでは出せない音ですからね。
――なるほど。バンドとして出す、10月の『FORGETALL/DIVISION』は発売日は決まってるし、もう録り終わってるんですよね?
OUTATBERO / FORGETALL/DIVISION
B : もう入稿もしてて、届いたらいつ出すか決めるくらいです。これ、自分で言うのもあれかもしれないんですけど、「あ、結構ソロ経てるな」っていう感じありませんでしたか?
―― 1番印象に残ったのが「DIVISION」で、OUTATBEROがやってきたようなロック性がありながら、ぐっちゃぐちゃになってる感じっていうのがそう感じました。
B : ちょっとだけソロの制作が押してしまったんです。急いで作らないとヤバいなって思う一方、『FORGET ALL/DIVISION』に確信がありました。「HARPS」の後くらいにできた曲なんですね。最近あまりライヴでやらなくなってしまった曲なんです。そのときもどうしていいか分かんなくなってるときで。でも、この曲、いまなら絶対蘇るなって思って。
――次の導きというか、良いものができるという感覚があったんですね。
B : めちゃくちゃ自然な流れでした。ソロ・アルバムが終わった時点で、次はOUTATBEROですごいアルバムが作れるっていう自信が湧いて。『FINE DAY IN MAY』はあらゆる意味を込めて、納得のいくもの。ちなみに、みんなでアルバムつくるなら来年やなって言ってるんですけど。
――そのときはどこから出すんですか?
B : まだ、何も決めてないですよ。あはは(笑)。きっと恐ろしく大変だろうけど、作れる気がします。
――3枚目期待してます。
B : ありがとうございます。
OUTATBEROの過去音源はこちら
OUTATBERO / ARM
2作目にして到達点。前衛と叙情による破滅型ポップ・ミュージック。シューゲイズ・エレクトロニカ・フリーフォーク・ダブステップなど数多あるジャンルを再構築し攻撃的なサウンドと懐かしい泥臭さを併せ持つ新機軸オルタナティブ・ロック・バンド。洋楽と間違えるほどの日本人離れしたセンス、緻密過ぎる程計算的な曲構成と絶妙とも言えるノスタルジックなメロディによりいびつでありつつも美を見事に体現している。前作から延長線上に位置付けられる今作は1つのシリーズの終点と言って相違ないだろう。
OUTATBERO / CUPRUNOID
2007年京都にて結成。京都の雄、FLUIDやLLamaなどのメンバーが集結。エモ・ポストロック・シューゲイズ・エレクトロニカなど数多あるジャンルを再構築し、極限まで減らされた音数ながら、緻密に構成された楽曲と類を見ない独自のセンスで、新しい音と懐かしい泥臭さが混じり合っている。彼らの初公式音源となる本作は、studioNUITOより現在活動凍結中のnuitoのヒラヰプロデュースにて制作されたもの。また、The XXや I am robot&proud、Anathallo、31 nots、NO AGE等海外アーティストのサポートを数多く務めるなど、ライヴ・パフォーマンスにも注目が集まっています。
LIVE INFORMATION
tapi presents OUTATBERO"NO TOWN/HARPS"RELEASE PARTY
2013年9月29日(日)@栄spazio rita
w/ トゥラリカ / room501 / CARD / SLAVEDRIVER
秘響秋祭り
秘響 with 徳大軽音GREENS企画 "OUTATBEROレコ発感染ライブ"
2013年10/19@徳島大学音楽ホール
w/ NOKIES! / THE NINJA / the CHeeeeZcake and more
2013年10月4日(金)@梅田Shangri-La
2013年10月18日(金)@広島4.14
2013年10月19日(土)@高松 TOONICE
PROFILE
OUTATBERO
京都で結成されたオルタナティヴ・ロック・バンド。
2010年秋に1stアルバム『CUPRUNOID』、2011年冬EUツアーを経て2ndアルバム『ARM』リリース。そして、2013年夏、約1年半ぶりとなる新音源、7インチ盤「NO TOWN/HARPS」ををFLAKE SOUNDSからリリース。