ハリネコ、“新しいポップス”を提示した気鋭のリリース・パーティー——OTOTOYライヴ・レポート
変幻自在なポップ・センスと楽曲。聴くものをインパクトと優しくたゆたうようなメロディーで魅了してきた、SSW沙知によるプロジェクト〈ハリネコ〉。7月に発売されたファースト・フル・アルバム『roOt.』は即興演奏、ポップスなど、あらゆる要素がとてつもなく自由に、かつバランスよく混ざりあった好作であった。そんな彼女達による今作のリリース・パーティーが8月1日にTSUTAYA O-nestで豪華な共演者とともに行われた。OTOTOYでは当日の模様をライヴ・レポートとしてお届け。足を運んだ方はもちろん、行けなかった方も是非アルバム『roOt.』とともに今レポートを楽しんでいただきたい。
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ハリネコ / roOt.(24bit/48kHz)
【配信フォーマット / 価格】
wav / alac / flac : 単曲270円 まとめ購入1,944円
【Track List】
01. 砂の絵
02. 真藍の実
03. さくらのいつか
04. </s>
05. 汗とシーツ
06. is here
07. 空と風と水の彼方へ
08. ハロー、さよなら
09. Good-bye dawn.
LIVE REPORT : ハリネコ1st Full Album『roOt.』release ParTyYY!!
8月1日、渋谷のO-nestでハリネコの新作『roOt.』のリリース・パーティが開催された。それぞれに注目度の高い3組の共演者が集まっていることもさることながら、なにせこの日は沙知と『roOt.』のレコーディングを共にしたミュージシャン達が揃ってハリネコのステージに立つのだ。会場に詰めかけた人の期待も当然ながら大きかったようで、開演してすぐに場内は満員状態となっていた。
最初にステージに立ったのは白波多カミン。この日は鍵盤奏者のハジメタルとのデュオ編成で、目の前をまっすぐ見据えながら歌う白波多の姿がとても凛々しかった。「大森靖子ちゃんに捧げます」と言って披露された、笹口騒音ハーモニカのカヴァー「プロポーズ」も印象深く、初見の人にもたしかなインパクトを与えるライヴだったと思う。続く来来来チームは、ヴォーカリストの代打役としてnhhmbaseのマモル、そしてギターにH mountainsの畠山を加えたスペシャル編成で登場。イレギュラーな形態とはいえ、そのアンサンブルはアルバム『東洋一』をリリースしてますます加速するバンドの勢いを如実に感じさせるもので、ゆったりとしたグルーヴでフロアを揺らしていく様がなんとも痛快だ。そして、その来来来チームとの共演盤もリリースしている大森靖子は、大森靖子&THEピンクトカレフとして登場し、練り上げられた屈強な演奏をガツンと見せつけた。この夏は数多くの大型フェスに出演し、そのたびに話題を振りまいている大森の存在感はもちろん強烈だったが、同時にTHEピンクトカレフの4人によるエナジェティックなロック・サウンドにもひたすら圧倒させられた。
アルバムのリリース・パーティというと、場合によってはお祝いムードのなごやかなイヴェントになることもままあるが、ここまで登場した3組にはそうした控え目な様子がなく、むしろかなりアグレッシヴな姿勢でこの日のライヴに臨んでいるように感じられた。しのぎを削るような激しいライヴがつづき、会場の熱気も大いに高まったところで、いよいよこの一日の主役であるハリネコのメンバーがステージに登場する。一瞬フロアに緊張が走るなか、鍵盤を前にした沙知が演奏し始めたのは、やはり『roOt.』の冒頭を飾る曲「砂の絵」だった。
とても端正なメロディーラインを基軸としつつ、いたるところにイビツなバンド・アレンジを施したハリネコの楽曲が、目の前でじっくりと具現化されていく。沙知と同じくシンガー・ソングライターでもあるRyo Hamamotoは、ここではギタリストとして楽曲の展開に呼応しながら卓越した腕前を見せているし、普段はビッグ・バンドWUJA BIN BINを牽引しているケイタイモがフレッドレス・ベースを弾く姿は、やはり無条件でオーディエンスの視線を引き付ける存在感を放っていた。キーボード奏者の蓮尾理之が発信する耽美なノイズは『roOt.』を構成するサウンドの大きなフックで、「ビー!」や「ンギャー!」と鳴るたびに感じる妙な高揚感がクセになりそうだ。そして、セッション性の高いハリネコの楽曲において、とがしひろきのドラミングが果たしている役割は、やはり何よりも大きいと感じた。
『roOt.』の収録曲を中心に展開されていったライヴ中、とにかく圧巻だったのが本編最後に披露された「真藍の実」だ。11拍子という一般的なポップ・ソングではあまり耳にしない構造をもつこの曲に対して、沙知と4人の演奏家たちは、時に不協和音を鳴らしながらも的確にリズムを維持して、曲をドライヴさせていく。そして終盤で徐々にビートが激しさを増していき、最高潮に達したところで、スパッと演奏は終了。『roOt.』という異形のポップ・アルバムの核心を見せつけるようなアンサンブルに、会場からは大きな歓声が上がっていた。
その歓声にこたえてステージに戻った沙知は、バンド・メンバーや関係者、そして来場した人々に感謝を述べながら、再び鍵盤に手を置いた。演奏が始まったのは、前作『とうきょう』のタイトル・トラック「とうきょう」。沙知が澄んだ声を荒げるようにして歌い、メンバー間のインプロヴィゼーションも交わされるこの混沌とした曲は、ハリネコという音楽プロジェクトのもつ自由をそのまま体現しているようだった。『roOt.』を巡るハリネコのセッションはひとまずここで一区切りだが、この日のライヴとレコーディングに参加した4人のように、ハリネコの音楽的な自由に惹きつけられ、そこで自らの腕を試したくなるミュージシャン達はこれからもあとを絶たないだろう。沙知を中心としたハリネコという磁場は、ここからさらに大きくなるはず。そんな予感に胸を高鳴らせながら、終演後も賑わう会場をあとにした。(text by 渡辺裕也)
写真 : 富田絵美
8月1日『roOt.』release ParTyYY!! のライヴ動画がついに公開!!
LIVE INFORMATION
■viBirth × CINRA presents「exPoP!!!!! volume76」
2014年8月28日(木)@渋谷TSUTAYA O-NEST
時間 : open18 : 30 start19 : 00
出演 : ハリネコ / Emerald / and more
料金 : 入場無料(without 2Drinks)
ハリネコ ライヴ・メンバー : 沙知(vo.key) / Ryo Hamamoto(gt) / ケイタイモ(b) / とがしひろき(ds)
■2014年8月16日(木)@四軒茶屋
open18 : 30 start19 : 00
時間 : open18 : 30 start19 : 00
出演 : アシタカアヤコ / 沙知(ハリネコ) / へちまにあ
料金 : 前売り1500 / 当日2000(+1D)
■2014年9月5日(金)@代官山晴れたら空に豆まいて
出演 : ハリネコ / and more...
■2014年9月21日(日)@札幌OYOYO
出演 : ハリネコ / スネアカバー / なかにしりく × KAGE稲荷 / and more...
PROFILE
ハリネコ
札幌出身の SSW 沙知(vo.key)による変幻自在な音楽プロジェクト「ハリネコ」。
全作詞曲、編曲と、トータル・プロデュースを行う。
参加メンバーはさまざま。ポップスを軸としながら、あらゆるジャンルにインプロビゼーションをも取り入れたアート・パフォーマンスのような景色観と独自の音楽世界を展開。
聴く人すべてが楽しく、ワクワクするような音楽を体現している。