ラヴ歌って悪ふざけしてパンクで飛ばして… バラエティパック的なHelsinki Lambda Club新作配信
"恋人に言われたらグサっとくる一言「友達にもどろう」というタイトルに決定した"という、相変わらずのユーモアさを持って4曲入りのマキシ・シングルをリリースしたHelsinki Lambda Club。本作にはライヴ会場と通販のみで販売されていた500枚限定シングルに収録されていた「TVHBD」「メリールウ」の2曲に加え、自主制作盤から新録した「ぢきぢき」、そして「地獄でワルツを踊りましょう」というフレーズが印象的なギターロック・アンセム「しゃれこうべ しゃれこうべ」の新曲1曲が収録。OTOTOYでは歌詞ブックレットのPDF付きで配信。ジャケット、およびブックレット内のイラストは初代4コマGP優勝者であり、芸人のおほしんたろうが書き下ろし。バラエティ含んだ楽曲と共に味わい深く楽しめるだろう。
前作から1年のあいだにアナログフィッシュやふくろうず、古舘佑太郎(The SALOVERS)やどついたるねん、様々なアーティストと2マンを重ね、外へ外へと駆け出している彼ら。特集ではメンバーにインタヴューを敢行し、いまの心境を訊く。
Helsinki Lambda Club / 友達にもどろう
【Track List】
01. しゃれこうべ しゃれこうべ
02. TVHBD
03. ぢきぢき
04. メリールウ
【配信形態 / 価格】
16bit/44.1kHz(WAV / ALAC / FLAC) / AAC / MP3
単曲 250円(税込) / アルバム 2,000円(税込)
※アルバム購入で歌詞ブックレット(PDF)が付属します
INTERVIEW : Helsinki Lambda Club
Helsinki Lambda Clubが1年ぶりの作品『友達にもどろう』をリリースする。歪んだギター・サウンドのなかでヴォーカル橋本薫の歌が映えるミドル・ナンバー「しゃれこうべ しゃれこうべ」、悪ふざけすれすれのユーモアとポストパンク的アレンジが融合した「TVHBD」、優しいバンド・サウンドが心地良い「ぢきぢき」、パンキッシュに振り切った「メリールウ」。今作収録の4曲はそれぞれ趣が異なり、彼らのさまざまな表情をパッケージしたものとなった。
2015年3月に1stミニ・アルバム『olutta』を発表して以降、自主企画を精力的に開催、多くのフェス、イベントに出演するなど、彼らは着々とその活躍のフィールドを広めてきた。そうした状況の移り変わりは橋本のソング・ライティングにも影響を与え、その変化はバンド・メンバーにも波及していく。2015年の1年間のHelsinki Lambda Clubの歩みを振り返りながら、彼らの現在とこれからについて話を訊いた。
インタヴュー : 飯田仁一郎
構成&文 : 鶯巣大介
写真 : 大橋祐希
学業専念やむなくって感じで一時離脱です。ロックの欠片もない(笑)
──1年ぶりにインタヴューさせてもらいますけど、みなさんの雰囲気が前と比べて変わったなと感じました。どっしりとしたというか。ところで今日は3人だけなんですが… 佐久間くんは?
橋本薫(以下、橋本) : 学業専念やむなくって感じで一時離脱です。ロックの欠片もない(笑)。
稲葉航大(以下、稲葉) : ほんとどうしようもないんですよ!
橋本 : 一旦バンドから抜けて、ライヴではサポートを入れます。Group2ってバンドのクマガイタイキってやつですね。6月のワンマンではKidori Kidoriのマッシュさんがゲストでギターを弾いてくれます。そうやっていろんな人と演奏する機会がこれから増えるので、それは逆に楽しみですね。
──いないのが悲しい理由でなくてよかった(笑)。ヘルシンキはここ1年でバンドの活動もますます活発になってきてますよね。
アベヨウスケ(以下、アベ) : この1年、やってること自体は特別何かが変わったわけではないんですけど、なるべく多くの人に聴いてもらえる機会を増やすためにたくさんライヴをやってきて。急激にってわけじゃないですけど、集客だったりライヴのできも含めて、ちょっとずつ前よりも良くなってる実感がありますね。
稲葉 : 1年がすごい早かったですね。この前もふくろうずと対バンしたりとか、いままでファンとして聴いてたアーティストと共演する機会が時々あって。アナログフィッシュと2マンしたとき(2015年5月)はまだ「ほんとに一緒にやるんだっ!!」みたいな(笑)、そういう気持ちがすごいありました。いまは別に自分が偉くなったとかじゃないんですけど「同じ人間なんだな」って思えるようになった(笑)。
橋本 : 恐縮するだけじゃなくてね。リリースしてから、地方とか行くとちゃんとお客さんがいて。届いてるんだなって実感しましたね。それにつれて自然とライヴでの見せ方もコミュニケーションするじゃないですけど、“外を向く”っていう意識が強くなりました。そこが変われたところかなと。
稲葉 : 僕はわりとライヴで変なことをすることが多いので、そういうのを見てニヤニヤしてるお客さんを見ると自分も調子に乗っちゃいますね。そういう反応が返ってくると、もっとやってやろうって感じになってきます。
アベ : いままでライヴ中に後ろから、メンバーの自信なさげな姿とかが結構見えたんですよ。でもメンバーの佇まいが変わってきてるなって、ライヴをやってるときに感じることが増えてきて。それで相乗効果というか自分も自信を持てたり、バンド全体としていい方向を向いてるなと思います。
4曲はそれぞれの曲の雰囲気もバラバラですし、歌ってる方向性も真逆なんで、一緒に入れたらおもしろいかなって
──ファンも増えてきて、バンドとしていまとても良い状態なんですね。状況も変化していきますが、橋本くんが作詞/作曲する上で何か変わってきたことはありますか?
橋本 : 前回、会場限定シングルとして作ったのが、今回の作品の2曲目「TVHBD」と最後の「メリールウ」って曲なんです。その前のミニ・アルバムのとき(『olutta』)は自然と出てくるものを収録したって感じだったんですね。でもそこからモードが切り替わった。今回は「こういうものを作ってみよう」っていうアイデアが先にあって、そこに近づけていくっていう方法だったんです。なので、曲の作り方が根本的に違ったかもしれない。
──なるほど。その2曲はどんなイメージが頭のなかにあったんでしょう。
橋本 : 「TVHBD」はちょっとオウガ(OGRE YOU ASSHOLE)っぽい曲を作りたいなと思っていて。でもできてみたら全然違ったっていう(笑)。オウガっぽいフレーズ感とかを出そうとしたらいつの間にかこんな下世話な感じに。でもイメージしたものに到達するより、全然違う方向にいったほうがおもしろいなって気付きましたね。「メリールウ」はちょうどそのころ、あんまりバンドにパンキッシュなものが持ち込めてなくて。僕は元々パンクとかが好きだったんで、そういう曲をやりたい欲が溜まってて。だから「1曲くらいいいよね?」って気持ちで攻撃的な曲を持ってきました。2曲とも音のイメージからアプローチをしていきました。
──逆に言えば、パンクっぽい曲はあんまり作らないようにしようっていう意識があった?
橋本 : 大学時代にいろいろコピバンとかをやっていくなかで、自分は何ができて何ができないとかはなんとなく分かっていて。そんなに声質もパンク向きじゃないなってずっと思ってたんで、封印してた部分は結構ありました。でもやっぱりちょっとやってみたいなと思って実験的に曲を持っていったんです。
──今回の「友達にもどろう」は4曲入りシングルです。会場限定盤にも収録された2曲と比べると、ほかの2曲はミディアム・テンポだったりと、かなり雰囲気が違いますよね。
橋本 : この4曲を入れたのはそれぞれの曲の雰囲気もバラバラですし、歌ってる方向性も真逆なんで、一緒に入れたらおもしろいかなってセレクトしました。どっちかっていうと前回の会場限定シングルは音楽的な部分でやってみたいことをやってみたって感じで、今回新しく入る2曲は内面的な曲ですね。
──内面的な曲というと、「しゃれこうべ しゃれこうべ」「ぢきぢき」はどんな曲ですか?
橋本 : 「しゃれこうべ」はなんとなく曲を作るかっていうときにギターを爪弾いてたら、最初のAメロの一節がメロディと一緒に出てきて。そういうキャッチーなメロディにエグい言葉が入る違和感がおもしろいと思って、そこから広げていきました。「ぢきぢき」は新しい恋を踏み出すかどうかみたいな気持ちを春の空気にのせた爽やかな曲です。
稲葉 : どうしたんですか、急に(笑)。
──この2曲は恋愛について歌ったものなんだ。
橋本 : でもまぁ全体を通して僕なりに愛を歌ってます、実は。基本的に人と人は分かりあおうとはしますけど、分かりあえないじゃないですか。そういう部分で嘆いたり悩んだりすると思うんですけど、でも実際は男女であろうと、根本的に考えてることはそんなに変わらないなっていう着想が芯にありますね。愛情表現とかも人それぞれ歪んでたりとかあると思うんですけど、でも愛は愛だなとか。今作は基本的にはラヴソングだと僕は思ってます。「TVHBD」は完全なお遊びな曲なんでまた別ですけど。これはエロサイトの動画が消されたときの悲しみを歌ってるだけなんで(笑)。
──でもこれも愛についての歌って言われたら、そうかなって思いますよね(笑)。
橋本 : 一節だけ取ってみれば「失って初めて気づく悲しみ」みたいな。そういうふうに意味が取れるようには作ってはいます(笑)。
バンドにとって大きな転換期になったのは「TVHBD」かもしれない
──アベくんから見て、最近の橋本くんの曲について何か思うことはありますか?
アベ : 「TVHBD」みたいにここまで明確にふざけてきたのは初めてでしたね。以前は薫の曲は歌がいいからそこまでアレンジにこだわらなくてもって、ちょっと逃げてる部分もあったんです。もちろん歌を活かすためにシンプルにっていう気持ちからなんですけど。でもそれが「TVHBD」ができたくらいから、自分のフレーズの作り方とか考え方が少し変わって来たような気がします。
──たしかに「TVHBD」は演奏面でも振り切った曲ですよね。全体的に遊び心があるし。
橋本 : そうですね。音でも遊べるように考えてますね。それにいままでは自分の感情に引っかかる言葉がない曲はあんまり歌いたくなくて。ちょっと罪悪感みたいなのがあったというか。でもそればっかりだと疲れちゃうなって気がついて。そういう直接的な感情とは切り離したものも作りたいなって思えるようになったのは、この曲がきっかけですね。今回のシングルのなかで個人的に推したいのは「しゃれこうべ」なんですけど、でもバンドにとって大きな転換期になったのは「TVHBD」かもしれないですね。
──演奏面でも歌詞でも違う方向を向く契機になったと。稲葉くんは橋本くんの曲を受けて、ベーシストとして何か変化してきた部分はありますか?
稲葉 : 僕はわりと自分の気分でベース・ラインを考えちゃってて。「ぢきぢき」とかは優しい曲、ヨ・ラ・テンゴとかをたまたま聴いてたから、そういう感じにしようって思ったり(笑)。だから僕は歌詞がどうとかはあんまり意識してないんですね。「しゃれこうべ」はメロディが歌謡曲っぽいってから、あえてベースを歪ませてみたらおもしろいかなと。それくらいかな。
橋本 : 曲を受け取って、ベーシストとして何か変わったかって質問だよ?
稲葉 : あ、何か変わったのか? 自分の演奏自体は多分あんまり…(笑)。
橋本 : 俺のことはガン無視なんだ(笑)。響かなかったかー(笑)。
──橋本くんの新しい曲を聴いてアベくんはプレイにも変化が出てきたって話だったけど、稲葉くんはこれからも自分の感情に任せてベースを弾くってことですよね?
稲葉 : そうですね、そのときの感情とか心情で曲をアレンジしようかなと。
橋本 : もう少し考えたほうがいいんじゃない(笑)?
かっこいいと思うものを提示しながら、いろんな人を巻き込んで上にあがれたら、ロマンがあるなぁと
──あはは(笑)。ちょっと違う話をしますが、例えばD.A.N.とかnever young beachだったり、いまみなさんと同世代くらいのバンドがひとつのシーンとして盛り上がっていますよね。そこをみなさんはどのように見てますか?
橋本 : やっぱりすごい意識はしますね。僕らは音楽的にもどこかに属したりってしないほうだし、いろんな界隈に顔を出してライヴをやっていて。例えばシティ・ポップっていう言葉だったりで括られちゃうのは可哀想だなって思う一方、ちょっと羨ましいなって気持ちもあったりして。
──今回のシングルの音楽性の幅が広いように、ヘルシンキってもっとパンク寄りのシーンだとか、そうじゃなくてオルタナ路線、歌ものロック・シーンにも属せるじゃないですか。だからおもしろいバンドだと思うんですよね。
橋本 : 単純に自分の好きなものが結構いろいろ散らばってるんで、音楽的にも欲張っちゃうってのもありますね。でもその欲張っていろんなところをかじってやっていくのか、もうちょっと焦点絞ってやったほうがいいのかって迷ったりもします。悪く言えば中途半端に見えたりもするので。でも仮にシーンっていうものに属さないでいくとしても、自分たちがちゃんとかっこいいと思うものを提示しながら、いろんな人を巻き込んで上にあがれたら、それはすごいロマンがあるなぁと思います。
──その迷いっていうのも、逆に言えば売れたいっていう気持ちが強くなったってことですよね。
アベ : 最近は実際にいろんな人に受け入れられてるなっていうのを肌で感じる機会が増えてきて。もうちょっと自分たちがもっと大きいとこでライヴをしたり、もっと憧れてる人たちとたくさん共演できたりっていうイメージが少しずつ湧くようになってきたんです。そういうものが見えてきたんで欲も出てきたというか。言葉にすると「もっと売れたい」ってなっちゃうんですけど、そういう気持ちは強くなってきたかもしれないです。
橋本 : そこへの意識はあがりましたね。ただ結果のひとつとして売れたいってことになるんですかね。正しさを証明するじゃないですけど、単純に自分たちのやってきたことが間違ってなかったことを確認したいというか。でもいまはバーンと大衆に向けてプロモーションをするっていうよりかは、もうちょっと身近な人を大切にしていきたいなと思っていて。例えば何か企画をするときはファンの人にプレゼントを用意するとかもそうですし、狭い範囲でのやりとりを増やしていきたいですね。
──なるほど。会場限定盤もそういう意志の表れだったんだ。では最後に今後の展望について何かあれば教えてください。
橋本 : 直近だと6月のワンマンがあるので、それはひとつの節目として成功させたいですね。楽曲に関しては、さっきも言ったように自然と出てくるものと、こういうものを作りたいって意識的に作るもの。2つの方向からのアプローチができるようになったので、次のアルバムはこの4曲よりもさらに幅が広いものになるかなと思ってます。
──わかりました。次の作品も楽しみにしています!
過去作
フィンランド語で「ビール」の意味を表す"olutta"を冠したはHelsinki Lambda Club、1stアルバムは突き抜けるようなメロディが光り、疾走感溢れるポップな作品に。楽曲にクラッシュやペイブメントから引用したタイトルをつけたり、サウンド面においてもさまざまな音楽の影響を感じさせながら、それでいて完全に彼ら自身の新たなポップ・ソングとして昇華している。
【特集】
>>1stアルバム『olutta』特集インタヴュー
>>初ワンマンライヴ音源期間限定配信&インタヴュー
LIVE INFORMATION
TOKYO FM「ジャパネクレディオライブ powered by EMTG MUSIC」
2016年6月10日(金)@渋谷CLUB QUATTRO
共演 : そこに鳴る / パノラマパナマタウン / LACCO TOWER
GFB`16(つくばロックフェス)前夜祭
2016年6月12日(日)@水戸SONIC
共演 : ナードマグネット / The Floor / GRASAM ANIMAL / club'89
DJ : 伊香賀守(RDR / つくばロック)
1stマキシ・シングル『友達にもどろう』発売記念ワンマンライヴ〈We Can Work It Out!!〉
2016年6月26日(日)@渋谷CHELSEA HOTEL
見放題 2016
2016年7月2日(土)@大阪ミナミエリア
Czecho No Republic presents ドリームシャワー 2016
2016年7月3日(日)@新木場STUDIO COAST
共演 : Czecho No Republic / sumika / パスピエ / Yogee New Waves / lovefilm / and more…
odol×PELICAN FANCLUB×Helsinki Lambda Clubスペシャル・インストア・ミニライヴ
2016年7月3日(日)@タワーレコード渋谷店B1F CUTUP STUDIO
共演 : odol / PELICAN FANCLUB
ATMC2016~Tanabata Session~
2016年7月7日(木)梅田Shangri-La
共演 : Creepy Nuts / フレンズ / and more…
SUMMERズボップくん2016
2016年7月18日(月)@大阪名村造船所跡地
共演 : 愛はズボーン / プププランド / THE BOSSS / and more…
PROFILE
Helsinki Lambda Club
2013年夏、西千葉のガザルでバンド結成。PAVEMENTとCLASHが恋人同士になってしまったような、ポップなのにどこかひねくれたメロディと、ひねくれているようで割と純粋な心情を綴った歌詞を特徴とする。
2014年上旬から数々のオーディションに入賞し、UK.PROJECT主催のオーディションにて、応募総数約1000組の中から見事最優秀アーティストに選出され、同年12月10日にUK.PROJECTから2曲入り8cmシングルをリリース。2015年3月18日にファースト・ミニ・アルバム『olutta』をリリースし、FX2015、VIVA LA ROCK2015、MUSIC CITY TENJIN2015への出演を果たす。同年12月18日にはシングル『TVHBD/メリールウ』をライブ会場と通販のみ限定500枚でリリースしたが、3ヶ月ですべて完売。2016年6月8日にファースト・マキシシングル『友達にもどろう』をリリース。
2016年も注目されたい願望は高まるばかりだが、世間の飽きやすさも承知しているので、飽きられないよう色々と画策中。
>>Helsinki Lambda Club Official HP