人気シリーズ『うたわれるもの』のクライマックスを彩った、歌姫Suaraの歌集がDSD配信
『ToHeart』や『WHITE ALBUM』シリーズなどを世に送り出してきたゲーム制作会社アクアプラスが、20周年記念タイトルとして2015年9月に発売したタイトル『うたわれるもの 偽りの仮面』、つづけて10月より放送された同タイトルのTVアニメ。そして今年2016年に発売されたシリーズ最終章となる『うたわれるもの 二人の白皇』。今回、その3作品で使用された楽曲の中から、シリーズ初期からその歌声で世界観に色を添えてきたSuaraの楽曲のみを集めたヴォーカル集が発売された。
配信は2.8MHz DSDと24bit/96kHz PCMの2形態にてリリース。初のDSD配信となる「ユメカウツツカ」や「星降る空仰ぎ見て」「星灯」から、"2016"を名に冠してリアレンジされた「キミガタメ 2016」などの人気曲、そして初の音源化となる「麗しき世界」など全11曲を収録している。
物語の世界観にあわせ、どのように楽曲は制作されたのか。ディレクター、有村健一に話を聞いた。
Suara / うたわれるもの 偽りの仮面 & 二人の白皇 歌集
【Track List】
01. ヌエドリ
02. 恋夢
03. 不安定な神様
04. ユメカウツツカ
05. 天かける星
06. 星降る空仰ぎ見て
07. 星灯
08. キミガタメ 2016
09. 永久に 2016
10. 麗しき世界
11. 夢想歌 2016
【配信形態 / 価格】
[左]2.8MHz DSD
[右] 24bit/96kHz ALAC / FLAC / WAV / AAC
単曲 324円(税込) / アルバム 3,000円(税込)
アルバム購入特典として歌詞ブックレット(テキストのみ)のPDFが付属します
INTERVIEW : 有村健一
『うたわれるもの 偽りの仮面』『うたわれるもの 二人の白皇』という2つの作品が続くうえで、どういうコンセプトで制作されたのかを教えてください。
最初の楽曲作りのコンセプトはプロデューサーやゲーム・スタッフにしか分からないので、私の立場としては音楽制作に関してお答えさせていただきます。
楽曲制作の流れとしてはまず『うたわれるもの 偽りの仮面』のゲームのOPテーマ「ヌエドリ」の制作から始まりました。アクアプラスのゲーム/アニメ作品のOPテーマになる曲のほとんどは、作品が世に出る半年から1年くらい前には楽曲をほぼ完成させます。今回も1年以上前にベーシックなサウンドはほぼ出来あがっていました。さらに進行していく中で、プロデューサーのアイデアで「ヌエドリ」をはじめとするほとんどの歌曲のストリングス録音、ミックスダウン、マスタリングを海外の一流の方に依頼するというコンセプトが決まっていったんです。特にプロデューサーは映画への傾倒も大きく、今回は映画音楽に関わる一流スタッフにお願いする運びとなりました。
エンターテイメント作品としての最高のサウンドを求めていきたいというコンセプトが柱にあったかと思います。もちろん予算に限りはありますが。
海外での制作がどのような感じだったか、もう少し詳しく教えていただけますか。
先ず、ストリングス録音はロンドンの「アビー・ロード・スタジオ」で行われました。「アビー・ロード・スタジオ」はビートルズで有名ですが、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズや『ハリー・ポッター』シリーズなどの映画のサウンドトラックの数々も収録されているんです。 レコーディング・エンジニアには「アビー・ロード・スタジオ」の上級職に就いている、サイモン・ローズさんをブッキングしました。サイモンさんは『ロード・オブ・ザ・リング/旅の仲間』、同じく『ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔』、『ハリー・ポッターと賢者の石』など数々のサウンドトラックを手掛けている方です。もちろんストリングス・メンバーもサウンドトラック収録に長けたメンバーが集結しています。ストリングスはまさに映画音楽の要とも言え、今回のプロジェクトの重要な部分を占めていると思います。
このストリングス録音を前後してSuaraの歌の録音やギターなどの生楽器の録音を国内で行い、全ての録音を終え、ミックスダウンへと入りました。
ミックス・エンジニアは『アナと雪の女王』サウンドトラックのミックスも担当した、デヴィッド・バウチャーさんに依頼。デヴィッドさんは『モンスターズ・ユニバーシティ』『プリンセスと魔法のキス』といったディズニー作品のサントラをいくつも担当してきている方です。大変多忙な方ですので、事前にご自宅の作業場でミックスダウンの下準備を行い、最終的にデヴィッドさんが指定したハリウッドの「イーストウェストスタジオ」“スタジオ2”で最終作業を行うというかなりタイトなスケジュールで行われました。
“スタジオ2”は モンキーズ、ビーチ・ボーイズ、ローリング・ストーンズ、レッド・ホット・チリ・ペッパーズなどの名だたるバンドが使用してきたスタジオです。そのスタジオのサウンドを活かして打ち込みのドラムをリアンプしたり、ヴォーカルのリバーブもスタジオのエコールームを活用したりと、“スタジオ2”を使う事によって最終的にデヴィッド・バウチャーさんが求めるタイトなサウンドに仕上がっていると思います。
そして最後の行程、マスタリングですね。
マスタリングはポートランドにある「ゲートウェイ・マスタリング・スタジオ」で行われました。担当したマスタリングエンジニアは世界屈指の腕を持つボブ・ラドウィックさんです。この方は多くの日本のアーティストの方もマスタリングを依頼していたりして、有名ですね。私も昔からファンでした。数々のロック系の作品を手掛けてきた方ですが、最近はデヴィッド・バウチャーさんがミックスした『アナと雪の女王』のマスタリングも担当していて、映画音楽やハイレゾサウンドにも精通しているという事で必然的にお願いすることが決定しました。
現場ではかなり企業秘密的な感じで作業が進められていたようですが、出来あがったサウンドを聴いていると、確かにどう音作りしているか分からないほどの素晴らしい仕上がりになっていますね。
私も「不安定な神様」と「天かける星」のシングルのカップリングのプリ・マスタリングを行った際、ボブ・ラドウィックさんがプリ・マスタリングした「不安定な神様」と「天かける星」などのサウンドに合わせるように作業を行いました。今までと違ったアプローチを取らないと近いサウンドにならなかった事が、個人的には今回とても勉強になりましたね。
長くなりましたが、海外でのプロジェクトは以上のようなプロセスで行われました。
今回、歌集に収録されるにあたってタイトルのおわりに「2016」と付いている「キミガタメ 2016」「永久に 2016」「夢想歌 2016」の3曲がありますが、どのようにリアレンジしたのかを教えてください。
基本的に3曲ともゲーム中に使われる事が前提ですので、使われるシーンに対するプロデューサーの映像イメージがある中で、リアレンジの指定がありました。
「キミガタメ 2016」は先ほども言いました海外プロジェクトの中で進められた曲で、早い段階から使用される事は決まっていました。オリジナルの「キミガタメ」は10年も前の楽曲になり、ストリングなどは打ち込みですね。「キミガタメ」は「うたわれるもの」を代表するとても重要な曲ですし、壮大なバラードですので、リアレンジするにあたって、必然と生のストリングスを入れたくなります。なので「キミガタメ 2016」はオリジナルのイメージは壊さずに、ストリングスを活かすアレンジになっているかと思います。
「永久に 2016」はPCゲーム『うたわれるもの』EDテーマのリアレンジ・バージョンになります。2006年にはSuara自身がセカンド・アルバム「夢路」でカヴァーしています。「永久に 2016」もほぼオリジナルのアレンジになっていますが、最近の『うたわれるもの』作品のBGMのサウンドに沿った音作りに変更し、間奏はゲームでの使用をふまえた劇的なアレンジになっています。
「夢想歌 2016」はオリジナルとはかなり雰囲気が違っていますね。牧歌的な雰囲気を出すためにアコースティックなサウンド・アレンジになっています。
さらに「永久に 2016」「夢想歌 2016」に関して、海外プロジェクトとのミックス / マスタリングの違いがあれば教えてください。
「永久に 2016」「夢想歌 2016」のミックス/マスタリングは、Suaraも歌で参加している『Pure』シリーズでお世話になっているスタジオ・サウンド・ダリの橋本まさしさんにお願いしました。橋本さんは今回の海外プロジェクトのコーディネートも担当しており、ミックス/マスタリングの現場にも同行されました。
この2曲は前述の海外プロジェクトで仕上がったサウンドに近づける事が前提でしたので、橋本さんしかいないという感じでしたね。橋本さんはデヴィッド・バウチャーさんの作業データを分析したり、ボブ・ラドウィックさんのところで盗み見(笑)してきた記憶を元に音作りをしたりと、自身でも新しい発見があったとすごく楽しんでやっていただきました。
そういった意味で、違いがあるとしたら、聴いていただいた方が分析していただくのが良いかと思います。
Suaraさんが「うたわれるもの」シリーズの主題歌を担当してからちょうど10周年になりましたが、歌声の変化などが感じられる部分があったら教えてください。
10年前の「夢想歌」「キミガタメ」を歌っているころと、今とでは声量の変化は特にありません。ただ、音程が低い所の低域の出し方や、高い所の押さえ方など、テクニックが付いた事でベストな声量で歌うことが出来るようになったと思います。それが出来ることによって、歌唱の幅が広がっていると思います。「歌集」はまさにその集大成とも言える作品になったと思います。
12月19日に「うたわれるもの」シリーズの楽曲のみで構成するライヴ『うたわれるもの SUPER LIVE 2016』の開催を控えていますが、どのような編成で行われるかなど、もし可能でしたら教えてください。
編成は今年行われましたSuaraのワンマンライヴ「声を聴かせて」の時と同じ編成(ドラム、ベース、ギター、キーボード、ヴァイオリン)に加え、和太鼓を入れたいと考えています。昨年行われました「大アクアプラス祭」でも和太鼓を6人編成で入れ大好評でした。今回はスペースの関係上、1人でセットを組んで演奏していただこうと考えています。やはり和太鼓が入る事によって、一気に“うたわれ”感が強くなる感じがしますね。
ヴォーカルはSuaraの他に声優の柚木涼香さん、小山剛志さんのおふたりをお招きして、出来れば『うたわれるもの』に関連する全ての歌曲を披露したいと考えています。チケットはすでに売り切れてしまったのですが、来られる方は是非楽しみにしていてください。
LIVE INFORMATION
『うたわれるもの 偽りの仮面 & 二人の白皇 歌集』発売記念インストアイベント
参加方法など詳しい情報は各店舗へお問い合わせください。
・名古屋
2016年11月12日(土)@とらのあな名古屋店
OPEN 13:00 / START 13:30
イベント内容 : Suaraミニ・ライヴ&イベント参加特典お渡し会
参加方法などの詳細 : とらのあな名古屋店まで
・東京・秋葉原
2016年11月13日(日)@とらのあな秋葉原C
OPEN 13:00 / START 13:30
※受付終了
・東京・池袋
2016年11月20日(日)@アニメイト池袋本店
OPEN 15:30 / START 16:00
イベント内容: Suaraミニ・ライヴ&イベント参加特典お渡し会
参加方法などの詳細 : アニメイト池袋本店まで
・大阪・日本橋
2016年11月26日(土)@アニメイト大阪日本橋
OPEN 13:00 / START 13:30
イベント内容 : Suaraミニ・ライヴ&イベント参加特典お渡し会
参加方法などの詳細 : アニメイト大阪日本橋まで
うたわれるもの SUPER LIVE 2016
2016年12月19日(月)@CLUB CITTA’ KAWASAKI
出演 : Suara
ゲスト : 小山剛志 / 柚木涼香
Suara ASIA TOUR 2017~声を聴かせて~
・台湾公演
2017年2月18日(土)@花漾HANA展演空間
OPEN 15:00 / START 16:00
・香港公演
2017年2月19日(日)@九龍湾国際展貿中心G/F Music Zone@E-Max
OPEN 19:00 / START 19:30
過去配信作
PROFILE
Suara
大阪外国語大学でインドネシア語を専攻。学生時代からバンドやユニットを結成し、ライヴ活動を行う。2005年9月にゲーム主題歌「睡蓮-あまねく花-」「星座」でデビュー。TVアニメ「ToHeart2」のエンディング・テーマ「トモシビ」、同じくTVアニメ「うたわれるもの」のオープニング・テーマ「夢想歌」を歌うなど、その歌声がアニメ・ゲームファンをはじめとする広い層に届き、注目を集める。
2007年の「Animelo Summer Live」では初出演とは思えぬすばらしいパフォーマンスで話題となる。それ以降も、TVアニメ「あさっての方向。」「BLUE DROP」「キミキス pure rouge」「ティアーズ・トゥ・ティアラ」「WHITE ALBUM」「カードファイト!!ヴァンガード」「フューチャーカード!!バディファイト」「うたわれるもの 偽りの仮面」などの主題歌を担当。アニメからゲームまでその活躍の場は多岐に渡る。
2010年から香港・韓国・シンガポールなどでライヴを行い、2011年10月には韓国でアルバム「花凛」を、2016年には台湾でアルバム「聲」を発売するなど、ワールドワイドな広がりをみせている。
“Suara”(スアラ)とはインドネシア語で “声” を意味する。