斎井直史のヒップホップ連載「パンチライン・オブ・ザ・マンス」 第13回──未知なる魅力を持つシンガー・MALIYA
今月もやってまいりました、ヒップホップ・ライター・斎井直史による定期連載「パンチライン・オブ・ザ・マンス」です! 連載1周年を迎えた前回はジ・インターネットのヴォーカリストであるシドにフックアップされたLAのシンガー・Maliaを特集しました。そして今月は...テン年代シーンを活性化させている話題の、〈TEN'S TOKYO〉より1stアルバム『ego』をリリースしたばかりのシンガー、MALIYA(字が違います!)のインタヴューを掲載。そうです! このコーナー始まって以来初のインタヴュー記事! 今作はOTOTOYでも配信あり、しかもハイレゾ版はここだけいうことで、気になった方はぜひ音源もチェックしてみてください!
注目シンガーの1stアルバム。ハイレゾはOTOTOYのみ!
MALIYA / ego
【配信形態】
ALAC、FLAC、WAV(24bit/48kHz) / AAC
【配信価格】
単曲 300円(税込) / アルバム 3,000円(税込)
【収録曲】
1. Hard Liquor
2. Talkin' About You
3. Skin
4. Skit -Back To The 00s-
5. Wisp Of Smoke
6. エコーロケーション
7. Breakfast In Bed feat.Ryohu
8. Dance To My Song
9. As You Love Your Lover
10. Numb Hands
11. Beating
Maliya/egoMaliya/ego
INTERVIEW : MALIYA
今月はこのコーナー初のインタヴュー記事です。紹介するのは7日に初のアルバム『ego』をリリースしたシンガーのMALIYA。
テン年代シーンを活性化させている話題の、〈TEN'S TOKYO〉からのデヴューです。振り返れば2013年のLowPass「Nightfly」にて、艶かしくリズミカルなコーラスを入れてる彼女を筆者はずっとマークしていました。2014年にYouTubeに公開した宇多田ヒカル「In My Room」と椎名林檎の「丸の内サディスティック」のカヴァーが静かに注目を集めたのですが、この2曲をたかがカヴァーと侮る事なかれ。巨大すぎるこの二大シンガーの色をいい意味で消している素晴らしいカヴァーでした。どこか切なさを持った彼女のメロディー・センスはテン年代的と称されますが、そのメロディーも彼女のどこか孤独さを纏った声があっての事。タイムレスなR&Bサウンドを聴かせてくれたEP『Addicted』から一転、その前作では見せなかったスモーキーなバンド・サウンドや、Ryohu(KANDY TOWN)とSTUTSによるアップ・テンポな「Breakfast In Bed」など様々なタイプの楽曲を収録しています。それでは、今はまだ謎多き彼女のインタヴューをどうぞ!
25歳以降から色々な曲や経験を経て、音楽観が変わった
──LowPass「Nightfly」(2013年リリースの『Mirrorz』収録)でのコーラスを聴いてから、ずっと アルバムを楽しみにしてました。まずは、シンガーになろうとおもったキッカケから聞いてもいいですか?
覚えてないくらいの時期なんですけど、やっぱり親が音楽をよく聴いていた事が大きいですね。そして、宇多田ヒカルの存在。日本には新しい音だったから「私もコレやりたい!」ってなって(笑)。それから曲を自分で書いたり詩とかも書き溜めてて。
レーベル P-VINE RECORDS 発売日 2013/05/01
01. 02. 03. 04. 05. 06. 07. 08. 09. 10. 11. 12. 13. 14.
※ 曲番をクリックすると試聴できます。
ーそれはいくつの頃なんですか?
小学3年くらいじゃないですかね。テープをカシャって押して録音するやつ、あるじゃないですか(笑)。あれに自分で作ったメロディーを録音したりして遊んでました。
──じゃあ、最初は楽器も弾いたりとかして?
最初は家にあったギターを触ったりしていたけど、そこまでハマらなかったですね。しっかり弾き始めたのは音楽の専門学校に入った時。やっぱり曲作るには弾けたほうがいいかな、とピアノやギターを練習しはじめましたね。
──もしかして、ライブで先生と呼んでいたKitajimaさんという方はその頃の先生?
いえ、北島さんはもっと後で出会いましたね。バンドでやりたいなっておもった時に、むこうから声をかけてくれて、今も一緒にやってるっていう感じです。
──バンドでやる前は、どのように活動を?
今回も「Wisp Of Smoke」と「Beating」の2曲を作ってくれているYoshi Kodateと一緒に製作をしたりしてました。彼は同い年のトラックメイカーでバークリー音楽大学に短期留学していた時に出会って。彼は今もアメリカにいるので私が日本に戻ってからもSkypeとかでやりとりをして製作しているんですが、YouTubeやSoundcloudで公開してる「丸の内サディスティック」と「In My Room」の カバーもトラックは彼がやってくれています。
──じゃあ、その当時は彼がつくったバック・トラックに乗せて歌っていたと思うけど、主にどんな場所で活動してました?
知り合いにラッパーが居て。
──流石、相模だねぇ〜。
そうなんですよ〜。ラッパーさんとの繋がりが多いから、1曲だけでも、とお願いして無理やりインストに入れて貰いました。そのタイミングで色々な繋がりが増えてきましたね。
──ちなみに、前にEP『ADDICTED』を出してるじゃない? その時から、前作とは少し雰囲気の違う今作のイメージはできていたのですか?
あのEPは二十歳から二十代半ばに書いたやつなので、それを出してからじゃないと次に行けない気がしてましたね。
──では、フル・アルバムをいよいよ製作するキッカケってありました?
結構…リセットしたかったんですよ。前作は全部打ち込みだったけど、今作はバンド・サウンドが半分以上。次の私はコレっていう、違う感じにしたかったかな。確かEPの時は、ほとんど今作の曲は出来てなかったですね。でも、25歳以降くらいから色々な曲を聴いて、色々な経験もして、ちょっと音楽観が変わったから、それを踏まえつつ新しいものを作りたいなと思った。例えばバンド・サウンドを入れたいなって思った事とか。
呂布君とSTUTSさんが入ってくれた曲は私一人だったら書かない曲
──最近はバンドを取り入れるアーティスト多いじゃない? シティ・ポップな流れで爽やかなサウンドが目立っているけど、「Hard Liquor」など最初からその真逆だよね。スモーキーで地下室なイメージ。最近とは違うサウンドは何に影響されたものだと思いますか?
多分、アレサ・フランクリンやニーナ・シモンを掘り出した時期があったからなんですよ。私は若い頃、そうゆうのを掘らなかったから。あと、エイミー・ワインハウスとかも好きだったし、ジャジーでブルージーな曲を作りたいとは思ってた。
──インタールードとなる「Skit - Back To The 00's -」で、その雰囲気も少し切り替わりますよね。これは意図的に?
この「Skit - Back To The 00's -」と「Wisp of Smoke」の流れは私の中でセットなんです。「Skit - Back To The 00's -」は(前EPタイトルトラックの)「Addicted」を逆再生してつくったもので、「Wisp〜」は私が10代の頃に作った曲を歌詞とテーマ、タイトルはそのままに作り直したんですよ。だから、「Skit - Back To The 00's -」は「Addicted」より昔へ時間を巻き戻していくような部分なんですよね。自分の中で、ですけどね。ただ、アルバムとしては基本的にコンセプトやストーリーは作らず、収録するかも決めずに作りたい曲を作りました。
──アルバムにはコンセプトが無いっていうことだったけど、自分としてはスレてる部分を出してきたようにおもったんだけど…。
それは元々、そうゆう性格かも…(笑)。 一度、曲を書けなくなっちゃったんですよね。今は情報が多すぎるから色々なものに影響をされすぎちゃったのだと思う。だから、そういったものを一回断ち切ったら、すごくスラスラ書けるようになった。そうゆうのもあって、自分がかなり入ってますね。
──ちなみにクレジット欄にはArrangedとなっている曲が多いですが、原曲は自分で作られてるんですか。
そうです。そんなに楽器を多く弾けるわけじゃないからデモを作って、それを北島さんにバンド・アレンジへと編曲してもらってますね。
──このアルバムの中で個人的に一番自分としても気に入ってる部分は?
「Wisp of Smoke」ですね。Yoshiは海外だから一緒にスタジオに入れないので、なんとなくイメージを伝えたらどうに返してくれるかは彼次第。その点、この曲は返ってきた時にめちゃめちゃイメージにハマった感じがありましたね。あと、呂布君(Kandy Town)とSTUTSさんが入ってくれた「Breakfast In Bed」は私一人だったら書かない、明るいタイプの曲になりましたね。客演あってこそだなって思いますし、嬉しかったです。
──呂布君のラップも2000年半ばのラップがブームだった頃を思い起こさせる感じだったよね。
実はちょっとそれは意識しましたね。お互い2人で、こうゆうのが良いよねって挙げてた曲がちょうど2000年代のでしたから、それを感じ取ってくれて嬉しいです。(笑)
──ちなみに、バンド・サウンドを多く意識して取り入れた今作を終えてみて、次はどんな感じの音楽をイメージしていますか?
今作は「Hard Liquor」とかもそうだけど歌い上げる曲が多かったので、今度はローな感じで抑えて、リズムのハメ方を楽しめる曲がいいかな。ラップとまではいかないけど。
──Lowpassの「Nightfly」なんてすごいそのバランスが良かったですよね。
うれしいですねぇ〜。そうゆうのがやりたいなぁ。難しいけどトラックも楽しめるやつを作りたいですね。
──最後に、あの曲もナイスな組み合わせの曲でしたけど、今後どんな人と一緒に曲を作りたいですか?
そうだなぁ…。正反対で、女の人で、今頭に浮かんでいる人がいるんですけどお名前は…(笑)。今シーンで頑張ってる人と、女同士でしか作れない曲っていうのは今まで作ったことないからやりたいです。
MALIYA PROFILE
幼少の頃から様々なジャンルの音楽を聴いて育つ。
物心ついたときから詩を書き始め、20歳の夏、ボストンにあるバークリー音楽大学のサマープログラムに参加。
その後、都内などでLIVE活動を始め、話題のコンピレーション「2 HORNS CITY #2」(Pitch Odd Mansion&MS Entertainment)への参加やYouTubeに載せたカバー動画の再生回数が35万回を越えるなど徐々に頭角を現す。
2016年8月10日より、自身初となるEP”ADDICTED"を全国リリース。
2018年2月7日には満を辞して1st Album"ego"をリリース。
MALIYA HP : http://maliya.jp/
MALIYA Twitter : https://twitter.com/_maliya_
RECOMMEND
Ryohu / Blur
アルバムに参加している、KANDYTOWN、Aun beatzのメンバー・Ryohuの初全国流通作。ampelの河原太朗が共同プロデューサーとなり、生楽器を用いた豊かなサウンドが光る1枚。
STUTS×SIKK-O×鈴木真海子 / ALLSEASON EP.
アルバムに参加しているトラックメーカー / MPC PlayerのSTUTSと、TOKYO HEALTH CLUBのSIKK-O、chelmicoの鈴木真海子による夏と冬をテーマにした2曲入りEP。ロスレス音質で聴けるのはOTOTOYのみ。
「パンチライン・オブ・ザ・マンス」バック・ナンバー
第12回 LAの注目シンガー・Malia
https://ototoy.jp/feature/2018011002/
第11回 斎井直史的2017年度総括
https://ototoy.jp/feature/2017121201/
第10回 KOJOE 『here』
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第9回 PUNPEE 『MODERN TIMES』
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第8回 GRADIS NICE & YOUNG MAS 『L.O.C -Talkin About Money- 』
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第7回 夏の妄想を、湿気で腐らせない2枚と夏休みの課題図書
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第6回 気持ちのいい夏の始まりのイメトレに適した3枚
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第5回 JP THE WAVYとGoldlink
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第4回 SOCKS 「KUTABARE feat.般若」
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第3回 Febb's 7 Remarkable Punchlines
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第2回 JJJ『HIKARI』
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第1回 SuchmosとMigos
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連載「INTERSECTION」バック・ナンバー
Vol.6 哀愁あるラップ、東京下町・北千住のムードメーカーpiz?
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Vol.5 千葉県柏市出身の2MCのHIPHOPデュオ、GAMEBOYS
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Vol.3 東京の湿っぽい地下室がよく似合う突然変異、ZOMG
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Vol.1 ガチンコ連載「Intersection」始動!! 第1弾特集アーティストは、MUTA
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