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2024/09/11 18:00

一度葬り、新たに生まれ変わるフリージアン──覚悟と美学が込められたEP『歌葬』

フリージアン

関西発のロック・バンド、フリージアンが昨年発表したファースト・アルバム『FREESIAN』は、それまでのバンドの集大成であり、フリージアンの存在を広く知らしめる痛烈な威力を持った1枚であった。続くリリースとなった今作のEPは、ジャケットには赤い彼岸花が大きく映し出され、そしてタイトルは「歌葬」。“歌を葬る”という、只事ではない題を背負ったこのEPで、フリージアンが追い求めたものとはなにか。「いつか死ぬって生きてる証なんだって」(“一撃の歌”より)という歌詞が象徴するように、いまという一瞬にすべてを懸け、死にものぐるいで突き進むフリージアンへのインタヴューをここにお届けする。

シリアスな死生観をバンドで掻き鳴らすファースト・EP


INTERVIEW : フリージアン


 「最強のジャパニーズソング」を追い求める4人組ロック・バンド、フリージアンが、8曲入りEP『歌葬』をリリースする。昨年リリースした初のフル・アルバム『FREESIAN』はバンドの表現力の幅広さやインパクトが眩しい作品だったが、今作はフロント・マンであるマエダカズシの心情の奥深くにフォーカスした楽曲が揃っている。
 マエダが以前組んでいたバンドで制作したラヴ・ソング“お願いダーリン”や、壮大なバラード“月に咲く”、マエダの人生が走馬灯のように綴られるロックチューン“青瞬”、穏やかな音色と歌声が聴き手を包み込む“海から”など、多彩なアプローチが堪能できる今作はどのような経緯で生まれたのだろうか。メンバー全員に訊く。

取材・文 : 沖さやこ
写真 : きるけ。

やりたいと思えばどんなことでも挑戦できる自由さ

――昨年7月にリリースした初のフル・アルバム『FREESIAN』以降も、ほとんど間が空くことなくデジタル・シングルをコンスタントに発表していましたね。

マエダカズシ(Vo.):フリージアンになってから、リリース後もすぐに次の曲を作っていますね。メンバー間でよく「次はこんな曲作ろうぜ」と話すし、うちは曲作りの方法が何パターンかあるので、4人で作ってる感がすごく大きいんです。それぞれがそこまで大きなプレッシャーを感じないで済んでいるぶん、制作もスムーズなのかなと思います。4人とも、みんなで作ることに向いてるんですよね。

たなりょー(Dr.):とはいえ『FREESIAN』はそれまでの活動の集大成的作品だったぶん、強い曲が集まったアルバムなので、その次に出す曲は大事やなとは思っていて。『FREESIAN』の収録曲に似ていない、インパクトのある曲がいいなという意識は全員持っていました。

――『FREESIAN』の次にリリースされたデジタル・シングルは、今作『歌葬』にも収録されている“お願いダーリン”でした。マエダさんが以前組んでいたバンド、逢マイミーマインズの楽曲だそうですね。

フリージアン「お願いダーリン」Music Video
フリージアン「お願いダーリン」Music Video

たなりょー:この曲は言葉の強さもあるし、僕ら4人が出会ったときの記憶とも密接な関係にあるので、『FREESIAN』の後であり2023年を締めくくるのに相応しいんじゃないかなと思ったんです。

MASASHI(Gt.):『FREESIAN』には“お願いダーリン”みたいなミドル・テンポのシャッフル・ビートがなかったのも大きかったかなと。カズシの原点ではあるけれど、フリージアンには意外な一面が出せた曲になりました。

たなりょー:そういう意味では“お願いダーリン”を選んだ理由はラヴ・ソングなのも大きかったよね。カズシくんはフリージアンになってから意識的にラヴ・ソングを書くのを抑えてたんです。でもカズシくんの持ち味でもあるラヴ・ソングをここで出すことで、周りには新鮮に思ってもらえるやろうなって。

マエダ:“お願いダーリン”は2013年ぐらいに作った曲で、僕の原点やし、人懐っこさもある曲やと思うんです。去年の8月のワンマンでこの曲をフリージアンとして初披露して、漠然とシンプルにいい歌やなあ……と思って。あと、あのときの自分にしか書けへん歌詞やなとも思いました。すごく純粋で、ほんまになんも考えてないやろうなって。それが“お願いダーリン”の魅力やと思うんですよね。でもフリージアンでやるにあたって、ちょっと賢くなったかな(笑)。ボロボロの服やったのが、ちょっとおしゃれに気を遣ってすっきりしたというか。あんまり王道のコード進行ではないよね?

マエダカズシ(Vo.)

隆之介(Ba.):確かにコード進行を考える際は2、3回ひねってみたりはするね。これがベストやと思ったものを1回必ず疑って、いくつかパターンを出して。そのうえでどういうものをつけるかを決めるから、結局元に戻ることもあるし。

MASASHI:“お願いダーリン”も曲そのものの味を殺すわけにもいかないから、そこまで大幅には変えてへんけど。

マエダ:「ちょっと変わった」っていうのがスッキリ感につながってるんやろうね。そのさじ加減が絶妙やから、今まで聴いてきた人もフリージアンの“お願いダーリン”を喜んでくれてるし、僕も歌っててしっくりくるんやと思う。

――フロント・マンの原点を今のバンドでリリースできるのは、とても有意義ではないでしょうか。実際に作品に落とし込むことで、バンドの地盤もさらに固まると思うので。

マエダ:メンバーがこの曲をやりたいと言ってくれて、うれしかったですね。今のバンドで昔のバンドの曲をやるって、自分的にはやりたいけどメンバーとしてはどうなんかな……とは思うから。

たなりょー:僕ら的にはシンプルな気持ちで「いい曲やからやりたい」と思いましたね。“お願いダーリン”に限らず、やりたいと思えばどんなことでも挑戦できるチームなんです。その自由さがあるのは、すごく幸運やなと思います。

たなりょー(Dr.)

この記事の編集者
石川 幸穂

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