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2024年9月24日、「ROS1融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」を対象疾患とするオータイロ(レポトレクチニブ)が承認されました!
ブリストル・マイヤーズ スクイブ|ニュースリリース
基本情報
製品名 | オータイロカプセル40mg |
一般名 | レポトレクチニブ |
製品名の由来 | Augment Tyrosine kinase inhibitor の頭文字から命名した。 |
製造販売 | ブリストル・マイヤーズ スクイブ(株) |
効能・効果 | ROS1融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん |
用法・用量 | 通常、成人には1回160mgを1日1回14日間経口投与する。 その後、1回160mgを1日2回経口投与する。 なお、患者の状態により適宜減量する。 |
収載時の薬価 | 3,468.30円 |
発売日 | 2024年11月20日(HP) |
ザーコリ(一般名:クリゾチニブ)とロズリートレク(一般名:エヌトレクチニブ)に次いで3製品目のとなるROS1阻害薬です。
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ロズリートレク(エヌトレクチニブ)の作用機序【NTRK陽性の固形がん/ROS1陽性の肺がん】
続きを見る
オータイロは、海外でも既に「AUGTYRO」として承認・販売されていますね。
海外ではNTRK陽性の固形癌に対しても使用されていて、国内でも2024年12月に承認申請が行われています。
ブリストル・マイヤーズ スクイブ|抗悪性腫瘍剤/チロシンキナーゼ阻害剤 オータイロ®のNTRK融合遺伝子陽性の固形がんを対象とする製造販売承認事項一部変更承認を申請
今回は非小細胞肺がんとオータイロ(レポトレクチニブ)の作用機序・エビデンスについて解説です!
肺がんの分類について
肺がんは性質や薬の効き方によって“非小細胞肺がん”と“小細胞肺がん”に分類されています。
早期に発見できた場合、手術の適応になりますが、発見時に他の臓器に転移がある場合、化学療法(抗がん剤や分子標的薬)の治療が中心となります。
非小細胞肺がんの治療(切除不能・再発の場合)
非小細胞肺がんはその組織型によって以下の2種類に分類されています。
- 非扁平上皮がん
- 扁平上皮がん
今回は①非扁平上皮がんを中心にご紹介します。②扁平上皮がんについては以下の記事をご確認ください。
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ポートラーザ(ネシツムマブ)の作用機序と副作用【肺がん】
続きを見る
非小細胞肺がん(非扁平上皮がん)の初回化学療法(一次化学療法)は、がんの遺伝子状況(ドライバー遺伝子変異など)によって対応するチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)を使用します。1)
ドライバー遺伝子変異など | 初回化学療法例 |
EGFR遺伝子変異陽性 |
|
ALK融合遺伝子陽性 | |
ROS1融合遺伝子陽性 |
|
BRAF遺伝子変異陽性 | |
MET遺伝子変異陽性 | |
RET融合遺伝子陽性 | |
遺伝子変異/転座陰性 (または不明) |
|
最も頻度が高いのがEGFR遺伝子変異陽性で、約半数を占めています。
オータイロが関係するROS1融合遺伝子陽性の割合は約1%ほどです。
ROS1融合遺伝子陽性の肺がん
ROS1融合遺伝子とは、ROS1遺伝子と別の遺伝子が転座して融合してできる遺伝子で、これを元に合成されるのが「ROS1融合タンパク」です。
切除不能な非小細胞肺がんでROS1融合遺伝子が陽性の場合、既存のROS1阻害薬であるザーコリやロズリートレクが使用されます。1)
しかしながら、これらのROS1阻害薬によって「G2032R」などの変異による抵抗性を生じることがあります。2)
NTRK融合遺伝子とは
現在、オータイロはNTRK融合遺伝子陽性例には使用できませんが、作用機序として関連するため、NTRK遺伝子が異常になってしまう「NTRK融合遺伝子」についてご紹介します。
何らかの原因でNTRK遺伝子とその他の遺伝子が転座(ひっくり返ってくっつく)してしまうことがあり、この結果、融合してできる異常な遺伝子を「NTRK融合遺伝子」と呼んでいます。
NTRK融合遺伝子から転写・翻訳して合成される異常なTRK融合タンパクは発がんの原因になったり、増殖因子がなくてもがんの増殖活性を促したりします。
NTRK1融合遺伝子からはTRKA融合タンパク、NTRK2融合遺伝子からはTRKB融合タンパク、NTRK3融合遺伝子からはTRKC融合タンパクがそれぞれ合成されます。
オータイロ(レポトレクチニブ)の作用機序
オータイロはROS1融合タンパクおよびG2032R変異による耐性を生じたROS1タンパク、TRK A/B/Cを選択的に阻害する新規の薬剤です!
下図のようにROS1融合タンパクやTRKタンパクを阻害することでがん細胞の増殖を抑制すると考えられています。
エビデンス紹介:TRIDENT-1試験
根拠となった臨床試験をご紹介します(TRIDENT-1試験)2)。
本試験は、ROS1融合遺伝子陽性の非小細胞肺がん患者さんおよびNTRK融合遺伝子陽性の進行固形がん患者さんを対象に、オータイロの有効性・安全性を検討した非無作為化の国際共同第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験です。
主要評価項目は「客観的奏効率」とされ、ROS1融合遺伝子陽性の非小細胞肺がん患者の各背景における結果は以下の通りでした。
客観的奏効率
<ROS1融合遺伝子陽性の非小細胞肺がん>
- ROS1阻害薬の治療歴なし:79%
- 1種類のROS1阻害薬の治療歴あり:38%
- ROS1 G2032R 変異陽性例:59%
副作用
15%以上に認められる副作用として、味覚不全(味覚障害、味覚消失、感覚障害、異痛症、味覚減退、感覚消失)(52.9%)、錯感覚(知覚過敏、感覚鈍麻、異常感覚、灼熱感、無感覚、蟻走感)(36.9%)、末梢性ニューロパチー(神経痛、末梢性感覚ニューロパチー、末梢性運動ニューロパチー、多発ニューロパチー)、便秘(26.3%)、筋力低下、貧血(25.3%)、ALT増加、AST増加、血中クレアチンホスホキナーゼ増加などが報告されています。
重大な副作用としては、
- 中枢神経系障害:めまい(60.6%)、運動失調(26.0%)、認知障害(19.6%)等
- 間質性肺疾患(2.6%)
が挙げられていますので、特に注意が必要です。
用法・用量
通常、成人には1回160mgを1日1回14日間経口投与し、その後、1回160mgを1日2回経口投与します。
なお、患者の状態により適宜減量します。
収載時の薬価
収載時(2024年11月20日)の薬価は以下の通りです。
- オータイロカプセル40mg:3,468.30円(1日薬価:27,746.40円)
以下の記事で算定根拠等について解説しています。
-
【新薬:薬価収載】17製品(2024年11月20日)
続きを見る
まとめ・あとがき
オータイロはこんな薬
- 国内3製品名のROS1阻害薬
- ROS1のG2032R変異に対しても効果が期待
- 14日までは1日1回、以降は1日2回服用する
- 中枢神経系障害には注意が必要
ROS1融合遺伝子陽性の割合は約1%ほどと非常に稀ですが、ザーコリとロズリートレクしか選択肢がなかったため、新たな選択肢が望まれていました。
また、これらのROS1阻害薬に抵抗性を示した場合の選択肢もありませんでした。
また、オータイロはTRK阻害作用も有しているため、ロズリートレクのようなNTRK陽性の固形がんの臓器横断的な適応拡大も期待できます(現在、オータイロの臓器横断適応は申請中)。
-
ロズリートレク(エヌトレクチニブ)の作用機序【NTRK陽性の固形がん/ROS1陽性の肺がん】
続きを見る
以上、今回は非小細胞肺がんとオータイロ(レポトレクチニブ)の作用機序・エビデンスについて解説しました♪
参考資料・論文等
- 日本肺癌学会|肺癌診療ガイドライン2024年版
- TRIDENT-1試験:N Engl J Med 2024;390:118-131
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