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世界最小の12.5型モバイルノート「HP EliteBook Folio G1」

HP EliteBook Folio G1

 日本HPから登場した「HP EliteBook Folio G1」は、ビジネス向けの12.5型モバイルノートPCであり、昨年(2015年)登場した「HP EliteBook Folio 1020 G1」の後継となる製品だ。

 液晶サイズはどちらも12.5型で同じだが、HP EliteBook Folio G1は、筐体がより小型軽量化されており、12.5型以上のWindowsノートPCとして現時点で世界最小(体積ベース)を実現、重量も970gと高い携帯性を誇る。

 今回は、このHP EliteBook Folio G1(以下Folio G1)を試用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。

最厚部12.4mmのスリムで堅牢な筐体

 HP EliteBookシリーズは、日本HPのビジネス向けノートPCの中でも、プレミアムブランドとして位置付けられる製品である。

 Folio G1は、スタイルとしてはオーソドックスなクラムシェル型ノートPCだが、薄さと軽さを重視して、アルミニウム合金をCNCで削り出した、いわゆるユニボディが採用されている。

 最厚部は12.4mmと非常にスリムで、デザインも洗練されている。筐体のサイズは、282×209×12.4mm(幅×奥行き×高さ)で、前モデルのHP EliteBook Folio 1020 G1の310×210×15.7mm(同)に比べて、液晶サイズは変わっていないが、横幅が28mmも小さくなり、厚さも3.3mm薄くなっている。

 ビジネス向けノートPCは、単に薄くて軽いだけでなく、堅牢性、耐久性も求められる。Folio G1は、米軍調達基準(MIL-STD)に沿った、落下テストや衝撃耐久テスト、振動テスト、高温環境テストなど、12項目の厳しいテストをクリアしており、タフな環境でも安心して利用できる。薄さはトップクラスだが筐体の剛性は高く、片手で本体の手前角を持って持ち上げても、たわむようなことはない。

HP EliteBook Folio G1の上面。アルミニウム合金を削り出して、アルマイト加工が施されたものだ
HP EliteBook Folio G1の底面。底面の左右に合計4基のスピーカーが搭載されている
HP EliteBook Folio G1の後面。ピアノヒンジと呼ばれるヒンジが採用されており、180度水平に開く
HP EliteBook Folio G1の前面。シャープでかっちりとしたデザインだ
試用機の重量は実測で982gであり、公称の970gよりやや重かった

CPUはCore mを搭載し、ファンレス動作を実現

 PCとしての基本性能を見ていこう。Folio G1は、BTOによって搭載CPUやSSDなどをカスタマイズできる。CPUは、Core m3-6Y30(0.9GHz)、Core m5-6Y64(1.1GHz)、Core m7-6Y75(1.2GHz)から選択でき、SSDはM.2フォームファクタの128GB SATA接続/256GB SATA接続/256GB PCI Express接続/512GB SATA接続から選択できる。ただし、メモリは8GB固定で、増設はできない。

 今回の試用機は、CPUがCore m5-6Y64(1.1GHz)、SSDが512GB SATA接続という仕様だった。Core mは、主に2in1やタブレット向けに開発されたCPUであり、消費電力が低いことが利点だ。Core iに比べるとクロックが低く、性能は多少落ちるが、発熱が小さいため、ファンレス動作や長時間のバッテリ駆動を実現できる。

液晶が180度完全に開く

 液晶ディスプレイとしては、12.5型のフルHD液晶または4Kタッチ対応液晶を選択できる。4Kタッチ対応液晶を選ぶと、重量が約37g重い約1.07kgとなるが、携帯性はほとんど変わらない。なお、4Kタッチ対応液晶は、Core m7搭載モデルのみ選択可能となる。どちらもIPS液晶を採用しており、視野角は広い。

 今回の試用機には、タッチ非対応のフルHD液晶が搭載されていたが、表面が非光沢処理されているため、外光の映り込みが抑えられており、見やすかった。長時間ディスプレイを見続けることが多い、ビジネス用途には非光沢液晶の方が目への負担が少ないので、向いていると言える。4Kタッチ対応液晶は光沢タイプとなるが、その代わり、Adobe RGBカバー率95%の広色域表示を実現する。

 また、液晶ヒンジとして「ピアノヒンジ」と呼ばれるものが採用されており、液晶を180度完全にフラットな状態まで開けることも特筆できる。前モデルのHP EliteBook Folio 1020 G1の場合は液晶を約130度までしか開くことができず、車内で座って使う場合など、やや使いにくいことがあったが、Folio G1ではそのあたりも改善された形だ。

 液晶上部には、92万画素のWebカメラとステレオマイクが搭載されている。Webカメラはビデオチャットなどに利用でき、ステレオマイクではノイズキャンセル機能を利用できる。なお、4Kタッチ対応液晶を選択すると、Webカメラに加えて、IRカメラが搭載され、Windows Hello対応の顔認識機能も利用できる。

試用機はフルHD液晶を搭載。非光沢処理されており、外光の映り込みが少ない
液晶が180度完全にフラットな状態まで開くので、場所や姿勢を問わず快適に利用できる
液晶上部には、92万画素のWebカメラとステレオマイクが搭載されている。Webカメラはビデオチャットなどに利用でき、ステレオマイクではノイズキャンセル機能を利用できる

キーストローク1.3mmで快適にタイピングが可能

 キーボードは、6列配列のアイソレーションタイプであり、キー配列も標準的だ。キーピッチは18.7mmと十分だ。また、薄さを重視したモバイルノートPCや2in1では、キーストロークが1mm程度しか確保されていない製品もあるが、本製品のキーストロークは1.3mmであり、打鍵感も優れている。

 さらに、キーボードバックライトも搭載されており、暗い場所でもミスタイプを防げる。最上段のファンクションキーはやや小さいが、このサイズのノートPCのキーボードとしてはよくできたキーボードである。ポインティングデバイスとしては、クリックパッドを搭載。最近主流のパッドとボタンが一体化したタイプであるが、パッドのサイズが94×61mmと比較的大きく、操作性は良好だ。

アイソレーションタイプのキーボードを搭載。配列も一般的で、キーピッチ、キーストロークともに十分だ
ポインティングデバイスとしては、クリックパッドを搭載する

USB 3.1 Type-Cを2基搭載

 本体の薄さを重視したため、インターフェイスは必要最小限のものに抑えられており、USB 3.1 Type-Cを2基とヘッドフォン/マイク端子を備えるのみだ。USB 3.1 Type-Cは、上下の区別がないことが特徴であり、本体への給電もこのポートを利用する。

 また、Thunderblot 3やパワーオフUSB充電機能もサポートする。本体から直接外部ディスプレイに出力することはできないが、オプションとして用意されている「HP USB-Cトラベルドック」や「HP Elite USB-Cドッキングステーション」をUSB 3.1 Type-Cポートに接続すれば、HDMIや有線LAN、通常サイズのUSBポートなどを利用できる。ワイヤレス機能としては、IEEE 802.11ac対応無線LANとBluetooth 4.2をサポートする。

 サウンド機能にもこだわっており、Bang & Olufsenとの共同開発による高音質スピーカーを4基搭載する。スピーカーは底面に配置されており、パームレストに手を載せていても、音の出口が塞がれるようなことはなく、スピーカーからの音は机に反射して耳に届くように設計されている。

 バッテリは4セルで、公称バッテリ駆動時間は最大約11.5時間(4Kタッチ対応液晶モデルは最大約7時間)と長い。実際にバッテリベンチマークソフトの「BBench」(海人氏作)を利用し、1分ごとに無線LAN経由でのWebアクセス、10秒ごとにキー入力を行なう設定で、バッテリ駆動時間を計測したところ(電源プランは「バランス」、液晶輝度は「50%」)、9時間9分という結果になった。無線LANを常時有効にした状態で9時間持てば、十分合格と言えるだろう。

 ACアダプタもコンパクトで、ACプラグ部分を折りたためるようになっているので、本体と一緒に携帯しやすい。ケーブル込みの重量も実測で212gと軽かった。

本体の右側面には、USB 3.1 Type-C(Thunderbolt 3対応)が2基用意されている
右側面のポート部分のアップ
本体の左側面には、ヘッドフォン/マイク端子が用意されている
ACアダプタは45W仕様で、コンパクトだ
ACプラグは使わない時には折りたためるようになっている
電源プラグはUSB 3.1 Type-C仕様だ
ACアダプタ(ケーブル込み)の重量は実測で212gと軽い

Core m搭載ながら、Core i7に迫る性能を実現

 参考のためにベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークソフトは、「PCMark 8」、「ドラゴンクエストX ベンチマークソフト Ver.1.4K」、「ファイナルファンタジーIXV 蒼天のイシュガルドベンチマーク」、「CrystalDiskMark 3.0.3b」、「CrystalDiskMark 5.1.2」である。比較用として、レノボ・ジャパン「Lenovo YOGA 900S」、レノボ・ジャパン「ThinkPad X1 Carbon」、レノボ・ジャパン「ThinkPad X1 Yoga」の値も掲載した。

【表1】検証機
HP EliteBook Folio G1Lenovo YOGA 900SThinkPad X1 CarbonThinkPad X1 Yoga
CPUCore m5-6Y54(1.1GHz)Core m5-6Y54(1.1GHz)Core i7-6600U(2.6GHz)Core i7-6500U(2.5GHz)
GPUIntel HD Grapics 515Intel HD Grapics 515Intel HD Graphics 520Intel HD Graphics 520

 結果は下の表に示した通りで、同じCore m5-6Y54を搭載したLenovo YOGA 900Sに比べると、全体的にスコアが高い。ドライバのバージョンの違いなども影響している可能性もあるが、Lenovo YOGA 900Sよりも冷却性能が高く、TurboBoostテクノロジによるクロック向上率が高いと思われる。PCMark 8のスコアは、Core i7を搭載したThinkPad X1 CarbonやThinkPad X1 Yogaに迫っており、実際の使用感も快適であった。

 なお、前述したように、今回の試用機はSATA接続のSSDが搭載されていたため、CrystalDiskMarkのスコアは、PCI Express接続のSSDを搭載した他製品よりも低い。PCI Express接続のSSDを選択すれば、PCMark 8のスコアもさらに上がると期待できる。

【表2】ベンチマーク結果
HP EliteBook Folio G1Lenovo YOGA 900SThinkPad X1 CarbonThinkPad X1 Yoga
PCMark 8
Home conventional2,1062,1652,6352,590
Home accelerated3,1672,8363,1763,167
Creative conventional2,3412,0812,6912,694
Creative accelerated3,6603,2423,8904,036
Work conventional2,8532,6892,9282,794
Work accelerated4,0743,9524,0633,995
ドラゴンクエストX ベンチマークソフト Ver.1.4K
1280×720ドット 最高品質4,6223,5106,7967,048
1280×720ドット 標準品質5,6324,4916,8448,339
1280×720ドット 低品質6,6084,6496,8519,644
1920×1080ドット 最高品質2,7351,7573,1093,822
1920×1080ドット 標準品質3,4922,6824,2564,950
1920×1080ドット 低品質3,9982,8005,8355,979
ファイナルファンタジーIXV 蒼天のイシュガルドベンチマーク
1280×720ドット 最高品質1,1149671,7131,812
1280×720ドット 最高品質(Direct X9相当)1,4571,2602,2842,326
1280×720ドット 高品質(デスクトップPC)1,2531,1541,9751,976
1280×720ドット 高品質(ノートPC)1,5411,2242,2882,416
1280×720ドット 標準品質(デスクトップPC)2,1781,7923,2803,449
1280×720ドット 標準品質(ノートPC)2,3611,8253,2733,462
CrystalDiskMark 3.0.3b
シーケンシャルリード479.3MB/s1262MB/s1648MB/s1848MB/s
シーケンシャルライト385.0MB/s305.4MB/s1539MB/s1535MB/s
512Kランダムリード248.8MB/s622.5MB/s1224MB/s1350MB/s
512Kランダムライト337.7MB/s305.2MB/s1452MB/s1517MB/s
4Kランダムリード31.59MB/s39.89MB/s51.05MB/s50.39MB/s
4Kランダムライト78.38MB/s110.8MB/s139.8MB.s133.1MB/s
4K QD32ランダムリード332.3MB/s248.4MB/s555.6MB/s490.6MB/s
4K QD32ランダムライト184.6MB/s286.7MB/s418.7MB/s400.6MB/s
CrystalDiskMark 5.1.2
シーケンシャルリードQ32T1515.1MB/s1569MB/s2592MB/s2519MB/s
シーケンシャルライトQ32T1455.7MB/s309.2MB/s1533MB/s1542MB/s
4KランダムリードQ32T1264.7MB/s241.6MB/s545.9MB/s500.3MB/s
4KランダムライトQ32T1220.9MB/s301.1MB/s251.7MB/s248.1MB/s
シーケンシャルリード481.9MB/s1280MB/s1854MB/s1598MB/s
シーケンシャルライト397.0MB/s308.5MB/s1528MB/s1546MB/s
4Kランダムリード32.92MB/s42.63MB/s53.99MB/s52.80MB/s
4Kランダムライト92.42MB/s149.5MB/s164.5MB/s144.6MB/s

ビジネス向けモバイルノートPCとして、非常に完成度の高い製品

 Folio G1は、軽くて薄くて高性能、さらに堅牢でバッテリ駆動時間も長いという、ビジネス向けモバイルノートPCで重視されるポイントの全てを高いレベルでクリアした、非常に完成度の高い製品だ。

 薄さを重視したため、標準搭載のインターフェイスは最低限だが、オプションのHP USB-Cトラベルドックなどを利用することでカバーできる。デザインも洗練されており、ビジネス向けモバイルノートPCとしてはもちろん、コンシューマ用途にもお勧めしたい。