※本稿は、ミレイユ・ジュリアーノ著、羽田詩津子訳『フランス人はなぜ好きなものを食べて太らないのか』(日経ビジネス人文庫)の一部を再編集したものです。
チョコレート中毒のフランス人
最近パリで《レ・マンジューズ・ド・ショコラ》(簡単に訳すと《チョコレートを食べる女性たち》)という短い芝居を見た。3人の若いチョコレート中毒が、グループセラピーを受けようと決意する。そしてセラピスト(彼女自身、元チョコレート中毒)は、3人が中毒から解放されるための手がかりを見つけられるように手助けしようとする。全員が失敗して(意外)、何ひとつ解決されない(これがフランスの舞台なのだ)。
しかし、たくさんのいいせりふが登場し、中にはささやかな真実以上を含んでいるものもあった。たとえば、「調査によれば、フランス人の10人中9人がチョコレート好きだということが判明している……しかも好きではないと答えた10人目は噓をついている」
その芝居はフランス人のチョコレートへの執着ばかりか、アメリカではおそらくあたりまえの治療施設も風刺していた。おもしろく見たが、チョコレートをこっそりと食べる女性についての意見だけはいただけなかった。フランス人にとって、そういうことをする女性は冗談にできるほど馬鹿馬鹿しく感じられるのだろうが、わたしのアメリカ人としての経験から言うと、笑えなかったのだ。
パンやチョコレートの存在を消すのは逆効果
アメリカ女性がこっそり何かを食べることは頻繁にあり、その結果感じるのは喜びよりは罪悪感である。そういう傾向は変えていかねばならない。どんなものであれ、罪悪感を覚えていてはおいしくない。
本当に何かを楽しむのであれば、わたしがチョコレートを愛しているように、人生においてそのための場所があるはずだ。だが罪悪感を覚えたまま、がつがつ食べることはしてはならない。洗練された喜びを感じてこそ、チョコレートを堂々と心から楽しめるのだ。アメリカ人が食べるべきではないとみなすようになった他のすばらしい食品についても、同じことが言える。
フランス女性はチョコレートをよく食べる(平均して年に5.5キロぐらい)。「敵」として監視リストに載っているパンも食べる。しかし、フランス女性は太らない。実際、これもまたフレンチパラドックスのひとつなのだ。
すなわち、そういう楽しみが存在しないふりをすること、あるいは長期間にわたって食生活からそれを抹消することは、おそらくまた体重が増えることにつながる。長期的な欠乏感がもたらす唯一の効果はヨーヨーだ――今日は下がっても、知らないうちにまた上がっている。それはまったく無意味なことだ。とりわけ、パンもチョコレートも体によいのだから。