※本稿は、安部敏樹『みんながんばってるのになんで世の中「問題だらけ」なの? 知識ゼロからの社会課題入門』(NewsPicksパブリッシング)の一部を再編集したものです。
以下は、安部さんと「おば」(架空のキャラクター)との会話の一部である。
道で寝ている人たちだけがホームレスではない
【おば】「ホームレス=道で寝てる人」じゃないの?
【安部】日本は野宿生活、屋外生活、いわゆる路上生活をする人々を「ホームレス」と定義してる。ただ、それだと実態を表しきれてはいなくて。たとえばイギリスの定義で「ホームレス」は、いろんな理由が重なって貧困状態に陥って、「家を失ってる状態」のことなんだよね。
【おば】家を失っている「状態」?
【安部】路上生活者は、ホームレスの「一部の形態」であって、もっとも極まった状態とも言える。ただ、その形態は貧困の度合いや世代によっても違うし、もっと多様に存在してるんだよね。実際に今、若い世代のホームレスは路上にいないんだよ。
【おば】路上にいないホームレス……いまいちピンと来ない。でもたしかに、路上で見かけるのはおじさんばっかだわ。
【安部】おじさんばっかりっていうのは実際そうで、路上には若い人たちもいなければ、女性もほとんどいない。東京都の路上生活者の95パーセントくらいは男性で、平均年齢も60歳を超えているという調査結果もあるんだよ。
【おば】たしかにそんなイメージかも。でも、なんで⁉
若いホームレスは「ネカフェ」を拠点にしている
【安部】ホームレスの若い人たちは、スマホで日雇いの仕事を見つけて、ネットカフェで生活しているケースが多い。都内だけで一晩に4000人いるって言われてる。
【おば】ネカフェで寝てても「ホームレス」なんだ。
【安部】ホームレスの典型は、路上生活者。でも、ネットカフェで寝泊まりするいわゆる「ネカフェ難民」、カプセルホテルとか友人の家を転々としている人も含まれる。大阪の西成とか東京の山谷とか、「ドヤ街」と呼ばれる街の簡易宿泊所で暮らす「日雇い労働者」も本来の意味のホームレスに含まれるんだよね。
【おば】ホームレスって、路上にいて仕事もしてない人たちかと思ってた。