ある日突然、親が倒れ、認知症とわかってあわてふためき、「準備しておけばよかった……」と後悔する人も多い。いずれやってくる「親の老い」や「介護」の問題にどう備えればいいのか。岩手・東京間の遠距離介護歴12年の工藤広伸さん(52)が介護未経験の男性Kさん(40代半ば)に教えた本番前に持っておくべき心構えとは――。(後編/全2回)
※本稿は、工藤広伸『老いた親の様子に「アレ?」と思ったら』(PHP研究所)を一部編集したものです。
家族が倒れたことで人生が好転した話
前編から続く。
【介護超初心者Kさん(以下、K)】老いた親のことって、実際に困ることが起きないと、なかなか現実味がないというか、行動に移せないというか……。命に直結する地震などの自然災害への備えでさえも面倒で、ついあとまわしになっているのが現状です。
【遠距離介護歴12年・工藤広伸さん(以下、工)】そうですよね。でも、老いた親の問題って、自分の人生に与えるインパクトは相当大きいですよ。場合によっては、引っ越しをしたり、仕事を変えたり、家族関係が悪くなったり……と、しんどい状況がじわじわ続くので、自分の人生をあきらめてしまう人もいます。
【K】頭では、なんとなく理解できます。でも、「自分には、まだ関係ない」「ひょっとしたら逃げられるかも」と思ってしまうんですよね……。
【工】わたしも父のときは、そうでした。父が脳梗塞で倒れたとき、正直なところ「逃げたい」と思いましたから。でも、父が倒れて、人生が「好転」したんです。
【K】えっ⁉ 失礼ですが、転落ではなくて?
【工】はい、好転です。