どんなに偏差値が低くても、大学には行ったほうがいいのか。学歴研究家の「じゅそうけん」こと伊藤滉一郎さんが、新著『京大思考』(宝島社新書)を出した神戸学院大学の鈴木洋仁准教授に聞いた――。
大学の教室
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「BF大学」は本当に必要なのか

前編から続く)

いわゆる「Fランク大学」とは、大手予備校の偏差値が35未満の大学、または「ボーダーフリー大学(BF大学)」と呼ばれる大学を指す。つまり、基本的に名前を書けば誰でも入れる大学のことだ。

授業は中学・高校で習ったことの復習から始まり、テストでは基礎的な語句の穴埋めテストや算数の計算問題といった義務教育のおさらいをさせている学校も少なくないという。

少子化が進んでいるにもかかわらず、こうした大学は近年みるみる数を増やしている。文部科学省の「学校基本調査」によると、1990年時点では507校だった四年制大学は、2025年現在ではなんと813校にまで数を増やした。

また、厚生労働省の「一般職業紹介状況」によると、製造や建設などの現場では人手不足が深刻化する一方、文系事務職(ホワイトカラー)は求職者が求人を17万人上回っている現状がある。ここ30年で高卒就職者は7割減ったのに対し、大卒就職者が4割近く増えたことが一因だ。

大学進学率が年々上昇し、「四大卒なんだから当然ホワイトカラーだよね」という共通認識のもとで個々人が就職先を選んだ結果、“人手過多”となる職種が生まれるミスマッチが起きつつあるのだ。

上述したように、本来必要である職種に必要な人員が配分されていない現状は大きな問題だろう。

「四大ブランド」に惹かれ、漫然とFラン大学に入学する人たちがそのまま過酷なノルマが課されるソルジャー営業職など「ホワイトカラーもどき」の職種に駒を進めている現状は、いかがなものか。

インタビューの前編〈だから京大は「ミスコン」を絶対に開催しない…「女子アナの登竜門」を京大男子が心底嫌がる意外なワケ〉では、日本トップの大学の一つである京大について、『京大思考』(宝島社新書)を書いた鈴木洋仁氏と語り合った。今回はその“逆”ともいえる「Fラン大学」の是非について、忖度抜きで聞いてみた。

親から言われて大学に入る人たち

【じゅそうけん・伊藤滉一郎(以下じゅそうけん)】学力最上位層の学生が集まる京都大学の対極にあるのが、いわゆる「Fランク大学」だと思います。少子化が進んでいる中で、こうした大学が増え続けている問題をどう思われますか。

【鈴木洋仁(以下鈴木)】私の所属する神戸学院大学はFランではないですが(河合塾偏差値で35~45)、一部の学部はギリギリのラインかもしれません。

学生を見ていて思うのは、親から「大学を出てほしい」と言われて来ている人が多いということです。

「MARCH」とか「関関同立」レベルの大学に通う学生は、まだ積極的に大学に行きたいと思って入学しています。でも、それ未満の大学の学生は親に「大学ぐらい出てね」と言われたから入学したというレベルの人も多いのではないでしょうか。

だから、大学の教員側も「生徒たちは大学に積極的に入りたかったわけではない」という前提で指導しないと、完全にミスマッチになってしまいます。

大学側の認識が変わって、「世の中に対してこういう人材を育てていきます」とか、「なんとなく入学した人に対してもこういう教育をしていく」と言えるようになれば、Fランと呼ばれるような大学にも意義はあると思います。