カメレオン・ライム・ウーピーパイとドラマ『財閥復讐』、相互に高め合う中毒性 新アプローチで描く物語の真髄

CLWPと『財閥復讐』、相互に高め合う中毒性

 2024年をかけて、『SXSW』への2年連続出演に始まり、夏フェス出演にPESをフィーチャーした楽曲「REACH」のリリースなど、国内外でさまざまな話題を振り撒いてきたカメレオン・ライム・ウーピーパイ(CLWP)。その2025年第1弾となるシングルが1月8日に配信リリースされた。タイトルは「Secret March」。1月6日から放送が開始したドラマ『財閥復讐~兄嫁になった元嫁へ~』(テレビ東京系)のエンディングテーマである。カメレオン・ライム・ウーピーパイがドラマのテーマソングを担当するのはこれが初めて。だからこそ特別な気合いを入れて作った……かどうかは本人の話をまだ聞けていないのでわからないのだが、ドラマの世界観にとてもよくマッチしつつ、カメレオン・ライム・ウーピーパイらしいポップさや不思議さもちゃんと感じさせる、とても興味深い楽曲となっている。

 『財閥復讐~兄嫁になった元嫁へ~』は、ひとことで言えば日本有数の財閥を舞台にした復讐劇。財閥の次男として育てられた愛人の子が、最愛の妻に裏切られ、幸福の絶頂から絶望のどん底に叩き落とされたところから、すべてを懸けて財閥に復讐を挑んでいくという物語だ。富への執着、裏切り、各々が抱えた秘密――ダークな人間模様が交錯するこのドラマにあって、「Secret March」が果たす役割は大きい。ドラマを観た人なら、第1話のクライマックス、主人公・伊勢由貴也(渡邊圭祐)の人生がガラガラと音を立てて崩れていくその瞬間にイントロの壊れたオルゴールの音が流れてきた時、背筋がゾクゾクとするような感覚を覚えたはずだ。その感覚を覚えさせ、ドラマのなかに流れるドロドロとしたものに戦慄させる――そのためにこの曲のサウンドは作られ、鳴らされている。Chi-は今回のタイアップに際して「始まりのオルゴールの音色は可愛い音ですが、その時の気分よっては不気味で怖い音色にも聞こえる気がしてます。ドラマのエンディングで聴く『Secret March』がどんな風に聴こえるか楽しみです」とコメントしているが、まさにその通り、ドラマとの相乗効果でこの曲は明らかに深みを増している。

 楽曲の冒頭で流れるオルゴールが奏でるのは、誰もが一度は聴いたことがあるであろう、モーツァルト「トルコ行進曲」の有名な旋律。その後始まっていくChi-のボーカルも、そのメロディをなぞるように進んでいく。〈知らない 知らない 秘密の話は/知らない 知らないままでいさせて〉と柔らかな声で歌われるフレーズが、純朴で優しい青年という表の顔とは裏腹に一族への復讐を企てる由貴也、その由貴也を騙して一族に取り入る元妻・絵理香(瀧本美織)をはじめ、ドラマで描かれる登場人物たちの“裏の一面”とリンクして何やら不穏な雰囲気を醸し出す。〈化けの皮じゃ 同類ね やっぱり お互い〉――そう囁くように歌うChi-の声は、まるで「あなたもそうでしょ?」と問いかけるようだ。

 そんな歌詞の内容からするとまるでチグハグな電子音がピュンピュンと飛び交うサウンドデザインも、リスナーの心を掻き乱すのにうってつけ。聴いているうちにあやしげなお伽話の世界に迷い込んでしまったような気持ちになる。曲の最後になってChi-の歌は突然開き直ったかのように明るくなり、ラストは“夫婦”とかけた〈最低の 最低の ふーふー〉という人を食ったようなフレーズで終わるのだが、そのあっけらかんとした結末も、なんだかそら恐ろしく聞こえてくる。

Secret March(テレ東系ドラマプレミア23 「財閥復讐~兄嫁になった元嫁へ~」エンディングテーマ) / カメレオン・ライム・ウーピーパイ:Official Music Video

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる