最新映画『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』ライターしげるが見る「ガンダム物語を大規模に語り直す度胸に驚き」

※この記事は映画『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』のネタバレを含みます。まだ見ていない方はご注意ください。

■オープニングから30分間の驚き

 まず見終わってから最初に感じたのは、「なんかすげ〜悔しい……」という気持ちだった。『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』のことである。

 いや、予想はしていたのである。トレイラーに映るあまりにもザクそのまんまなモビルスーツの姿や、これみよがしにヒートホークを持っているGQuuuuuuXが描かれたキービジュアルから、「はは〜ん、なんかスタジオカラー・鶴巻味の強い新作ガンダムに見せかけて、『実は宇宙世紀の話でした〜』というサプライズを仕掛けてくるんだろうな……」と、見る前から予想していたのだ。

 なんなら、オープニングは『長い眠り』をBGMに「人類が増えすぎた人口を宇宙に移民させるようになって、すでに半世紀が過ぎていた……」のナレーションが入るところからやってくるな……とまで予想していた。地球のまわりの巨大な人口都市が第二の故郷になっていって、子を産み育て死んでいき、コロニーが落ちて人類が自らの行為に恐怖するんだろうなと。後出しだからあんまり説得力ないけど、本当にそう思っていたんですよ! それしかないだろうと!

  見た人ならわかると思うが、その予想は当たった。しかし、当たったのはそこまで。サブタイトルが出るときのあの音、そして宇宙空間の「スーッ……スーッ……」からザクのモノアイが大写しになったところで、え、そこから? そこからやるんかと思った。 

  このオープニングからの30分余り。正直、大変面白く見てしまった。絶妙に見たことがないモビルスーツのフォルム! 緑色のホワイトベースもといソドンと、ビットがくっついた赤いガンダム! 「お前ら当然小説版は読んでるよな」と語りかけるような、シャリア・ブルの大フィーチャー! ブラウ・ブロ……ではなくキケロガと赤いガンダムの連携攻撃! 「やっていいのか、これ」「この内容、どうやって稟議を通したんだ……?」という疑問が時折脳裏をよぎりつつ、前半の架空戦記パートを大いにエンジョイしてしまったのである。なんか見る前は全然そんなことは思ってなかったのに、前半が終わった時には「おれがガンダムで見たかったのは、これだったのかもしれない……」という気持ちにすらなっていた。

  不思議だったのは、架空戦記ものを読む時の「これは悪ノリだなあ」「面白いけど、よくない面白さだなあ」という、ある種の後ろめたさもちゃんと感じられた点である。日本で出版されている架空戦記小説というのは、第二次世界大戦を題材にしつつ、戦争の経過や勝敗が全然違うものになっていく作品が多い。「もしもミッドウェー海戦で負けなかったら」とか「もしも日独が第二次大戦に勝利して、その後冷戦が始まったら」とか、そういうのである。

  こういう架空戦記からは、どうしても「第二次大戦、勝ちたかったなあ……」という気持ちがにじんでいる気がしてしまう。そもそも、戦争なので実際にめちゃくちゃ人が死んでおり、戦争の結果をひっくり返して遊んだりするのは、少々不謹慎だとも思う。大体「もしもあの戦争に勝っていたら」なんていう想定の話は、「いや、負けたじゃん」で終わらせるのが、良識ある大人の態度だ。でも、だからこそ、架空戦記には独特の面白さと後ろめたさが付きまとう。マニアがひっそりと人目に触れずに楽しむ、少々子供じみたジャンルであるというのが、自分の架空戦記に関する認識だ。

  そんな架空戦記独特の、頭の後ろ側がジンジンしてくるような面白さ、そして「こんなことやっていいのかよ」という後ろめたさを、自分は『GQuuuuuuX』の前半からしっかり感じ取っていた。これはすごいことだ。なぜって、『機動戦士ガンダム』は架空の話、アニメでありフィクションなのである。そもそも現実の話ではないのに、その物語に「if」を突っ込んで語り直したくらいで、後ろめたさを感じる必要なんかこれっぽっちもないのだ。

 現に、ゲームでは一年戦争の結果をひっくり返すようなタイトルが色々と存在している。『ギレンの野望』とかである。でも、あれはプレイヤーが能動的に作中の歴史に介入し、「こうだったら面白いな」という自分の願望を実現していくものだ。「こうなりました」と、史実の流れを一方的に見せられるアニメとは全然違う。そもそも『GQuuuuuuX』は、ファンが勝手に作ったMAD動画とかではない。バンダイナムコやサンライズやその他諸々の会社が関係する、オフィシャルな映像作品だ。そこで、こんなことを……?

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