「紅白歌合戦」の公開生放送、あるいは長い歴史を持つ番組自体が中止される可能性を、半年以上前の今から覚悟してみる
- まだ5月半ばなのに今から大晦日の話を持ち出すなんて、「鬼が半笑いするほど時代錯誤」も甚だしい!
- 日々刻々変化する環境下で、1か月先どころか明日の展望さえも見えていない中、半年以上も先のことなど、まだ誰一人見通せるはずがない!
- エンタメのような「不要不急の話」を持ち出すこと自体、間違っている!
そんなお叱りもあろうかとは思いますが、書きます。
なんと言っても、このブログのタイトルは、
「さえわたる音楽・エンタメ日記」
ですから。
執筆者としての「回想を込めたホンネ」に触れておきますと…
1年の最後の数時間。
ふだんは忙しく離れ離れの家族みんなが、茶の間に集まる。
足が下ろせて心地良い掘りゴタツを囲み、テーブルに置かれたミカンの皮など剥きながら、視線はテレビ画面に。
午後8時45分ごろ。
当時はまだ「権威」のあったその年の「レコード大賞」をどの曲が受賞するか、ドキドキしながら見守る。
そして、
「さぁさ、9時からコウハクだから、今のうちにトイレに行っておきなさい!」
などと言われて、そそくさと越年に向けての「心の準備」をする。
そうした「3丁目の夕日」的風景は、すっかり過去のものとなってしまいました。
そんな現代においても、いまだ視聴率40%台を誇る「テレビ界最大の音楽・エンタメ番組」とも言える「紅白」。
いまや番組、あるいはテレビ自体に興味のない方々が大勢かもしれません。
それでもなお、いまだエンタメ界において強力なキーワードと言える「紅白」に関して、
「現時点だからこその展望」
に思いを馳せたくなるのです。
「まだ半年以上先」と言いながら、直接番組に関わる制作陣にとっては、すでに今年の企画・構想の検討や準備を開始していても、決して「早過ぎる」とは言えない時期です。
最近のテレビにまつわるトレンド、と言えば…
それなりに広い面積が確保されていると見られるスタジオであっても、「密閉された空間」と見なされ、同じ場所に多くの出演者や関係者の集まる収録は行えない状態となっています。
屋外のロケーションさえも、「密」の観点から中止されており、まったく身動きがとれない状態のように見えます。
<ドラマ>
NHK朝ドラや大河ドラマ。
個人的にはどちらも見ていないのですが、いざ「収録ストップ」のニュースを聞くと、この先どうやってストーリーを展開・完結させるのだろう?と気になります。
本来ならオンエア予定だった民放3か月クールの4~6月期ドラマは、放送開始時期のメドが立たず、もはや壊滅状態です。
次のクールの制作にも、確実に影響を与えそうです。
<バラエティー>
バラエティー番組やワイドショーでも、番組の性格上「生放送」スタイルを維持しながらも、その画面構成は大きく様変わりしました。
実際は何メートルも離れたところに据わっている出演者が、画面のカット上はすぐ隣にいるかのように映し出される。
画面の中にリモート出演のコメンテーターの顔が映るモニター=「もうひと段階奥の画面」が同居している、あるいは画面が「田の字」型に分割されて、別の場所から中継される顔が同時に映し出されるのも、ごく普通の光景となりました。
お笑い要素の強いバラエティーでは、「笑い屋」のスタジオ観客の代わりをスタッフが務めていたりしますが、たとえば「笑点」の大喜利が無観客で行われているのを見ると、なんとも切ない気分にさせられます。
(本日放送分からは、ついに「リモート大喜利」になってしまうとの情報もあります。座布団はどうやって運ぶのでしょう?)
今日の話題からは外れますが、スタジオの出演者数が減ったことにより、
「リモートまで駆使して多数のゲストを呼ばなくても、番組は十分成立するのでは?」
「これまで、どれだけムダな出演者をひな壇に並べていたのだろうか?」
といった新たな課題や方向性も見えて来たようにも感じます。
<歌番組>
NHKでは、毎週火曜日夜、NHKホールに観客を集めての「うたコン」なる歌番組を放映しています。
しかし、ここ数週間はそうした公開生放送スタイルが不可能となり、過去の傑作選を流してしのいだり、あるいは前時間帯の「NHKニュース7」の延長により放映自体が中止となったりしています。
同様に、日曜お昼の風物詩とも言える「のど自慢」も、NHKホールほど大規模ではないにしても、一定数収容可能な各地方都市のホールに観客を集めての生放送スタイルでのオンエアは、最近ずっと行われていません。
スタジオ生放送を貫き通して来たテレ朝の長寿番組「ミュージックステーション」も、先月は「傑作選」のプレイバック、今月からは生放送の再開を模索し始めているものの、出演者の歌唱はリモートが原則だったりします。
<スポーツイベント>
上記のように「番組」として直結はしませんが、テレビで放映されるのが各種のスポーツイベント。
オリンピックが「来年の7月、予定通り実施される」と考えている国民は、果たしてどのくらいのパーセンテージでしょうか?
本来なら3月から開幕していたはずのプロ野球やJリーグはいまだにメドが立たず、すでにシーズンの半分近い日程を過ごしています。
高校野球、春のセンバツ中止は本当に悲しい出来事でしたが、夏の甲子園も、との報道が出ています。
インターハイも中止が決まりました。
また、だいぶ先の来年3月開催を予定していたWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)も、今の段階で早々に延期されることに。
大相撲は、3月は無観客でなんとか開催しましたが、5月場所は中止。
目前に迫っている7月場所は、開催地を名古屋から東京に移して行うとしていますが、角界内に被害者が出ている現状で、仮に無観客とは言え実施することは出来るのでしょうか?
テレビに関わるさまざまな状況を目にするにつけ、「紅白」を典型とする
「何千人規模の大ホールに、大勢の観客を集めて公開生放送を行う大イベント」
が、「わずか」半年後に従来のスタイルのままで実施できるとは、どう見ても思えない気がしてくるのです。
言葉だけが先行して、まだ具体像のはっきりしない「新しい生活様式」の下では、なおさらでしょう。
「紅白」に関しては、昨年の放送直後に自分なりの分析記事を掲載しました。
良かった点・がっかりした点、好き勝手にさまざま述べましたが、それは
なんだかんだ文句を言いながらも、物心ついた時から大晦日にはごく当たり前に「紅白」が存在し、途中「廃止論」が叫ばれることがあっても決して番組自体がなくなることはない、という「大前提」が根底にあればこその話です。
その上で、
「紅白」のスタイルが時代とどんどん乖離していくことに対して、少なからぬ違和感を綴りました。
何かをきっかけにして、「番組制作の発想を大胆に見直す」必要があるのではないか?と個人的に感じる部分も指摘しました。
「国営放送のパワーを駆使して、どんなに豪華なステージ演出を施したとしても、番組の『主役』である歌そのものが『個別化』し、老若男女問わず誰もが知る国民的大ヒット曲が生まれなくなり、皆が一体となって楽しめる娯楽形態が失われた現代において、『紅白』は『エンタメ界の統合の象徴』として君臨し続けられるものではない」
という問題意識を語りました。
それでも、「音楽」や「歌」をこよなく愛する気持ちは変わりません。
そうでなければ、あのような「分析記事」を書いたりはしません!
今年は本当に、「番組の内容や存在意義を議論する」云々以前に、思いもよらない「きっかけ」で、公開生放送のスタイルや最悪番組自体が中止されてしまう覚悟が、今から必要なのかもしれない。
「放送70年の歴史が揺らいでいる」と真剣に案じています。
もちろん、それだけ歴史のある番組ですから、「傑作選」をやろうと思えば、素材となるストックは山ほど残ってはいるのでしょう。
しかし、「編集された過去の名場面」で1年を振り返ることは、にわかには受け入れ難い!
あの時間帯に生放送でない「プレイバック映像」が流れることは、まだ体感としてイメージ出来ないのです。
かと言って、「生放送」にこだわった上でどんなテクニックを駆使したとしても、リモートであの雰囲気・臨場感を再現することは、まず不可能。
例年司会者や出場者が発表される11月頃になって、
「半年前のあんな記事は、とんだ杞憂だったね!」
「マンネリだ、もう時代遅れだと叩かれながらも、やっぱりニッポンの大みそかには『紅白』ありき、だよね!」
と笑えることを願いながら、「音楽・エンタメ愛好家」の観点からの私見をささやかに呟いてみました。