品格ある空間と人柄端正な味に心奪われる『喫茶室 風景』【片貝】

プリン ア・ラ・モード770円。美しいデコレーションにもうっとり。
プリン ア・ラ・モード770円。美しいデコレーションにもうっとり。

赤茶色の空間にステンドグラスのランプが優美さを添え、ぜいたくな一枚ガラスの窓からはたっぷり光が差し込む。「店ができた頃は田んぼの中の一軒家で、赤城山の裾野まで見えたんですよ」と、おっとり話すのは店主の新井節子さんだ。今は車が行き交う街道となったが、常連さんは「隙間から今も見えますよ」と、特等席に腰を下ろす。

一時期お休みしていたが、2018年に復活。腹ごしらえにいいのが、まろやかなコクをまとうナポリタン、そして一風変わったタマゴサンドだ。ベーコンやタマネギなど具だくさんの和風玉子焼きタイプで郷愁をそそる。

もう一つの名物がプリン ア・ラ・モード。娘の山田恵さんとともに付きっきりで3時間、湯煎にかけたプリンがむっちりなめらか。フルーツのカットの仕方、クリームの絞り方、ガラスの器も繊細で端正。見ほれてしまう。

タマゴのホットサンド(ミニサラダ・ヨーグルト付き)990円、クリームソーダ550円は透明ソーダでスッキリした大人味。
タマゴのホットサンド(ミニサラダ・ヨーグルト付き)990円、クリームソーダ550円は透明ソーダでスッキリした大人味。
スイーツの飾りや手搾りフレッシュジュースに用いるフルーツ、プリン、コーヒーゼリーが出番を待つ。
スイーツの飾りや手搾りフレッシュジュースに用いるフルーツ、プリン、コーヒーゼリーが出番を待つ。
レンガとヒノキをぜいたくに用いた空間。一枚窓も印象的だ。
レンガとヒノキをぜいたくに用いた空間。一枚窓も印象的だ。
現在は新井さんと娘の山田さんの2人で営む。のどかなおしゃべりも楽しみだ。
現在は新井さんと娘の山田さんの2人で営む。のどかなおしゃべりも楽しみだ。
1971年に創業。
1971年に創業。

『喫茶室 風景』店舗詳細

住所:群馬県前橋市西片貝町1-207-1/営業時間:9:00~17:30LO/定休日:日/アクセス:上毛電気鉄道片貝駅から徒歩6分

緑と木調が織りなす空間は心から和む街のサロン『並木 珈琲館』【高崎】

オムライスセット900円。お食事セットはミニサラダ、味噌汁、ドリンク付き。野菜に合わせて2種の手作りドレッシングを用いるサラダと、昆布出汁に麹を合わせた、体に沁み入る味噌汁は名脇役だ。日替わりランチは平日のお楽しみ。
オムライスセット900円。お食事セットはミニサラダ、味噌汁、ドリンク付き。野菜に合わせて2種の手作りドレッシングを用いるサラダと、昆布出汁に麹を合わせた、体に沁み入る味噌汁は名脇役だ。日替わりランチは平日のお楽しみ。

ロッヂ風情は「大工さん任せ」と、店主の並木征行さんは笑うが、ママの優子さんが丹精した植栽が天井から下がり、鉄製ランプの灯りを受け止める。その下で並木さんが、御荷鉾(みかぼ)山系の名水でやわらかな口当たりのコーヒーを淹れてくれる。お供にはアイスコーヒーから作るコーヒーゼリーを。自家製ガムシロップをかけると、すっきりした甘みの奥から苦味がほんのり。

実は、食事目当ての客も多い。「うちは全部手作り」と話すだけあって、オムライスのケチャップは、トマト缶にソースや醤油、みりんなどを加えた深みのある旨味で、思わず唸(うな)る。

テーブル席から1段高いカウンター席では、日々常連客が顔を並べ、店主夫妻と談笑する時間を楽しんでいく。「2人の人間性とお店の雰囲気がマッチしているのよねえ」と、しみじみ呟くのはその中のご婦人。納得です。

手作りコーヒーゼリー400円は自家製ガムシロップ付き。売り切れ御免のプリンも人気だ。
手作りコーヒーゼリー400円は自家製ガムシロップ付き。売り切れ御免のプリンも人気だ。
サイフォンで淹れる並木さん。
サイフォンで淹れる並木さん。
1979年の創業以来、変わらぬ風情。
1979年の創業以来、変わらぬ風情。

『並木 珈琲館』店舗詳細

住所:群馬県高崎市片岡町3-1-18 高崎ヴィレッヂ/営業時間:9:15~20:00LO/定休日:日/アクセス:JR・私鉄高崎駅から市内循環バスぐるりん少林山線「乗附・島大島町」行き約10分の「神田医院前」下車2分

自家焙煎コーヒーと個性派パフェの魔力『新木珈琲店』【前橋】

マンゴーバナナパフェ1150円。ドリンクセットは1380円。他にも契約農家から仕入れた秋のブドウパフェやアフォガードなどもある。
マンゴーバナナパフェ1150円。ドリンクセットは1380円。他にも契約農家から仕入れた秋のブドウパフェやアフォガードなどもある。

コーヒーの香りに包まれた店内の、カウンター奥には100脚のカップが並び、間接照明が灯(とも)るうっとり落ち着いた風情だ。長い年月を思わせるが、開店は2014年。店主の新木信幸さんは、自身が通った喫茶店が閉じることを知り、ほぼそのまま引き継いだ。

自慢は、独学で焙煎を学んだコーヒー。「昔ながらの味を」と、ブラジルやコロンビア、グァテマラをブレンドし、丁寧にハンドドリップ。すすれば芳しい香りに心がほどけるよう。

客の目当ては他にも。「マンゴーパフェが食べたい」とのリクエストに応えたのが、マンゴーバナナパフェだ。マンゴーで咲かせたバラの花がゴージャス。グラスの中には果肉、ヨーグルトサワーアイス、ソフトがたっぷりで、レモンシロップのさっぱりした甘みが後を引く。パフェをつつきながら皆にんまり、頬をゆるめる姿も印象的だ。

太麺好きの新木さんが考案したマスターのまかないナポリタン850円。細麺のナポリタンも用意する。新木珈琲店のブレンドコーヒー490円。ドリンクセットは150円引き。
太麺好きの新木さんが考案したマスターのまかないナポリタン850円。細麺のナポリタンも用意する。新木珈琲店のブレンドコーヒー490円。ドリンクセットは150円引き。
自家焙煎の豆は販売も。
自家焙煎の豆は販売も。
ハンドドリップする新木さん。
ハンドドリップする新木さん。
デザート目当ての客でにぎわう。
デザート目当ての客でにぎわう。

『新木珈琲店』店舗詳細

住所:群馬県前橋市広瀬町3-2-7/営業時間:8:00~18:00LO/定休日:不定/アクセス:JR両毛線前橋駅から日本中央バス「ガーデン前橋」行き約20分の「鶴巻」下車3分

取材・文=林 さゆり 撮影=山出高士
『散歩の達人』2024年10月号より

小麦の産地である群馬県では、昔からまんじゅう文化が盛ん。なかでもまんじゅうを蒸して串に刺し、甘辛い味噌だれをつけて焼く「焼きまんじゅう」はこの街の名物だ。頬張れば、郷愁誘う景色が心に浮かぶ。
昔も今も前橋っ子にとっての最初の遊園地といえば、『るなぱあく』。2024年11月1日に古希を迎えたのに、色あせず愛されるのはなぜなのか?そこにはいろいろな驚きが詰まっていました。
前橋のピザが熱い! そんな噂を聞いたので出かけてみると、ピザを扱う店では、高崎パスタに追いつき追い越せと大奮戦中。2024年5月には「前橋をPIZZAの聖地に」を合言葉に、第6回キングオブピッツァも開催され、盛り上がりを見せているのだ。
小麦の栽培が盛んな群馬県では、古くから麦を使った郷土食が作られてきた。高崎市民も粉もの料理が大好き。焼きまんじゅう、おっきりこみ、水沢うどん……、枚挙にいとまがないが、その中でも特におすすめをご紹介。