建設現場ではさまざまな原因でヒューマンエラーが発生します。ヒューマンエラーを完全になくすことは難しくても、その原因を把握して対策を講じることで、できる限り減らすことは可能です。ここでは、ヒューマンエラーの原因を12に分類した「ヒューマンエラー12分類」とヒューマンエラーの防止対策について詳しく解説します。安全第一の建設現場環境づくりのためにも、ぜひ参考にしてください。
この記事はこんな読者におすすめ
- ヒューマンエラーについて知りたい
- ヒューマンエラー12分類について詳しく知りたい
- ヒューマンエラーの防止対策について知りたい
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目次
1. ヒューマンエラー12分類とは
人間の行動によって起こる意図しないミスや失敗のことを「ヒューマンエラー」といいます。建設現場での災害の多くは、被災者本人の不安全行動やルール・手順の無視などが起因するといわれています。「ヒューマンエラー12分類」とは、ヒューマンエラーの原因を12に分類したものです。人間である限りミスはするものですが、その原因を把握することで、ヒューマンエラーを減らす効果が期待できます。ここでは、「ヒューマンエラー12分類」のそれぞれの原因について詳しく解説します。
危険軽視・慣れ
業務や作業に慣れてきたときに起こりやすいヒューマンエラーです。たとえば、危険とわかっているのに、「作業には慣れているし、大丈夫だろう」と軽視して、高所で安全帯をつけずに作業をする行為などがこれにあたります。はじめのころは、注意を払いながら作業をしていても、現場に慣れ、作業を繰り返すうちに慣れが生じ、人的ミスにつながることがあります。現場の安全責任者は作業者に作業手順やルールを徹底するように指導することが大切です。
不注意
一つの作業への過度な集中や逆に注意散漫になると、周囲の状況に注意が行き届かなくなりヒューマンエラーを起こしやすくなります。周囲の作業者と声を掛け合い、お互いの行動に注意を払う必要があります。
無知・未経験・不慣れ
知識や経験が十分でないことから起こる人的ミスで、現場や作業に不慣れな新人に見られる傾向があります。また、熟練であっても、初めての現場や作業では適切な判断が難しいことがあるので注意が必要です。このようなミスを防ぐためには、新人教育の徹底や新人や未経験者が作業に慣れるまで経験者と共に行動するなどの対策が求められます。
近道・省略行動
効率性や生産性を優先して、決められた手順の省略や手抜きなどの不安全行動がヒューマンエラーにつながることがあります。ベテランになると作業への慣れが出てくるため、こうした近道・省略行動をとりやすくなります。作業の手順の順守を徹底するなど、従業員全体のコンプライアンス教育が重要です。
高齢者の心身機能低下
高齢になると筋力が低下し、平衡感覚や視力、記憶力なども衰えてきます。自身の心身機能が低下していることを自覚しないまま行動すると、ヒューマンエラーの原因になります。とくに高齢者の場合、ミスが死亡事故を引き起こすことがあるので注意が必要です。自身の身体機能の低下を自覚できるように、定期的に体力テストを実施するなどの対策が必要です。
錯覚
指示の聞き間違えや思い込み、見間違いなどで起こるのが錯覚によるヒューマンエラーです。たとえば、足場があると思い込んで踏み込んでしまい、高所から転落するといった惨事が挙げられます。現場の安全責任者の正確な指示や作業者自身の安全確認が必要です。
場面行動本能
場面行動本能とは、一つの物事に集中し過ぎて周囲が見えなくなり、状況をよく見ずに本能的に行動してしまうことです。たとえば、高所での作業中に物を落とし、思わず手を伸ばして取ろうとしたときに落下してしまうなどの例が挙げられます。どのような場面行動本能があるか、ヒヤリハット事例として作業員に共有することで、危険を意識できるようになります。
パニック
想定外のことが起こって慌てると、冷静な行動がとれなくなり、ヒューマンエラーにつながることがあります。パニックは、通常であれば間違えることがないミスや間違った判断を引き起こしやすく、とりわけ建設現場では大事故につながる可能性があります。パニックによるヒューマンエラーを防ぐためには、日頃からあらゆる事態を想定して冷静に判断できる準備が必要です。
連絡不足
作業者同士や管理者との連携が重要な建設現場において、情報伝達が十分になされていないとヒューマンエラーが発生しやすくなります。自分では伝えたつもりでも、相手には伝わっていなかったなどということはよくあるものです。連絡不足によるエラーを防ぐためには、連絡事項の共有を徹底する対策が必要です。
疲労
疲労が蓄積されると、注意力が散漫になり、頭が働かない、身体が思うように動かないといった不調が起こりやすく、大きな事故の原因になります。疲労感や不安感が強い人や睡眠に問題がある人は、そうでない人と比べてヒヤリハットのリスクが高いともいわれています。本人が自覚していなくても疲労が蓄積されていることがあるので注意が必要です。疲労によるヒューマンエラーを防ぐためには、作業者の適度な休息が肝心です。
単調作業による意識低下
人間は単調な作業を繰り返し続けると、意識が低下して集中力を欠き、ミスを起こしやすくなります。作業に対する慣れからくる不注意は、人の意識に起因しています。完全に避けるのは困難かもしれませんが、意識の低下によるミスが生じても事故につながりにくいように現場環境を安全に整えることも大切です。
集団欠陥
集団欠陥とは、現場の雰囲気のことです。工期が短くプレッシャーがかかっているときは、本来、安全第一でなくてはいけない建設現場で効率や生産性を追求してしまいがちです。そのため安全への配慮が欠けてしまい、ヒューマンエラーが発生しやすくなります。集団欠陥は組織全体の問題でもあるため、組織の意識改善が求められます。
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2. ヒューマンエラーの防止方法
ヒューマンエラーを防止するためには、「人間はミスをするものだ」という前提に立ち、安全対策を講じる必要があります。次に、建設業で必要なヒューマンエラー対策について説明します。
KY活動
「KY活動」とは、危険(K)を予知(Y)するトレーニングのことです。建設現場などの作業に潜在するリスクや事故の可能性を予想して、災害を未然に防ぐための対策を講じる活動を指します。どのような災害リスクがあるのか、組織全体で共有し、ミーティングや研修で確認します。
関連ページ:KY活動(危険予知活動)とは?その意味や具体的なKY活動のやり方について解説
ヒヤリハットの報告
ヒューマンエラーの防止策として、ヒヤリハットの報告書の作成も有効です。ヒヤリハットがどのような状況で、どのように起こったのかを作業者に共有します。同時に原因も考えることで、大きな事故を未然に防げる可能性があります。
指差呼称
ヒューマンエラーを減らすためには、定常作業を安全におこなうことが重要です。手順を省略することなく正しく作業を進めるためには、「指差呼称」が有効です。指差呼称をすると、何もしないときと比べて、作業のミスが大幅に減少することが研究からもわかっています。
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