フロー状態に入る7つのコツ|チクセントミハイの「フロー理論」をわかりやすく解説

フロー状態に入る7つのコツ

「フロー」の提唱者であるミハイ・チクセントミハイ(Mihaly Csikszentmihalyi)は、

「幸福」、「創造性」、「主観的な幸福状態」、「楽しみ」といった「ポジティブ心理学」を研究対象とする、米国クレアモント大学の心理学の研究者です。

彼の研究のオリジナリティは「フロー(Flow)」という心理状態にあります。

フローは、「時を忘れるくらい、完全に集中して対象に入り込んでいる精神的な状態」を指しています。

ですが、「完全に集中した状態」「幸福」がどうして繋がるのか、ちょっと不思議な感じがしませんか。

でもそこにはモチベーションに繋がる、大変大きな意味があるのです。

本記事では、ミハイ・チクセントミハイの「フロー理論」について解説していきます。

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「フロー状態」とは?

「フロー状態」とは何か

フロー状態とは、心理学で「時間が経つのを忘れるほど作業に没頭し、他のことが気にならなくなるような状態」のことです。

フロー(flow)とは「流れ」や「流動」という意味を持ち、フロー状態に入ると一つの流れに入ったような感覚が得られます。

すると、脳は課題に対する行動以外に意識を向けられなくなるのです。

「フロー」とチクセントミハイ

チクセントミハイは、第二次世界大戦後の荒廃した祖国ハンガリーで、人々が生きる希望を失う姿を目の当たりにした経験から、「生きる意味」と「幸福とは何か」という問いを持ち続けました[1]。

やがてアメリカに渡りシカゴ大学で研究を開始。芸術家や音楽家、科学者、スポーツ選手などを対象に、日常生活のどのような際に幸福を感じるのか、インタビュー調査を実施しました。

その結果、創造的活動や高度な技術を要する作業に没頭しているとき、人々は疲労を感じにくく、時間の経過も忘れ、持続的な満足感を得られることを発見。

この精神状態を「フロー」と名付けたのです。

これらの発見を科学的に実証するため、1日10回のランダムなタイミングで現在の活動と感情を記録する手法である、ESM法(Experience Sampling Method)の開発も行いました[2]。

チクセントミハイはその活動から、人間の生きがいについて科学的に研究する学問である「ポジティブ心理学」の父として知られています。

「フロー状態」のメリット

フロー状態になると、以下のようなメリットがあります。

  • 自己成長を促せる
  • 幸福感が持続する
  • ストレスが軽減される
  • 長期的に意欲を維持できる
  • 課題に対して楽しさを感じられる
  • 仕事へのエンゲージメントが高まる
  • 自意識が薄れることで創造性が高まる
  • 現在行っていることは達成ができるという自信が湧く

単に気持ちが安定して気分が良くなる以外にも、仕事や趣味においてスキルの向上を促せます。

 

「フロー理論」での8つのメンタルステート

さて、チクセントミハイは人間の精神状態(メンタルステートメント)を8つに分けて定義しました[3]

縦軸に「Challenging Level(挑戦の難易度)」を、横軸に「Skill Level(自分の能力)」を取ったときに、は図のようになります。

人間の精神状態(メンタルステートメント)の8つの定義

もし自分の能力が低い状態であれば、そこにいきなり難易度の高い仕事が与えられると「Anxiety(不安)」になるでしょう。

中くらいの難易度でも「Worry(心配)」な状態となります。

例えば大学の授業でちょっとプログラミングをかじっただけなのに、いきなり本格的なシステムの開発をお願いされたようなものだと考えれば良いでしょうか。

自分の手に負えるような気がしない仕事というのは「不安」や「心配」に支配されてしまうものです。

逆に、自分の能力に対して難易度が低い状態だと、「Relaxation(リラックス)」または「Control(制御または支配)」とされ、自分の成長には貢献せず、どちらかというと物足りないレベルになってしまいます。

つまり仕事でいうと、本来ならばもっとできるのに、与えられている仕事の内容の難易度が低くて、自分の能力を持て余している状態だといえます。

こういう場合、「もっと難易度の高い仕事をください」と言えない環境ですと、ダラダラと仕事をしてしまうような状態になり、その人にとっても企業にとっても良くない状態になりかねません。

最も良いのは「Flow(フロー)」で、次いで自身の成長を促す「Arousal(覚醒)」だとされています。

「フロー」は挑戦の難易度と能力が高いレベルにある状態で、「覚醒」は能力を獲得すれば「フロー」の域に達することのできる状態だといえます。

チクセントミハイは、ここは成長を実感でき、満足度の高い生活を送ることのできるゾーンだとしています。

一方、「Boredom(退屈)」「Apathy(無気力)」は、満足度が低い状態で、仕事にしても学習にしてもよくないということです。

少しでも能力を上げるために、その人にとっては少し難易度の高めの仕事を与えるなど、「覚醒」レベルに持って行けるよう調整をする必要があります。

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「フロー状態」に入る条件

チクセントミハイは書籍中で、フロー状態に入るには8つの条件があると説明しています。

ここからは、フロー状態に入る条件を紹介します。

目標を明確にする

フロー状態に入るために重要な要素は、目標を明確にすることです。

達成するべき理想像がわかっていると、自分がどれだけ目の前の仕事をこなせているかを理解しやすくなり、達成感を得られるからです。

達成したか否かを判断しやすくするため、定性的な目標よりも数字で表せるような定量的な目標を立てるようにしましょう。

挑戦と能力の釣り合いを保つ

取り組む課題があまりに簡単だと退屈してしまい、難しすぎると過度にストレスがかかってしまったり、途中で投げ出したくなったりしてしまいます。

そのような事態を避けてフロー状態に入るため、挑戦する対象は『頑張れば達成できる程度』のものにしましょう。

最初から大きな目標を立てず、小さな目標を立てて段階的に達成していくと無理なく挑戦できます。

即時にフィードバックを受ける

人は自分の行動が適切であると感じられることで、集中力を持続させられます。

フロー状態に入るために、常に自分が何に取り組めばよいのかをわかるようにし、即時にフィードバックを受けられる環境を整えましょう。

組織においては、設定した目標に対して定期的な達成具合のフィードバックを受けることで、行動の方向性が目標と合致していると判断できます。

活動へ集中する

一度フロー状態に入ってしまえば、脳は自然に雑念を排除します。

一方で、フロー状態に入りきれていない際には頭の中での考え事やスマートフォンやチャットの通知音などに邪魔されてしまい、集中力が欠けるときがあります。

そのような事態を避けるため、意識がいってしまう対象を視界から減らして活動へ集中できる環境を整えましょう。

自己意識を低下させる

フロー状態では活動への集中度合いが高くなると、自分が集中していることにさえ気付かなくなります。

このとき、「今何をしているか」と考えるのではなく、行動そのものに意識を向けることがポイントです。

余計な思考を排除して現在の活動に全神経を集中させることで、行動と意識を融合できます。

現在に重要さを感じる

フロー状態に入ると過去・未来が気にならなくなり、現在の作業や課題のみに集中できます。

活動に没入することで、通常の時間感覚が一時的に失われる「時間の歪み」が起こるからです。

フロー状態に入りやすくするためには目の前の作業に課題を設定し、活動に没入できる時間的・精神的な余裕を確保するようにしましょう。

自己コントロール感を持つ

フロー状態に入るには、自分が持っている能力で成功体験が得られるような活動をすることが重要です。

例えば企業で個人目標を設定する場合、その達成に向けた具体的な行動計画を立てることで、自分の進む方向性を把握できます。

これにより、活動の過程で不安を感じづらくなり、集中力を維持できます。

活動に価値を見いだす

単なる作業と捉えるのではなく、活動自体に価値を見いだすことで、フロー状態に入りやすくなります。

例えば、データ入力は単調な作業に感じられることがあるかもしれません。

しかし、それが組織の意思決定や業務効率化につながると考えれば、行っていることに意味を見い出せるでしょう。

長時間作業で「フロー状態」になるわけではない

時間の感覚を忘れ集中力が高まるフロー状態は、長時間作業と似ている概念に思えますが、本質的には異なっています。

フロー状態は、適度な課題レベルと能力のバランスが取れたときに生まれる最適な心理状態です。

活動自体に喜びや充実感を得られ、疲労感をあまり感じることなく集中力を維持できます。

一方で、長時間労働は単なる時間の経過を表し、必ずしも最適な心理状態をともないません。

締め切りや義務感など外発的な要因によって行う場合が多く、しばしば精神的・身体的な疲労をともないます。

フロー状態では自己コントロール感がありますが、長時間労働ではこれらの要素が欠如し、ただ時間や量に追われる形で作業を続ける点で異なっています。

重要なのは作業時間の長さではなく、その質と心理状態にあるため、可能な限りフロー状態で作業に取り組めるように環境や条件を整えるようにしましょう。

 

「フロー状態」を体験しながら、持続的な成長をしていこう

こう考えていくと、「フロー」とモチベーションは密接な関係にあることがわかります。

モチベーションが高ければ、「フロー」に入りやすいのです。

モチベーションには「外発的動機付け」「内発的動機付け」の2つがあります。ここでは内発的動機付けに面から考えてみましょう。

例えばハーズバーグの提唱した「動機づけ・衛生理論」[5]では、不満要因(衛生要因)を取りのぞいても満足感には繋がらず、むしろ動機づけ要因にアプローチしなければならないとされています。

「自分の好きなことをやっているか」

「仕事を通して、自分の考えや発想を表現できているか」

「主導権を持って仕事に取り組めているか」

などが、重要だということです。

これらが満たされていると内発的動機付けがされている状態ですから、「フロー」に入る状態をうまく追加することができれば、良いことになります。

とは言いながら、チクセントミハイも、現在の平均的な労働者はフロー体験をしにくいだろうと述べています。

その理由として

「今日の仕事には明確な目標がほとんどない」

「適切なフィードバックがめったになされない」

「スキルが機会にうまく適合していない」

などを挙げています[6]

実際に、企業では上記のような状態になっていることが多いため、個人で何とかするのには限度があるでしょう。

チクセントミハイも「組織としてフローを実現する環境を整える必要がある」と考えていて、経営者はチームリーダーに権限を委譲し、権限を譲られたリーダーはメンバーに対し「目標を明確にし」「適切なフィードバックを行い」「スキルを適合させる」しかけを作らないといけないとしています。

モチベーションには動機付けももちろん重要なのですが、少なくとも「フロー」状態に入る仕掛けを企業が上手く講じることができれば、その組織・企業は持続的に「フロー」を生み出し、成長することができるようになるでしょう。

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参照

[1] “ミハイ・チクセントミハイ:フローについて” TED 2004. https://www.ted.com/talks/mihaly_csikszentmihalyi_on_flow?language=ja
[2] “ポジティブ心理学入門” 島井哲志著 星和書店、 2009年
[3] “Finding Flow” Mihaly Csikszentmihalyi(1997)「フロー体験入門―楽しみと創造の心理学」大森弘訳 世界思想社、 2010年
[4] “Creativity, Flow and the psychology of discovery and invention” , Mihaly Csikszentmihalyi(1996),  「クリエイティヴィティ―フロー体験と創造性の心理学」浅川希洋志監訳 世界思想社、 2016年
[5] “Work and the Nature of Man “ Frederick Herzberg (1966), 「仕事と人間性動機づけ-衛生理論の新展開」北野利信訳 東洋経済新報社、1968年
[6] “Good Business: Leadership, Flow, and the Making of Meaning” Mihaly Csikszentmihalyi(2003), (日本語訳「フロー体験とグッドビジネス―仕事と生きがい」大森弘訳 世界思想社、 2008年

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