社員が退職する際には、さまざまな理由があります。
ただ、上司や同僚に話す退職理由は「建前」で、本当の退職理由は隠されているケースが少なくありません。
本当の退職理由は本人にしかわからないからこそ、退職を考えるときに「みんなはどういった理由で退職をしているんだろう」と気になったり、部下が退職した際に「どうして退職してしまったのだろう」と悩んだりする人も少なくないはずです。
そこで今回の記事では、退職理由にどういったものがあるのか「本音」と「建前」の両方の理由を解説します。
社員の退職を防ぐための離職防止策も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
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目次
退職・離職理由の「本音」ランキングトップ10
それではまず本音の退職理由ランキングを見ていきましょう。
具体的には
- 給与が低い
- 労働時間や労働環境などの条件が悪い
- 職場の人間関係が良くなかった
- 会社の安定性や将来性に不安がある
- 仕事の内容にやりがいを感じない
- 健康を害してしまった
- 仕事に対する自信を失ってしまった
- ノルマが重すぎる
- キャリアアップしたい
- 結婚・出産のため
となっています。
1位:給与が低い
最も多い退職理由は「給与が低い」でした。
給与は人間の生活レベルに関わるとても重要な要素です。
懸命に働いているのに給料が上がらなかったり、他と比べて著しく低かったりすると、仕事のモチベーションが上がらなくなり、最終的には退職につながっていきます。
2位:労働時間や労働環境などの条件が悪い
給与の次に多かったのが、「労働時間や労働環境などの条件が悪い」という理由でした。
例えば昨今は長時間労働が社会問題になっており、過労で倒れてしまう人も増えています。
その中で「心身が疲弊してしまうまで働くのは馬鹿らしい」と感じるようになった人が、退職を決意しているのです。
3位:職場の人間関係が良くなかった
職場の人間関係が良くなかったというのも、退職理由としてよく挙げられるものです。
特に上司との関係が悪いと、どうしても仕事のモチベーションが上がらなくなってしまい、会社に行くのが億劫になってしまいます。
また真面目な人は人間関係で思い詰めてしまい、うつ病になってしまうこともあります。
職場内でのいじめや、「誰と誰が仲が悪い」など、人間関係のトラブルを挙げてみればキリがありません。
4位:会社の安定性や将来性に不安がある
次に多かったのが「会社の安定性や将来性に不安がある」というものです。特に現代は不確実性の時代であり、「次に何が起こるのかがまったくわからない」ものです。
急速に発達するAIや、自然災害など、さまざまな不確定要素が将来への不安を生み出しています。
その中で社員たちは「この会社は大丈夫だろうか?」、ひいては「この業界は大丈夫なのだろうか」と考えるようになり、不安が最大量に達した時、そのまま退職を決意します。
「少しでも安定した会社や業界へ」というのは、現代人の生存戦略なのです。
5位:仕事の内容にやりがいを感じない
「仕事のやりがい」は、働くにあたってとても重要なことです。
辛いことがあっても、「やりがい」を感じられれば仕事を続けていける一方で、やりがいがなければ、退職を考えるきっかけになるでしょう。
特に給与面などのほかの条件が良くない場合は尚更で、「労働環境も悪くやりがいも感じないのだから、ここにいる意味はない」という結論になります。
6位:健康を害してしまった
長時間労働やストレスの蓄積により、心身の健康を損なって退職を選ぶケースが多く見られます。
特に精神的な疲労から「心の病」を発症する人も少なくありません。
過度な業務負担や職場環境の悪化が原因となることが多く、自己防衛のための退職を選択する従業員が増加しています。
企業側も従業員の健康管理に注力し、ワークライフバランスの改善や適切な労働時間管理が求められています。
7位:仕事に対する自信を失ってしまった
業務が複雑であったり責任が大きかったりした場合に、仕事がうまくいかず自信を喪失して退職を選ぶ人もいます。
特に新入社員や中堅社員にこの傾向が強く見られ、適切な教育・研修の不足や、過度なプレッシャーや失敗に対する厳しい評価などが要因です。
従業員のスキルアップ支援や、失敗を恐れずチャレンジできる環境づくりが起業には求められます。
8位:ノルマが重すぎる
過度なノルマ設定は、従業員のストレスや疲労の原因のひとつです。
特に営業職や製造業で顕著に見られる傾向があり、達成困難な目標設定やノルマ未達成時の厳しいペナルティが、従業員の精神的負担を増大させています。
企業は現実的かつ達成可能なノルマ設定を心がけ、個々の従業員の能力や経験を考慮した柔軟な対応が欠かせません。
また、ノルマ達成のためのサポート体制の整備も重要です。
9位:キャリアアップしたい
自身のスキルや経験を活かせる新たな機会を求めて、退職を選択する人も少なくありません。
現在の職場での成長機会の不足や、キャリアパスの不明確さが主な要因です。
企業は従業員のキャリア開発支援や、社内での成長機会の提供に注力する必要があります。
また、定期的なキャリア面談や、スキルアップのための研修制度の充実も離職防止に効果的です。
10位:結婚・出産のため
結婚や出産などのライフステージの変化に伴い、仕事と私生活の両立が困難になることが退職理由になる場合も。
長時間労働や柔軟性の低い勤務体系が、家庭生活との両立を難しくしています。
企業は育児休業制度の充実や、フレックスタイム制度の導入など、ワークライフバランスを支援する制度の整備が求められます。
また、復職支援プログラムの提供も有効です。
退職理由「建前」ランキングトップ5
それでは次に退職理由の「建前」ランキングについて見ていきましょう。
具体的には
- キャリアアップしたかった
- 仕事内容が面白くなかった
- 労働時間・環境が不満だった
- 会社の経営方針・経営状況が変化した
- 給与が低かった
となっています。
先ほど見てきたものはまさに「本音」の退職理由ランキングでしたが、こちらの退職理由はいわゆる「建前」として使用されやすいものになっています。
建前とは言っても本音の退職理由とかけ離れているわけではなく、退職の一因となり得るものです。本音ランキングとの違いも含めて確認していきましょう。
1位:キャリアアップしたかった
建前の退職理由として1番多いのが「キャリアアップしたかった」というものです。
日本は一応終身雇用を前提としていますが、昨今ではそれも崩れ去りつつあり、「会社から会社へと渡って行きキャリアアップをしていく」流れが散見されます。
1つの会社に長く勤めていると、その会社の悪いところが見えてきて、「ここではこれ以上のキャリアアップは望めない」と気づくことがあります。
そうした時に、より条件の良いところへ転職するパターンが多く、建前として使われやすい理由となっています。
2位:仕事内容が面白くなかった
建前ランキングの2位には、「仕事内容が面白くなかった」と言う項目がランクインしています。
仕事が楽しいと感じられれば、多少給料が低かったり、労働条件が悪かったとしても、仕事を続けていくことができます。
はじめは熱心にやっていたことも、ルーティン化すると新鮮味がなくなってしまい、やがて仕事内容に面白みを感じなくなってしまいます。
そうなれば「他に面白い仕事を探してみよう」という結論に至り、退職を決意することになるのです。
3位:労働時間・環境が不満だった
本音ランキングでは2位にランクインしていた「労働時間・環境が不満だった」という項目が、こちらでも3位にランクインしています。
労働時間・環境の不満は、事あるごとに感じるものなので、だんだんと社員の中に蓄積していきます。
そしてささいなことがきっかけで、ぷつりと糸が切れたように「退職しよう」という結論に至るのです。
やはり労働時間・環境は「労働者にとってとても重要な要素」ということがよく分かるでしょう。
4位:会社の経営方針・経営状況が変化した
次に多かったのが「会社の経営方針・経営状況が変化した」というものです。
特に小さな会社などは、社長が2代目になると、それまでとはまったく違う方向に転換することがあります。
また、現代はめまぐるしく移り変わっていきますから、時世に合わせて舵取りを変えていく必要があります。
このような経営方針の変化に耐え切れず、会社を辞めてしまうというパターンです。
5位:給与が低かった
本音ランキングでは1位だった「給与面」ですが、建前ランキングでも5位にランクインしています。
やはり何だかんだ言っても「給与面」はとても重要で、社員のモチベーションの多くを占めていると言っても過言ではありません。
退職理由にはこんな声も
ランキングには入りませんでしたが、その他にも注目すべき退職理由はたくさんあります。
具体的には
- 上司や経営者の仕事のやり方が気に入らなかった
- 社風が合わなかった
- 社長がワンマンだった
- 昇進・評価が不満だった
の4点です。
上司や経営者の仕事のやり方が気に入らなかった
上司や経営者の仕事のやり方が気に入らなかったと言う退職理由もあります。
特に小さな会社などでは、経営者の仕事のやり方が、ダイレクトに従業員にも伝わりやすい環境です。
その中で経営者の仕事のやり方に疑問を持ったり、上司のパフォーマンスに共感できないという体験が積み重なってくると、「ここは退職してしまおう」という結論に至ります。
社風が合わなかった
「社風が合わなかった」という退職理由もあります。例えば「静かで落ち着いた職場」もあれば、「ガッツリ体育会系」という職場もあります。
もちろんそうしたミスマッチを避けるべく、インターンシップなどが設けられていたり、面接で事細かに確認したりすることがありますが、「どうしても社風になじめなかった」という事例は多いです。
特に内気な人が体育会系の職場に入ったときの負担が大きく、そうなった時は「社風にどうしても馴染めないから退職しよう」という考えになります。
社長がワンマンだった
社長がワンマンだったと言うことも退職理由としてよく挙げられます。
もちろんワンマン社長であることは、入社する前からわかっているのですが、「ワンマン社長の下で働くのはどういうことか」というのは、実際に働いてみなければよく分かりません。
しばらくワンマン社長の下で働き、「どうしてもワンマン社長の横暴に耐えられない」と退職するパターンが多いです。
昇進・評価が不満だった
自分が適切に評価されていないと感じたとき、人は退職を決意することがあります。
未だに「上司の好き嫌い」で昇進・評価が決められている会社というのは事実として存在するため、そこに不満を募らせ、退職を決意するというケースです。
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退職理由のきっかけになる出来事
職場では退職を考えるきっかけとなるさまざまなトラブルがあります。
ここではそのトラブルについて見ていきましょう。
サービス残業など残業代の未払いがある
はじめにことわっておくと、「残業代を支払わない」というのはれっきとした法律違反です。
しかしながら日本では、サービス残業をはじめとして、残業代が支払われない労働がまかり通っています。
残業を多くこなせばこなすほど、給与もそれに応じて増加していくべきです。
しかしながらサービス残業をさせる会社は、社員を使い潰すだけ使い潰して、まったく残業代を支払おうとしません。
当然そうなれば社員側のモチベーションは低下していき、挙句の果てに「退職しよう」と考えるようになります。
人員不足による業務過多
環境の良くない職場は従業員が定着しないので、常に人員不足に陥っています。
当然その負担は現場の人間に集中し、いわゆる「業務過多」の状態に。
ひどいところでは長時間労働が当たり前になり、さらには残業代も支払われないという始末です。
昨今ブラック企業が社会問題になっており、過労で倒れてしまう人も増加しています。
普段からそういうニュースを見ていれば、尚更「悪い環境の中で頑張ることはやめよう」という気持ちになるでしょう。
このように、「人員不足による業務過多」は、退職を考えるきっかけとなるトラブルの筆頭です。
退職理由から考える離職防止策
ここまで退職理由について確認していきました。
それでは最後に、退職を防ぐためにできることについて見ていきましょう。
具体的には
- 待遇を見直す
- 労働環境見直す
- 社内のコミュニケーションを見直す
の3点です。
待遇を見直す
社員は「給与」などの待遇面で退職を決意することが多いです。
「給与が低すぎないか」ということを軸に、全体的な待遇を見直してみましょう。
もちろん待遇というのは給与だけではありません。
休日が少なく、仕事とプライベートが両立できないため退職を決めた、というケースも多いため、休日・休暇が適切かも考え直しましょう。
たとえば、有給休暇をしっかり消化できるような環境が整っていれば、社員もそう簡単には退職をしなくなるでしょう。
労働環境を見直す
待遇面を見直したら、次は労働環境をしっかりと整理しましょう。
具体的には「社員への業務過多が起こっていないか」、「しっかりと残業代は払っているか」など、基本的なところから確認していきましょう。
特にサービス残業などは問題外です。
ひとたび労働環境を見直すだけでも、社員のモチベーションやパフォーマンスはまったく変わってきます。
事前に匿名の目安箱などを設置し、社員から意見を募っても良いでしょう。
管理側からは見えない、現場の実情が理解できるようになります。
社内のコミュニケーションを見直す
職場の人間関係は、普段の社内でのコミュニケーションを基本に作られていきます。
コミュニケーションには量と質がありますが、まずは量を追求してみましょう。
ミーティングの際にちょっとしたミニゲームをしてみたり、お昼を一緒に食べてみたり、和気藹々とした空気を作っていきます。
そこからコミュニケーションの質を上げていくことによって、職場の人間関係を活発化させることができます。
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【まとめ】退職理由には「本音」と「建前」がある。理由を分析して対策を
入社前はどうしても企業の隅々をチェックすることができず、また企業も志望者を細かく分析することができません。
「実際に入ってみたら社風が合わなかった」ということはよくあるでしょう。
それゆえ、ある程度のミスマッチは致し方ないと言えます。
しかしながら「社内のコミュニケーション」や「労働環境」など、あらかじめ防ぐことのできるトラブルは多くあります。
退職理由をしっかりと分析し、社員にとって居心地の良い環境作りに努めていきましょう。