コンサルティングサービスと
医療情報統合プラットフォームが医療DXを支援
次に登壇したデロイト トーマツ コンサルティング の北原雄高氏と宮越弘樹氏が、HospitalLakeを含む医療機関の変革、DXを総合的に支援するHospital Managed Serviceを紹介した。
医療機関における変革の難しさの要因としては、全体変革を起こすためのリソース不足が挙げられると北原氏は指摘。多くの医療機関ではCIO(最高情報責任者)が不在であり、組織としてのIT構想が存在しない、財務戦略とIT投資の分断、部門や職種をまたがるガバナンス不在、業務プロセス変革やチェンジマネジメントの専門家の不在といった課題である。変革を支援するコンサルティングファームも、構想プランニングは行うものの実現手段を持っていないと指摘されることがあったという。また、ソリューションが多様化・変化する中でテクノロジーの見極めが難しく、複数のソリューションを統合するプレイヤーが不在という問題もある。「こうした課題に対する我々のアプローチが、Hospital Managed Serviceです」(北原氏)
このHospital Managed Serviceを通じて同社が提供する価値は、次の4点だとした。
- ①サービスとテクノロジーの融合によって、従来のコンサルティングファームでは難しかった「実現・運用」まで伴走
- ②ソリューションありきではなく、病院が実現したい姿を基に病院主導の変革プロジェクトを推進
- ③システム間連携、情報連携・統合を実現するHospitalLakeによって迅速かつ柔軟なソリューション実装を支援し、医療機関のワークフロー変革を実行
- ④HospitalLakeを軸に様々なソリューションプロバイダーとのテクノロジーエコシステムを構築
医療機関のパートナーとして、変革を実現するために必要なサービス群を、Hospital Managed Serviceとして提供
具体的なコンサルティングサービスとして、医療DX構想策定、CIOなどの人材育成・派遣、財務・資金調達計画支援といった戦略・経営資源領域、実際のワークフロー再構築、データマネジメント、サイバーセキュリティなどの運用領域の支援を行う。それにInterSystems IRIS for Health™とHospitalLakeによる情報統合基盤、その基盤上で運用するDX推進のためのアプリケーション群を統合したパッケージとして提供していくという。
「DXを推進する上で何をテーマに取り組むのか、限られた財務資源をどこに投下するのかというのは重要な視点です。医療機関のパートナーとしてビジョンとゴールを共有しながら、注力テーマを絞り込み、段階的に取り組んでいきます。変革をイメージしながら、理想のワークフローをデザインし、実現に向けたITグランドデザインからソリューションの導入・構築、運用までを一貫して支援します」(北原氏)
新しいワークフローから解決策をデザインする工程において重要な点は、「その順序を間違えないこと」と指摘する。医療現場では様々な職種が関係していることから、問題意識が統一されていないケースがある。職種間で何がプロセス上の問題なのか、目指すべきゴールは何かといったところを共有し、共通理解の上で解決策を検討することが重要とし、「一見遠回りに思えるアプローチが、DXにおいて非常に重要だと考えています」と述べた。
こうしてデザインされた新たなワークフローや分析ソリューションを構築・運用する際の基盤となるのが、クラウド上に構築されるHospitalLakeである。同プラットフォーム開発の背景には、業務変革・効率化のための様々なソリューションが多くのベンダーから提供されている。そのため、導入において電子カルテや部門システムなどと効果的に連携する難しさがある。「ソリューションの導入検討が長期化したり、導入コストが膨らんだりして思い描いたワークフローを実現できない場合があります。また、導入するアプリケーションのデータの断片化が発生して利活用が進まないといった問題もあります」(宮越氏)と指摘。そうした課題に対してHospitalLakeは、病院情報システムと変革のためのソリューションの連携・統合、データの連携・統合を果たす役割があると説明した。
クラウド情報統合基盤であるHospitalLakeは、(1)API連携基盤、(2)統合データ基盤、(3)管理機能で構成されている。電子カルテや部門システムなどの各システムとソリューションをリアルタイムに連携・統合(API連携基盤)、様々なデータを収集し、正規化されたデータモデルで蓄積(統合データ基盤)、継続的な変革や改善に必要なAPIやデータを管理するといった機能要素である。
実際の運用上の特徴としては、デトロイト トーマツのクラウド環境に構築されたHospitalLakeを同社のプラットフォーム管理チームがすべて管理するサービスが付随していること。「最新技術やセキュリティ対応などの業務を我々のチームが担い、医療機関はソリューションを活用したワークフロー改革に注力できるよう役割分担を提案していきます」(宮越氏)。また、HospitalLakeでは各ベンダーから提供される専門的なソリューションをAPI連携やデータ連携統合でき、医療機関にとっては個別にソリューションを導入する際のハードルを下げることが可能な点が挙げられる。
最後に宮越氏は、Hospital Managed ServiceとHospitalLakeは現在初期バージョンであり、今後ソリューションの機能を含め充実・進化させると述べ、「AI技術の活用においてデロイトグローバルでは様々な取り組みがなされており、今後HospitalLakeへの実装も計画しております」とした。さらなる進化にも期待が集まる。