ジュエリーと本格機械式の双方が堪能できる

機械式時計は男のもの、という認識も今は昔。昨今は女性の間でも機械式時計をたしなむカルチャーが浸透してきた。機械式とクオーツ式にはそれぞれにメリットがあるが、高級時計といえば機械式という考えはいまだ根強い。数百のパーツを丁寧に磨き上げ、それらを手作業で組み上げるウォッチメーカーの技は現代の人々をも魅了し続けている。

これまでに何本かの腕時計を所有し、「そろそろ本格機械式を」「長く使える名品を」と考えるパートナーに薦めるのであれば、やはり選ぶべきブランドは老舗に限る。その筆頭に挙がるのがスイス・ジュネーブのヴァシュロン・コンスタンタンである。

このメゾンは、2025年に創業270周年を迎えるスイス最古参の老舗であり、その歴史の長さ故にメゾンに蓄積されたメカニズムやデザインの技は並々ならないものがある。シンプルウォッチから複雑時計まで、スポーティーからドレッシーまで、そしてメンズからレディースまで、どんな時計を作らせても“これぞ高級時計”というべき卓越した気品を有しているのである。

そのヴァシュロン・コンスタンタンが、現代の女性に向けて2020年にリリースしたのが「エジュリー」コレクションである。今回は数あるモデルから月相表示がついた「エジュリー・ムーンフェイズ」をセレクトした。

エジュリー・ムーンフェイズ(左)、パトリモニー・エクストラフラット・パーペチュアルカレンダー
(左)一見オーソドックス、その実オリジナリティーにあふれる「エジュリー・ムーンフェイズ」。18Kピンクゴールドケース。ケース径37mm。自動巻き。3気圧防水。アリゲーターストラップ(ピンクとライトブラウンのストラップが付属)。585万2000円 (右)薄型の永久カレンダーキャリバーを搭載し、ジュネーブ・シールを取得した「パトリモニー・エクストラフラット・パーペチュアルカレンダー」。18Kピンクゴールドケース。ケース径41mm。自動巻き。3気圧防水。アリゲーターストラップ。1416万8000円(共に税込み)
文字盤
エジュリー・ムーンフェイズの1時位置から2時位置にかけて置かれたインダイヤルの外周には、36個のラウンドカット・ダイヤモンドをセット。ムーンフェイズの雲には、複雑なフォルムにカットしたマザー・オブ・パールを用いた。リュウズは1時半の位置に設置し、リュウズトップにはカボションカットのムーンストーンをセット
文字盤
ダイヤルセンターから放射状に伸びるプリーツ状の装飾も、エジュリーを織り成すシグネチャーの一つ。一般的なギヨシェ装飾よりも彫りが深く、一段と印象的な陰影を生む

エジュリーのケースは、緩やかに湾曲したラグを備えたオーソドックスなラウンドフォルム。だが、ダイヤルの意匠に目を向ければ、1時から2時位置に置かれたインダイヤルやダイヤル中央から放射状に広がるプリーツ模様の装飾、流麗な針やインデックス……と、随所にエレガントな独創性を宿している。

そして今回取り上げたモデルは、インダイヤルの外周部分とベゼルにラウンドカット・ダイヤモンドをセットし、ムーンフェイズの雲の部分にはマザー・オブ・パールを採用。内部には美しい装飾が施された自動巻きムーブメントを備え、宝飾品と本格機械式の魅力を併せ持つモデルとなっている。本物志向の女性に薦めるゆえんである。

このエジュリーに組み合わせた男性向けの時計が、「パトリモニー・エクストラフラット・パーペチュアルカレンダー」だ。複雑機構の永久カレンダーを搭載したモデルであり、その最大の特徴は薄さにある。月、日付、曜日、そしてうるう年まで多くの表示を備えながら、ケースの厚みが8.91mmまで抑えられている。薄型の魅力はエレガンスに他ならない。複雑時計でも上品さを欠かさないのは老舗の面目躍如だ。

裏面
パトリモニー・エクストラフラット・パーペチュアルカレンダーの裏面にのぞくのは、ヴァシュロン・コンスタンタンが得意とする薄型の永久カレンダーキャリバー。ムーブメントの厚みはわずか4.05mm。自動巻きローターにはメゾンのシンボルであるマルタ十字があしらわれている

最後に、今回女性向けに取り上げたエジュリー・ムーンフェイズは、写真とは別のカラーのストラップが2本付属し、それら3本を工具不要で付け替えることができる。2人で過ごす時間は色を合わせ、互いの時間を楽しむシーンでは自由に選ぶ、なんていう使い方も気が利いている。ユーザビリティーの面でも老舗の懐は深い。

問い合わせ情報

問い合わせ情報

ヴァシュロン・コンスタンタン
TEL:0120‐63‐1755


photograph:Kazuteru Takahashi
edit & text:d・e・w