次があるかないかの瀬戸際。 : 手打ちそば長幸

北松戸駅近くの上本郷エリアに用事があり、前から行こう行こうと思ってたそば屋「長幸」に行くチャンスが到来。

11時過ぎにあらかじめ電話で営業を確認しておく。
「はい、ながゆきでーす」とご主人らしき男性の声。
今日は通常営業であることが確認できた。
ただ、「ちょうこう」だと何年も思ってたのに、「ながゆき」だったことに意表を突かれた気持ち。

雨天で客は少ないだろうと見込み、12時台のど真ん中に入店。
やはり客は少ない、というか1人もいない。

店の奥から「いらっしゃいませー」に続けて「指の消毒お願いしまーす」という声が届く。
その声に従って消毒してから靴を脱いで上がる。
全席小上がりで、和の風情がまさにそば屋といった感じ。

「お好きなお席にどうぞ」と出てきた店員さんは、店主のお母さんのような雰囲気。
違うかもしれないけど、なんとなくそう思い込む。

手前がテーブル席で奥が座敷席。
落ち着きそうな奥の4人掛けの席につく。

注文は、この店の看板商品の十割そばにするか、1日7食限定の「天丼ランチ」（1,000円）にするかで迷う。
天丼ランチのそばは十割じゃなくて二八になっちゃうけど、結局、圧倒的なお得感には逆らえなかった。

「すみませーん」と何度か大きめの声を出して店員さんを呼ぶ。
客1人を相手に反応が鈍いと感じながらも、そこは目をつむって注文する。
もちろん、そばは冷たいやつで。
すぐに「天丼もりでお願いしまーす」と奥の厨房に注文が通る。

扇風機が回る音だけが聞こえる静かな環境で待つことちょうど10分。
配膳された一式を見ると、なかなか賑やかな印象。

まずは味噌汁から。
具材は焼き麩、わかめ、ネギで、軽めに煮て食感を残すタイプ。
まずまずおいしい。

そばは二八とはいえ、たしかに黒っぽくて不ぞろいで田舎そばらしさを感じさせる。
見た目の太さもさることながら、味も野太い。
喉越しもそれなりにあって普通においしいけど、切れやすくて食べづらいのが難。
それも田舎そばの魅力と割り切って食べる。

複数の節を使ったという自家製のつゆは、田舎そばと対をなすようなしっかりとした味わい。
そばとの相性はいいかもしれない。

天丼は、大葉、かぼちゃ、なす、海老と4種の天ぷらがのって、どれもサクサクでおいしい。
ただ、たれがご飯のほうに偏ってるのか、味付けに少し物足りなさがある。

切り干し大根や浅めに漬かったぬか漬けは、安定感のある仕事ぶり。

普通の豆腐かと思って口にしたのは、そば豆腐。
これがまったりと濃厚な味わいでけっこう好きだ。

盛りだくさんのおかずをバランスよく食べ進めて、残すは小さなグラスに入ったデザートだけ。
何のデザートかと思い、店員さんに聞いてみると、牛乳を使ってるとのこと。
よくわからないから、これはもう実食するしかない。

ここでデザートに合わせるための「コーヒー」（100円）を追加注文する。

思ったよりも時間がかかり、5、6分で運ばれてきた。
一口すすると、苦味、酸味ともに控えめだけど、それなりにおいしい。

牛乳のデザートを食べてみる。
ん？
これは、ここでストレートに表現するのがためらわれる。
作る工程のどこかでしばらく放置されたのかもしれない。
そう思わせる味。
本当にこの味を目指してたんだろうか。

砂糖と黒すりごまを合わせて風味付けする意図は感じられるけど、スプーンを入れるとすぐに崩れるほどまとまりがない。
ババロアにしては軟弱だし、完成形は一体なんだろう。
それが一向に見えてこない。

早々に食べ切り、コーヒーに集中する。
わりとあっさりしてるから、デザートなしで飲むにはちょうどいい。

客は後から2組来たけど、15分に1組のペースというのは、30席ほどある店にしてはちょっと寂しい。

それにしても、この店の特徴はなんと言っても、店主の熱がこもった手書きの掲示物だろう。
けっして上手いとは言えない字と、飾らない言葉で綴られたメッセージには好感が持てる。
以前、自宅にこの店の黄色いチラシがよく届いてたけど、そのときに見た字体は今も健在のようだ。

ちなみに、店の公式LINEアカウントを登録するとサービスがあるらしく、さっそく登録してみたところ、そば団子1串のサービスだった。
今日は使えずじまい。
有効期間は120日あるから、また今度使えばいいか。

会計は、食べログクーポンで100円引き。
注文が700円以上であれば期間中何度でも使えるようだから、これは絶対に使ったほうがいい。

ついでにもう1つ言うと、メニューでは二八と十割のどちらにも「田舎そば」という言葉が使われてるのに対して、店員さんは十割だけを「田舎そば」と呼んでるようで、注文時には注意が必要。
本来はどちらも「田舎そば」と呼べるはずだけど、言い争うほどのことでもないから、今日のところはスルーしてやり過ごした。

素朴なチラシの印象から、一見客を取り込むような温もりを感じる店をイメージしてたけど、いざ訪問するとそうでもなかった。
いや、今回はたまたまかもしれない。
こういう店の判断は難しい。
十割そばを求める気持ちが再燃するまで、セカンドチャンスを気長に待つとしよう。

[2021.9.3訪問]