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銀座シシリア/ゴッドファーザー PART Ⅳ
土日休みの生活ももう二十年近くともなれば、たまの平日の休暇というのもどこか後ろめたく、且つそこにいかがわしさのようなものがそこはかとなく加われば、堂々と前を向くことができない自分に気づいてふと気恥ずかしくなる、というくらいで人間はちょうど良いと思う。
前日に休暇願いを出してから翌日、つまりは今日の雨天の予報にshockを受けたってあとの祭り。
しかし濡れて黒光る路面を残したままの銀座の街は幸い、もう雲の切れ間から陽が届けられるくらいになっていた
<R5.1.24>
「銀座シシリア」
私が家族を皆殺しにされてシチリアを捨てなければならなくなったとき、見知らぬ大人たちに混じって何日も小舟に揺られ、ようやく霞んで見えてきた岸に近づくにつれ、そこに立ってウルトラマンの変身ポーズをとる女性がどんどん巨人化してきてついに見下ろされたときには、これが無限の可能性を湛えた自由の国か ! と心底驚愕したものだが、これといって伝手(つて)を持たぬ私が当座始めたことといえば、けっきょく絨毯泥棒なんていうケチなしのぎだった ……
【中略】
その後構えた一家を息子マイケルに譲り、故郷の“島”の幻影を追い求めて極東の島にたどりついてみたものの、そこで一番大きな本州という島はしかし、故郷のシチリアの面影を求めるには、些か大き過ぎたよう。
それがメルカトル図法に依るトリックで、EU先進各国の上に同緯度で重ねて見たとき、この島国が実はかなりの大国であったということに気付いたのは、最近になってのこと。
しかし慣れぬ文化にとまどっていた私が、故郷の地図を看板に掲げるその名も「シシリア」というRestaurantを最初に見つけたときには、ずいぶんと心が躍ったものだ
“ナポリタン” @700
“グリーンサラダ” @650
〆て1,350円也。
せっかく久々の故郷に帰ってきたというのに、伝統的ナポリ料理を注文してしまう。
ぼくの好きなミネストローネを、スパゲッティと込みで2,000円弱くらい支払ってやることを内心覚悟していたが、ランチメニュウの中には見つからなく、またグランドメニュウも用意されていなかった。
しかし初めて見た平日メニュウの中のスパゲッティがやけに安価で、スープの代わりに、私がこちらに伺う旅にフロアに飛び交うspecialなサラダを見つけてしまったら、それをやっても大したことないじゃないか、と、つい気分がデカくなってしまって ……
久々に訪れたものだから感覚を忘れていて大盛りにするかどうか迷い、しかしサラダのボリウムも不明ということで躊躇した、その“レギュラーサイズ”のスパゲッティのこれまた大盛りなこと !
あとから私の隣のテーブルに着いてきた、界隈の同僚と思しき男子三人組のうちの二人までが大盛りとやっていたのだが、それも100円増しとあり、これってあら ? そこらへんで見かける大盛りを売りにしたスパゲッティ屋さん、ロメスパって言うんですか ? そっち系とかなり近い世界にいるんじゃない ? と、何か不思議な気持ちに包まれる。
そして夢にまで見たキュウリのドーム型のサラダは !
―― これって中身、レタスだけだったんぢゃない ! 中身がもっと凝っているのかと思いきや、非常にsimpleであったことに、ぼくとしてはちょっと拍子抜けしちゃったかな ……
「つばめグリル」さんの“ファルシーサラダ”と言っただろうか。
あれはトマト丸々に見せかけて、中に、なんていうのか分かんないけどマヨネーズだったかな ? でやったコールスローみたいなのを詰めてるでしょ。そ~ゆ~ギミックが必ず織り込まれているはずだとし感じてたからね。
(それが「つばめグリル」さんの標準仕様だとすると、ぼくの好みで言うと、もっとトマトは大きくくり抜いちゃって、中身を余計に詰め込んで欲しいところなんですけど)
満を持し ! 食べても食べても鮮烈なRossoをキープし続けるナポリに、粉チーズを粉雪のように振らせていく !
向こうの(向こうのってどっちだよ !)「イタリー亭」さんは粉チーズ別売りで、こちらは、ホリディ価格であれば粉チーズくらい付いていて欲しいという気持ちにもさせられるが、平日ランチ単品価格700円というのを見せつけられる中でのそれは、申し訳ない気持ちになると言っても、もう華厳滝ではナイアガラ !
(それが言いたかっただけ)
「もう君は勝った。皆、抹殺するつもりか?」
「皆、抹殺するつもりはない。敵だけだ……」
ナポリタンを身籠り、臨月に達したお腹を抱えて外堀通りに這い上がった。
けたたましい音をまき散らしながらフェラーリ、ランボルギーニが往くが、そこに母国のノスタルジーを覚えないのは何故だろう。
腹心のトムから、familyを譲った三男マイケルの非道が止まらないという憂いの便りが届いたことも心配の種。
しかしそんなやわな気持ちになることも、このヴィト・コルレオーネたるものをまさか平和ぼけにさせるまでの、この極東の島国の ……
銀座シシリア/ナポリ性について
「おなごが学問なんかしたらろくなもんにならんがぁ~、学校なんか休め休め !」
もしかしたら夏目雅子のおっぱいが見れるんじゃないか ? とか、そんな不純な動機からではない。
超メイジャー邦画として語り継がれる約40年前の文芸超大作が、この度銀座外堀通り沿いの東映にかかると知って、これはちゃんと観ておかねばとやってきた次第。
その外堀通りを先ずは南へと往った。今日のわたしには、その店でペペロンチーノを食べるという明確な欲望があったからだ。
未だその時点では ……
<R3.12.4>
「銀座シシリア」
ちょうど正午。それでもけっこうな賑わいをみせる店内。
パーティションで守られてはいるものの、頭上にすぐ帳場のくる二人掛けの末席に案内されて、それでも、すぐに着席出来ただけでも幸運だと感謝してしまうこの自虐精神はもう誰でもない、自粛生活から釈放された群衆からの圧迫に依り形成されかけているものだと思えば、協力金で軽い高額宝くじにでも当たったように浮かれ気分の“ちいさな居酒屋”の店長たち同様、第6波を待ち望む自分を、心のどこかに見つけてみちゃったりして ……
で、品書きに目を通す。
と、これは十分に心の皮膚に刻み込まれていたことながらあらためて、自動販売機の“濃厚 !”コーンスープが何本も買えるほどにスープが高い !! が、どうしても飲みたい ……
結論的に私はここで方向転換を迫られるのだが、それは決して妥協ということではなく、合理的判断をしたまでのこと。
と信じたい ……
“ナポリタン” @1,080
“ミネストローネ” @750
〆て1,830円也。
そもそもナポリタンよりも高いペペロンチーノなどあって堪るものか !
もしもそれを認めてしまったら、おかめそばよりも高いもりそばを認めなければならなくなってしまう ! と激しく憤りながら、ぺペロンチーノ気分を強引にナポリタン気分へと、そのほうが安価だった為に心の中で力技で切替えていく。
(ほんとうはこちらのペペロンチーノに奢られる大量の良質なベーコンが、そのコストUPの原因であることをぼくは知ってるけどね)
いち早くスープが舞い降りて、カトラリボックスの中からそれやるには随分と大きな真ん丸のスプウンを探り当て、一口含んでしまったならばもう !
―― しあわせだなぁ、ぼくはきみといるときが一番しあわせなんだ !
と、一瞬で黙らされてしまうぼくがいた
おっかけペペロンチーノを諦めてチョイスせざるを得なかった、しかしより真っ当なitalianと誉れも高きナポリタンが、そのナポリ性(ナポリ性/笑)を全身で証明するかのように小エビでdecorateされて舞い降りた !
ボリウムたっぷりで、あの「イタリー亭」に勝ってはいないものの、ちょっと劣ったくらいに(なんだよそれ !)留まっていると思う。
後客の皿を次々と先に出したことすら、ちょうど切らしてしまった缶詰のマッシュルームを買いに走ってくれたことだと思えば、寧ろ感謝の気持ちでいっぱいになる。
私はその心の籠ったナポリタンが1/3になるまで、十分にためをつくり、そこからおもむろに陶器で振舞われるの粉チーズをたっぷりと振らせていった。
するとそれは、まるでクリープを入れたコーヒーのようにさらにそのうま味を増して ……
1982年 146分 日本
「鬼龍院花子の生涯」
鬼龍院花子が夏目雅子さんなのかなと思っていたら違った。映画ファンとして、ぼくはその程度のおとこだったということ。
このぬるま湯のような現代社会の中で男が野生をkeepし続ける為には、ときには人権問題とか差別問題とか、男尊女卑とかポリティカルコネクトレスとか、そんなの関係ない映画を観ることが必要だが、そのチョイスとして最も手っとり早いのが、このあたりの昭和製のとんがった作品ということになろう。
そういった意味で本作は、“本作撮影にあたり、いかなる動物虐待もおこなわれていません”のテロップ跋扈する近年の作品群を嘲笑うかのように(その善悪は置いておくとして)ガチの闘犬シーンが挿入され、また“いかなる女優もいっさい脱いでいません”を嘲笑うかのように、スクリーンを縦横無尽に飛び交うおっぱい、またおっぱい !
そして時空を超えて触れてみたこの作品は、当時日本社会を席巻した夏目雅子さんの例の決め台詞一発で評判となったくらいにしか思っていなかった私を打ち砕くばかりに、それでも仲代達矢さんの演技には依然としてハテナマークが残るものの(笑)、エンターテインメントに溢れる完成された超大作であったのである !
岩下志麻さん、夏目雅子さん、夏木マリさん。
女優たちのモンスター度の素晴らしき拮抗。当時夏目雅子さんは、恐らく女優として確立されたものを未だ何一つ持っていなかっただろうと思うが、若さと圧倒的美しさが、それを苦も無くbreakthroughしている。
加えて印象的だったのは、仲代達矢さん演じる土佐の大親分、鬼政に、右腕として最後の最後まで忠義を尽くす怪優室田日出男さんが、これまでの怪奇俳優から(笑)、なんか筋の通った面倒見の良い力持ちで、数少ないながらも私のこれまでに観た彼出演の作品の中で、一番良い役だったかな、と
※ ちなみに小林稔侍さんが一番恰好良かったのは、降旗康男監督「冬の華」で間違いないと思う
物語は親が自分たちの商売を細々とでも円滑に進める為に、地域のボスである鬼政に自分たちの子供を養子に捧げるところから始まる。
(その娘の成長後が、夏目雅子さん演じる松恵である)
男の底なしの阿呆さ(単純さ)と女のおどろおどろしい情念のクロス !
結局男にはそれしかなくって、女にもそれしかないのだということが良く分かる。そのどちらもがegoismでしかないのだが、親の子に対する愛情ですらまた然り !
人間の愛情のどれもがegoismでしかないのだとすれば、我々はそれをなるたけ早い段階でお互いに認め合うことで、人間関係というものがもっと楽になり、もっと信頼度を増すのではないか ? と思うのは私の楽観か、はたまた幻想か。
もしくはその上のステージとして、私には未だ確認できていないことだが本当の無償の愛というものが地球のどこかに厳然と実在するというのか !
岩下志麻さんのお酒茶碗飲みには心底痺れさせられる !
夏目雅子さん、夏木マリさん、佳那晃子さん、中村晃子さん etc.
炸裂する規制前フルパワー ! それぞれ単独で脱いでも映画一本成立させられる力量を持つ女優たちの柔肌がスクリーンを生きもののように這い、蠢き、加えてその酒にもやられたか、流行り病に侵されて死に体、没落の岩下志麻さんがそれでも、最後の最後で艶めかしい太腿の刺青をあらわにすれば ……
私はこの映画こそを、脱ぎもしないで体当たり演技を謳う現代の女優陣に観て欲しいし、そして自分に足りないものが何かを真剣に考えてみて欲しい(笑)。
必然性がないから脱がないというのか ? 笑止 !
私はこの映画を観て完全に理解した。必然性のないおっぱいなどこの世に一つもないのだ ! ということを。それともう一つ、やっぱり人間には学問が大切だということ。それは男にでも女にでも、である
言いたいことは言い切ったので、Fine
銀座シシリア/日本人がイタリア人に学ぶこと
クリストファー・ノーラン監督最新作をずっと狙っていて、しかしそれを観るには日本で2館のみ、IMAXレーザー/GTテクノロジーというスペックを持っている劇場でなければならないと私には刷り込まれていて、それは東京では、池袋のグランドシネマサンシャインのみ。
ところが皆考えることは同じようで、私が観たい時間帯では何日か前から予約でも入れない限り、最前列の両端近辺にしか空きがないという状態がもう何週も続いており、とうとう動員数の落ちぬままに、そのスクリーンでは夕方から一回ぽっきりの上映ということになってしまった。
もし二番館に落ちてきたとしても、IMAXでの鑑賞は不可能なわけだから(逆にIMAX上映の名画座なんかヤだけど)どこでもいいから早めに観ておかなければ ……
と !?
―― 有楽町の寿命のつきかけていると思っていた劇場(サロンパス/ルーブルって言ったかな)でかかってる、“DOLBY CINEMA”ってゆ~の、これってなに !?
なので有楽町マリオン、コンクリ人造のキャニオンの避け目にやってきて窓口の女の子から切符とるのだが、それがとても懐かしく感じる ……
するとその回はドルビーシネマ上映となり、600円プラスの2,500円です ! となったが、これはIMAXと同じ値段。元々通常価格ではないだろうと予想していたので黙って支払えば、劇場の場所は分かりますか ? とのこと(サロンパスの劇場はマリオンの隣の棟となる為)。
「たぶん、分かります ……」
と返したのは、だって、有楽町だって日比谷側に新しくて大きな集合映画館も出来たことだし、当時は上級だったかも知れないけど、今となっては取り壊しを待つばかりのスクリーンだと思ってたので、ほんとうにそんなとこやる気満々改修されてるのかなぁ ? と、それでもまだ半信半疑だった為。
で、ご飯を食べて場内に足を踏み入れれば、まさか疑似ではあるがレザーのblackで統一され、一席一席がほぼ独立されたような造りの真新しいシートが壮観に並ぶ光景が広がった !
―― もうびっくりだヨォ~ ! でもスクリーンそのものは、やはりグランドシネマサンシャインのIMAXスクリーンのほうがド迫力かも !
<R2.10.18>
「銀座シシリア」
スパゲッティを一回食べはじめたら止まらなくなって、今日は絶対ここんちに行こうと決めていたし、注文も既に決めている。
階段を下りて人差し指を一本立て、レスポンスの緩慢な女の子を待つ。そしたら向こうの二人掛けのテーブルに勝手に座れとのことで、心細さの中で、一人フロアをてくてくと進む。
いや、ほんとうは女の子は、満面の笑顔で私をもてなしてくれたのかも知れない。でもその笑顔がマスクの下に隠されてしまっているだけだ。そう自分に言い聞かせつつ、最初っから決めていた料理を注文。
同時に、なるべくならやらないで済ませたかったが、それ一つでも安価なお店であればお昼ご飯一回食べられるような、しかしそれでも注文せざるを得ないという気持ちにさせられてしまう魔性を持ったサイドメニュウを、清水の舞台から飛び降りる覚悟で追加注文 !
隣におじさん二人がやってきた。
おじさんの、ランチメニュウはないですか ? との懇願を丁寧に諫めるウェイター氏。そのことにホッと胸をなでおろすボク ……
―― こっちはお得なランチsetなどないとの了解でべらぼうに高いやつを決死の覚悟で追加注文したのに、簡単に「ございます !」なんてなったら、そんなの許さないわよ !
“ペペロンチーノ” @1,000
“ミネストローネ” @650
税込みで〆て1,815円。
こちらのペペロンチーノが食べたかった。身体が希求していた、と言っても良いかも知れない。こちらのミネストローネは我慢しようとしていた。しかし身体の希求が、その我慢を破壊した。
そんなこんなくだらない思いを馳せて自分を納得させにかかることを、人生あとどのくらい積重ねていくのだろうか ……
この愚行を、あとどのくらい ……
その魔性のミネストローネがやってきた。
それをやるには、このバスケットの中のフルサイズのスプウンしかなかっただろうか。兎も角それを突き刺したら、今日も野菜たちが、まるでそれが最初からの納得づくであったかのように、自ら官能的に崩れていく ……
市販の粉々をお湯でとくスープがこのくらい濃厚、且つおいしくなる日が、いつか人類に訪れるのであろうか。それはすぐそこまで来ているような気もするし、永遠に叶わない夢のような気もする。
はっきりと言えるのは、それを叶えることが出来るのは科学の力しかないということ。だからそれを成しえるのは、現代日本においては、具体的に言ってしまうが「味の素株式会社」となろうかと思う。
料理も実は科学であるというマルチェロ・マストロヤンニが教えてくれたこの大原則を、こともあろうに日本人は一旦否定してしまったが、しかし必ずやそのことを思い出す日がやって来ると、私はそう信じているし、そう信じたい
そして待ちわびたペペロンチーノとの再会、そして戯れ ……
1,000円のペペロンチーノは価格的におかしい ! と訝られる方がいらっしゃるかも知れないが、しかしそれは、1,000円のもりそばよりははるかにマシ !!
そう思わなければこんな注文、とてもできるわけがないじゃん !
1,000円のペペロンチーノで、とんがらしが輪切りなことだけが腑に落ちないのだが、そしてフェデリーニではなくスパゲッティなことも腑に落ちないし、そしてニンニクがみじん切りなことも、ちょっと腑に落ちなくって ……
いや、そんなことはもうどうでも良いくらいに、兎に角うまい !!
―― 兎に角うまい ! もうそれしか言えね ~ いつもは少し残してしまうベーコンをぜんぶ食べてしまっている自分に後から気が付くほどに ……
【そしてクリストファー・ノーラン】
それは音響と映像のハイクウォリティを追い求めた上映システムだという。
IMAX上映の前振りでもあるように、本編の前に、スクリーン上でその技術的特徴のアッピールがなされている。画面全体が黒くなり、皆さんはこれを黒に見えますか ? と問いかけられた直後、スクリーンがさらに漆黒へと堕ちた !
これはカローラとロールスロイスの黒の違いだろう。または四色分解で何故黒を加えるのか、ということとも通ずることだと思う。色彩のダイナミックレンジがふつうの上映システムよりぜんぜん広いとの説明だった。私のカローラとロールスロイスの例えとは理屈はぜんぜん違うのだろうけど、それほどの差 ! ということが言いたかった。
しかしやはり同じ金額を支払うのであれば、IMAXのフルスペックの劇場で観たかったというのが私の本音。何がどうあれ、撮影時に本来意図した画角がカットされるのは、やはりまずいだろう。
そして肝心のその作品についてだが、確かに今回も一度観ただけでは意味が分からない部分も多いのだが、でも「インセプション」のように、繰り返し観てその意味を理解し、そして味が深まっていく、という映画でもないように思う。
すでに本作についてそこかしこで言われていることだが、意味は分からずとも、その映像を体験するだけでも劇場に足を運ぶ価値がある ! ということが、どうもすべてなような気がした
Fine
銀座シシリア/もりそばに近いものを
さきこに「二度寝禁止 !」とLINEして家を出る。
東京駅で快速の京浜東北線から山手線に乗り換えるのは、随分と久しぶりのような、ついこないだのことだったような、よく分からない。
80年代のSFアニメーションとリュック・ベッソン最新作と、切符自動販売機の前に立ってまだどちらか迷ってる。その機械の表示で初めて、今日が6月6日だったと気が付いた。
―― さきことの待ち合わせ時間を7時にしておいて良かった。もしも6時にしてしまったら、まさか6月6日6時になってしまうところだった。私の新型ウィルス渦中生活からの脱却、門出として、それではあまりにも不吉となろう ……
<R2.6.6>
「銀座シシリア」
姿勢の良い若きお姉さんはしかし未だ慣れていないようで、一人の私をどこでも空いているテーブルの、でもどこへ誘導して良いか決めあぐね、先輩の指示を仰ぐよう。
結果最奥の角っこへと促される。
今夜はきっとお金使うだろうなとビビっているのだが、ここで腰が引けていては、とても長い夜を“有意義に”乗り越えることなど出来はしないだろうと、スパゲッティの選定と同時に、蛮勇を振り絞ってそれだけでもりそば一枚食べれてしまうような、お昼ご飯としてのサブキャラをいっしょに注文。
またメインの料理としては、それもイタリア料理のなかではもりそばみたいなものだと思うのだが、何故かナポリタンよりも高い値が付けられ、堂々ボロネーゼと同価格に昇格して並んでいるものを、それに対する好奇心半分、またとりわけそれが食べたいのだという本心半分で注文した
“ミネストローネ” @600
こちらのミネストローネはおいしい。
ラウンドで深いすくい部分を持ったスプウンを用いれば、口の中をぎりぎり火傷せずに済む速度まで減速するのがもう精一杯というところまで、それほどまでにこの濃厚な野菜スウプの魅力は、私の手のストロークを急かしてやまない
“ペペロンチーノ” @850
私は初めて入ったそば屋において、出てきたもりそばを見た瞬間にそれがうまいかどうか見抜くことが出来るが、この皿は、舞い下りてきた時点で見なくてもそれをうまいと直感した。
それは主にこの迸る大蒜の香ということとなろうが、もっと総合的な、料理としての熱気が(それはオーラと言っても過言ではないと思う)ひしひしと伝わってくるからだ。
そしてパンチェッタっていうのか、足立区民なのでよく分からないけれど、豊富にちり嵌められたベーコンがこのペペロンチーノをミートソースと同価格まで引き上げている一因だということは一目で分かる。それは通常、私にとっては常にエネミーとしての役柄なんだけど、それなくしてはこのうま味は達成されないだろうとも。
脂身よりもわずかに赤身が打ち勝っているそれを、スパゲッティに絡めつつやってゆく。フェデリーニではなく、ディチェコでいったらスパゲッティにまで達していないが、想像よりも、いや、ある意味想像通りのちゃんとした太さを持つ麺の採用に、老舗としての意地が垣間見えた気がした
税込みで締めて1,595円。
昨日の「五右衛門」で1,500円オーヴァだったことが悪い冗談に思えるほどに真っ当な料理を堪能することが出来た。
銀座の昼下がり。夜を待つ野郎独り。この強烈な大蒜の残り香は劇場の席の一つ置き飛ばし、ソーシャルディスタンスというものが必ずや緩和してくれるに違いないということは、中央通りを渡って劇場へと戻るときに唐突に頭をよぎっただけのことで、無論、とくに計算づくのものではなかった ……
【そして映画鑑賞後】
ケーキは、今日は用意しないつもり。
焼き肉を奢るのだから、プレゼントもハンカチ2枚くらいでいいだろうと高をくくり、それでも柄を十分に吟味して包んで貰い準備万端 ! 赤羽線で一駅Uターンを決めようとしていたところ、「ついた はいってる」のLINEが入る。
べつに気持ちは、急いてはいなかった。
どこかまた別の銀座。そのアーケードの天井桟敷への狭い階段を上っていく。すると他に誰もいない座敷の窓際、えも言われぬような真っ白のスニーカーが一足、謙虚且つ神々しいまでに、ぽつりと ……
銀座 シシリア/地階のちら見
東十条の蕎麦屋の前の、昼間のこと。
天気は曇り。
三連休最終日の本日、夜の部に希望がないのが昼間っから分かってしまっているということが、なんとも虚しい。何の為に今日一日を生きていったらよいのか、その動機を喪失してしまったようで ……
―― だからいつもの居酒屋じゃなくって、久々に蕎麦屋飲みなんかしちゃったんだよなぁ
いつものパチンコ屋の上で映画の切符をとる。
三連休中三日連続の映画となってしまってのラスト。ほんとうは何も考えずに観れるアクションものなんかが適当なことは分かってんだけど、何の因果かどう考えても最も重い作品をチョイスしてしまった自分を疑うと同時に、やっぱ俺だよなって …… (笑)
<H30.9.24>
「銀座 シシリア」
BGMは洋楽みたいなの。
新橋に突っ込む一歩手前まで行ってしまったんだけど、間一髪外堀通りで北へのUターンを成功させてちょっとのところ、いつもの緑の長靴のヒールの先に寄り添う赤い島の画の看板が見えたので、反射的に階段を下りてしまった。
こないだ来たときには、看板は出ていたんだけど階段を下りていったらもうクローズとなっていて、そのときに初めて、ああ、こちらは通し営業じゃないんだなって気付いた次第。だから今日もおっかなびっくりではあったが、無事入店することができた。
(後に続いたお客さんたちへのアナウンスを聞けば、おそらく昼の部のオーダーラストは午後二時くらいまでなのかなと)
レジスタカウンタ付近の二人掛けのテーブル。
隣には同じ面積のテーブルに、お母さんと息子さんであろうか、カップルでないの確かなんだけどそんな感じのふたりが着き、お母さんのほうがこちらの六本木店に長けているようで、若い彼にいろいろと注文の指南をしているよう
“ナポリタン” @760
“ミネストローネ” @580
大盛りが、250円だったかな、そんなもんだと品書きに書いてあってちょっと迷ったんだけど、こちらのスパゲッティのボリウムを失念してしまっているので、今日のところは冒険は犯さずにいこうと。結果、「イタリー亭」と同じかそれ以上のボリウムを持っていて、大盛りにしたらやヤバかったなと一安心。
ナポリタンはその名の通りの正統派に準ずる、皿にウェット感を残さぬ仕上がり、且つ何らかの大人のフレイヴァを纏い、またハム、ウィンナの採用は無しとして、こちらも「イタリー亭」のナポリタンのように小海老で纏められていた。
あくまでもこの仕上がりを以て比較しちゃうと、今日のところは「イタリー亭」のナポリタンに軍配が上がるのかなと。
また特筆すべきは敢えて注文した“ミネストローネ”で、こちらのそれはほんとうに野菜のうま味、温もりの感じられる優しいスープだと思う
お隣には“グリーンサラダ”から例の四角い“ミックスピザ”が到着。
もう大学生以上だと思うんだけど、そんな年頃の息子さんは、その料理にいたく満足されているよう。家族皆の胃袋をお母さんが鷲掴んでおくことが家庭円満の秘訣だとするならば、でもこんな掴み方もあっていいよなと思う。
続きサーモンのムニエルとドミソースのカツレツなんかを注文するんだけど、食べ終えてサーモンの皿に残ったソースが、もう見るからに美味そうで美味そうで ♪
―― あんまりガン見できないので、あくまでもちら見した範囲ではね ♪
銀座シシリア/補助席にて
さっきまで晴れていたと思ったが、京浜東北線から山手線に乗り換え有楽町で下りる頃には、傘の花がちらほらと舞っていた。
身も心も、それほど寒くはなかった。二日酔いもそれほどではない。コリドー通りを新橋方面に歩いて外堀通りに出ると、最近ご無沙汰していた長靴の恰好をした国土と横っちょの島をトリコローレで彩った看板をみつけ、矢も楯もたまらずにその階段を下りていった
<H29.2.5>
「銀座シシリア」
午後一時二十分。
今日はいつもより幾分賑わっているように見えるのは、これまでの私の利用状況が特殊だっただけであり、寧ろこのくらいが平常なのであろう。そんなことでフロア係の方々も、今日は若い女性二人に若い男性一人、また壮年男性と充実している。
人差し指を一本立てて、厨房の近くに設けられた補助席のような二人掛けのテーブル席に誘われるがまんま、お店としては大変潔いア・ラ・カルトのメニュウを、私としてはおっかなびっくり広げた
“ナポリタン” @760
“具だくさんミネストローネ” @580
最適な浸透圧を以て五臓六腑に染み渡るミネストローネ。
具沢山の冠にいっぺんの偽り無し。野菜の優しさが、下町育ちの私の人生そんな経験ないはずなのに、それでも何故か郷愁が溢れてくるようで恐ろしく美味い。
そしてナポリタンの皿が到着。
けっして派手さはないものの、こちらのナポリタンは素直に美味いと思う。スープ共々、そこに庶民的且つ効率的なうま味の操作というものが垣間見えなくもないが、それがきっと私の味覚にはマッチしているんだろう
気付けば鼻の頭や目の下に脂汗。
昨夜のアルコールがケチャップの酸味と呼応しているようだが、100%不快というわけでもない。ただ私の草臥れた胃の中で、ブラッディメアリーに似た感じのカラフルなカクテルが、私の意志とは無関係に勝手に生成されているだけの話だ ……
銀座シシリア/暮れて三無い運動、滞りなく継続中
「アイス買ってきてあげようか ?」
いつもの居酒屋でウィスキィをふたつくらいやった頃、女の子に言ってみた。
女の子は嬉しそうな笑みを浮かべつつ、早速横に立つもう一人の女の子に何を買ってきて貰おうかという視線を送ったが、そのもう一人の女の子がなんと、今お腹がすごくすいてるからアイスじゃなくってご飯ものがいい、とゴネはじめるではないか。
お腹がすいたと言われたら、私も韓流ドラマファンとして(夢中になったのは「天国の階段」だけだが)黙っていられないので、じゃあのり巻き買ってきてあげるよといって立ち上がった。
途端、もう片方の女の子が私に向かって囁いた。
「私はアイスでもいいよ !♪」
―― 無理だよ、そんな複雑な注文 ……
【 平成28年6月/再訪録追記 】
「銀座 シシリア」
タルガ・フローリオ再び。
ちょうど、目の前の男性にピッツァが運ばれてきて、ああ、ここがあのマスターの言ってた四角いピザのお店なんだなと、遅蒔きながらこれで確信に至ることができた。
再びメニュウを広げてみれば、ミックスピザは @750とある。スパゲッティを注文した直後だったが、特に後悔はしていない。ただ純粋に、その値段を確認してみただけだ。というのは、ピザという食べ物は私にとって永遠に食事ではあり得なく、“おやつ”であるという確固たる信念に基づいてのものである
“ボロネーゼ” @850
“具だくさんミネストローネ” @580
まずミネストローネがやってきた。
確かに具だくさんではあったが、それほどの量ではなかった。値段が値段なので、中華屋のワンタンくらいのものが丼で出てくると思っていたが ……
(思ってない思ってない)
シシリアでボローニャを。
それはあらかじめ麺をソースを絡めるスタイルで供された。図抜けて美味くはないが不味くもない、ミルキーなソース。チーズを多く織り込んでいるようで、ソースを残したまんま冷たい水を含むと、口中でチーズの凝固する複雑な食感を堪能することが出来る
そしてまた接客は今日も、良い意味でもあるがドライ。
べつに水をぶっかけられたわけではないが、エリザベス女王からナイトの称号を受けたスコットランドの、尋常でなく厚い胸板の映える大男のように、俺は今日はキルト穿いてないけど、心で呟いた。
「マティーニはドライだ ……」
―― マティーニなんか飲んだことないけどね
------------------------------------------------
<H26.12.28 銀座>
外堀通りを新橋方面に歩いていた。
ますますに暮れを予感させる銀座の街はシャッターの降りている店も多く、人通りにも、いつもの爆発力は感じられない。青空が途轍もなくヌケていた。昨日よりも少し暖かいくらいか。どうしようもなく憂鬱だったが、それもいつもどうりの自分の年末年始定例の気分に他ならない。
手を伸ばして、絡みついてくる白くナロウな指先はない。還るべき場所もない。寒風に遮られ、ひとときのアヴァンチュールもあり得ない。
完全なる“三無い”の中を漕ぐ男の視界に、まるで砂漠のオアシスのように緑色の長靴に赤い島を添えられた看板が飛び込んで、もう溜まらなくなって重く厚い硝子のドアを押し、もう上階はほとんど今年の稼働を終えていると思しきビルの内臓部、地階へと続く階段を下りていった
「銀座シシリア」
午後十二時半。
地階にしてそこそこゆったりと広がるフロアに、さすがにお客の姿は暮れも押し迫って疎ら。ホール係は見える範囲で、壮年、青年の地に足の付いた男性都合四名。目映いばかりの形式美、紅白の格子模様のテーブルクロス。着座したときには第一印象、ややドライかなと思っていた給仕の男性陣の応対は、一旦声をかけてしまえば愛想悪くなく、過不足のないものであった。
世代的にであろうか、私には特別思い入れもなく本日初めての来店であったが、屋号から、行きつけの鉄板焼屋のマスターの話では日本において草分け的、特徴的な四角いピッツァを出すイタリアンと脳みそにレコードされている。
しかしマスターの話がこちらの店だったか、あるいは上野と言っていたか六本木と言っていたか、もう定かではないんだけど、兎も角そのピザは絶品らしい。もう四半世紀以上過去の話として……
“ナポリタン” @740
“コーンポタージュ” @380
なんだかんだ \1,232也。
レシートを見ると内税なんだけど、10%のサーヴィス料が加算されるらしい。
見える範囲で、クノールの缶詰は見あたらなかった。
(私はそれを否定する者ではありませんが)
自動販売機の缶コーンスープを良く利用させて頂くが、パッケージにいくら“濃厚”だとか何だとかあっても、現実濃厚なものをみたことがないし、塩っ気も、どいつもこいつも弱きに過ぎるという結論に既に私の中では達しているが、特に“濃厚”ということについて、これは日本広告審査機構が定める何らかに抵触しないのだろうかと、いつも考えさせられる。
こちらのそれは、お店屋さんのコーンスープとして行き過ぎてとろんとした、また行き過ぎて塩分の強いものではまったくなく、逆にその普通さが心地良く感じた。
そしてスパゲッティ到着。
ナポリタンとしては少々細身かな、というのが第一印象。盛り付けが喫茶店の様、ちょっと意地悪に言って雑かな、というのが第二印象。ハム、またはウィンナーが無いぞ! というのが第三印象。その代わりか、小海老がいるなあ、というのが第四印象。
おもむろにフォークを入れてスピンさせた。
それはナポリタンとしての王道を貫く、サラダ油をまぶされて茹で置きされてものではないようで、炒めの行程をしっかりと経ていることを伺わせつつも、茹であげのようにも思えるぱりっとしたものであった。
案外麺が細身の場合、これが正解なのかも知れない
卓上に、それとなくそれかなと予感させる大きさの陶器の器。
蓋を開ければ神々しいまでの黄金色を帯びた、やっぱりパルメザンチーズ。さすがに銀座のお客は上品で、激盛ってしまう奴はいないのであろうか。早い段階で、それをスプーン二つほど、適量頂戴。そしてこの何か、食欲のそそられるフレイバーが単純に大蒜だということに気付くのに、暫くかかってしまった。
毒々しいケチャップ感でもない。それでいて味気なくもない。ちょっと王道を逸れていて、しかし奇を衒っているわけでもない。そんなこの上なく上質な、同じく“三無い”に、暫し微睡んだ。
―― このナポリタン、何気なく結構最上位かも知んない。俺の人生で ……
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Jackie_m
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Jackie_mさんの他のお店の口コミ
店名 |
銀座シシリア(Sicilia)
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---|---|
ジャンル | イタリアン、ピザ、洋食 |
予約・ お問い合わせ |
050-5593-8373 |
予約可否 |
予約可 |
住所 | |
交通手段 |
地下鉄銀座線「新橋」駅5番出口より 徒歩4分 内幸町駅から364m |
営業時間 |
|
予算 |
¥4,000~¥4,999 ¥1,000~¥1,999 |
予算(口コミ集計) |
¥1,000~¥1,999
|
支払い方法 |
カード可 (VISA、Master、JCB、AMEX、Diners) 電子マネー不可 QRコード決済可 (d払い) |
サービス料・ チャージ |
チャージ料なし |
席数 |
50席 |
---|---|
個室 |
無 |
貸切 |
不可 |
禁煙・喫煙 | 全席禁煙 |
駐車場 |
無 同ビルより西銀座駐車場通路あり |
空間・設備 | 落ち着いた空間 |
ドリンク | ワインあり、カクテルあり、ワインにこだわる |
---|
利用シーン |
こんな時によく使われます。 |
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ロケーション | 隠れ家レストラン |
お子様連れ |
子供可、ベビーカー入店可 可 |
ドレスコード | なし |
ホームページ | |
公式アカウント | |
オープン日 |
1971年 |
電話番号 |
03-3572-7828 |
備考 |
【2006年9月9日銀座ワールド銀座ビルより移転】 |
初投稿者 |
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兎角日本人はエネルギー問題や性差別、格差社会等、現代社会をとり巻く諸問題について我々日本人の意識だけが低く、海外を見習え、という雰囲気に支配されているがとんでもない ! ということを、ベルギー/ダルデンヌ兄弟の作品は、たちまちに気付かせてくれるところが良い。
次々と降りかかってくる不条理をただひらすら黙って耐え続けるだけの女性や、大人たちに搾取されながら、懸命に知恵を振り絞ってその日その日を生きる子供の姿こそが実は海外の現実であって、それからみたら日本なんかまだぜんぜん楽園じゃないか ! ということに(または謙虚に言ってそういう可能性があるということに)多少は気付いておかなければ、それはちょっと、成熟した大人とは言えないのではなかろうか、と
<R5.4.22>
金曜日の夜ならどうしたって人恋しくなり、希望のないとわかりきったSNACKに突っ込んでしまうことを半ば覚悟していたが、強靭な意志で欲望を抑え込むことに成功し、十分な睡眠時間をもって国鉄有楽町駅で下車。
天気は、もっと良くなると言っていたが今のところ、フラットで、決して薄くはない雲に覆われていて、それは良いのだが、久々午前中の銀座入り。こんな時こそ自由度の高いスムースなご飯が出来ると期待していたのも束の間、街は既にフル稼働中と見え、となればまたしても、すぐに着席出来るという点で絶大なる信頼をおいている、秘密の地下シシリアン食堂への階段を下りることにしてみる
「銀座シシリア」
年嵩のウェイター氏が電話対応中で暫し立ちずさんでから、奥のほうのテーブル席へと案内される。
昼の部午前11:30からのスタートで、客入りは入口から離れたところから順番に3/5くらいの入り。考えてみれば開店後15分でのこの状況は凄いと思うが、余所のお店の爆発を鑑みたとき、寧ろこれでも大人しく思えるから不思議である。
メニュウを広げ、ぼく一番のフェイヴァリットであるペペロンチーノのはるか下方に、想像はできるもののそれでも得体の知れぬスパゲッティを発見 ! ものは試しと注文することに。さらに独身貴族を代表し、最初から決めていた“例のもの”を同時に注文 !
その間にもみるみるフロアは盛況を増し、ぼくのあとから入ってきたお客さんへも注文が行き渡り始めたならお腹もますます空いてきて、もう子供のように指を咥えて待つばかりのぼく ……
“オニオングラタンスープ” @800
改札口で電車の中から降りてくるきみを待ったように待ち尽くした、憧れのオニオングラタンスープとの涙の再開。
それは寸胴一本のなべ底に最後に残った一杯のように限りなくリッチで、ぼくの心の中のスパークプラグを激しくかぶらせてくる ! それほどの量でもないのに800円、という単価だけに尻込みするが、お一人様ランチスープとしては適量だし、高頻度とはいかずとも、最低年に2、3回くらいはぜひ注文したいと思わせる逸品 !
“ガーリックソース” @1,200
(スープと〆てちょうど2,000円也)
そしてグレービーボート付きで“未知”が舞い降りた !
これは、つけ麺ブームの昨今、ざるそばのようにグレービーボートをそば猪口のように使い、スパゲッティをつけながら食べるのだろうか ? んなわけない ! と、深いすくい部分を持つspoonでそのソースをかんますと、美しくも夥しい量のニンニク微塵が、まるで星の砂のように底から舞い上がってくるではないか !
その映像美だけでも気分が高揚してきて、早速、運命(さだめ)によって引き裂かれた恋人たちを再会させるように、ビアンコのスパゲッティにそれを塗(まみ)れさせてゆく ……
二度と出来ない恋を捨て あなた遠く
離れ離れになっていくの今 つらいわ
そばつゆのようにはこういったものに長けていなく、十分なソースの量にたじろいで、先ずは半分ほどそれをスパゲッティの皿に合わせて様子を見ることに ……
それは全盛期の小柳ルミ子さんの如く、素直で透明感があり、しかしその裏に強い芯と激しい情念を携えるような、そんなギリギリの拮抗で私に襲い掛かってくる !
ガーリックソースの名が体を完全に顕し、力強いニンニクの香が、何度も何度も私をサンゴの島へタイムリープさせようとしてくるのだが、そのことに耐え抜くことが出来たなら、あとはグレービーボートに残ったソースをスパゲッティの皿にすべて釈放してやって、その蠱惑のOilがぼくの顔面のガマ油とblendedされるくらいに、ただ無我夢中で貪ればそれでよく ……
―― 端的に言って、倖せすぎる ♥
その後、パチンコ屋の上でダルデンヌ兄弟最新作を鑑賞。
「万引き家族」や「パラサイト 半地下の家族」など、貧乏くさいが立派な映画もあるが、このベルギーの老兄弟監督が描く作品群も、同じくある意味社会底辺の暮らしが描かれた映画に間違いないはずなのだがしかし ! 貫かれるこの寧ろ崇高は、いったいどこから来ているのだろう。
異国の片隅で、非法の大人たちに翻弄されつつも強(したた)かに生きる移民のふたり。そんな血の繋がりのないおねえちゃんとおとうととの奇妙な兄弟愛があまりに不条理に踏み潰されてしまえば、その唐突に灯のおとされたスクリーンに向かって、ぼくはいったいなにを叫んだらよいというのか !
そんなことで完全に打ちのめされてただただ這う這うの体、なかんづく今夜の今夜は、あなたのいるSNACKに逃げ込んでしまうことしかもう出来ない ……