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富山の自然の美味と”松川”の風趣が結びついた新境地
海老亭別館は、富山で名高い老舗を引き継ぐ日本料理店。桜の名所・松川の桜並木に臨む趣深い和の空間で、富山の食材の魅力を心地よく満喫できる。昨秋に移転再開して以来、富山で有数の名店の一つとして新たな境地を開きつつある。
海老亭は、創業以来、旅館、大型料亭、日本料理店と形を変えながら百年以上の歴史を持つ。2016年にはミシュラン2つ星を獲得しながら、建物の老朽化に伴い2018年4月にいったん閉店し、2022年10年に、桜の名所・松川沿いにある現在の地に移転した。約4年半の休業期間中、4代目の当主・村健太郎氏は、東京の名店「松川」で2度目の修行をし、蕎麦打ちやソムリエ資格なども身につけ、満を持しての再出発となった。
店は、神通川にかかる富山大橋のたもと近くの路面電車通り沿いにある、大きな2階建ての一軒家。格式ある日本料理店には見えない現代風のデザインの外観が目を引く。一方、店の門から入り口周りは石や竹垣を配してしっとりした和の風情。1階はバーカウンターとソファを備えた待合室になっていて、2階に上がると、落ち着いた和の空間に入る。こぢんまりとした6席のカウンターの部屋は、部屋幅いっぱいにガラス窓をとり、窓越しに松川の桜並木が目の前に迫り、借景の葉桜が屏風絵となって視界に広がる。ちなみに東京・中目黒の一つ星のフレンチ「クラフタル」は、窓越しに有名な目黒川の桜並木が見えるが、松川の桜の方が一段と風情がある。
富山の食材をふんだんに取り入れ、名店「松川」仕込みの品も交えた当店の料理は、随所に新しさもある正統派の懐石料理で、一品一品に、さりげなく、手間ひまをかけた丁寧な仕事が施されている。飾り立てず、奇をてらわず、素材のよさが自然に素直に伝わってくる感じがする。「松川」で素材との向き合い方を学び直し、富山の料理人たちとの交流の中で富山の食材の扱い方を深めたとのことで、かつての老舗の看板から自由になり、肩の力が抜けて、淡々として静かに澄んだ新境地に到ったような印象だ。四代続く老舗料亭の復活と言うより、新たな店として進化しつつあると言う方がよいのかもしれない。
料理は、基本的に夜も昼も24,200円(税サ込)のコース1つで、旬の特選食材を追加することもできる(予約確認時にお店から案内があり、今回は、黒あわび、ウニ、鰻の蒲焼きで一品3~4千円程度)。お酒のペアリングは、ワイン7種に日本酒2種が基本で、フルが16,500円(税サ込)、ハーフが8,800円(同)。日本料理には日本酒という固定観念から離れた新たなスタイルを提起している。料理を盛り付ける器も、選び抜いた上質なものをそろえている。
当店が4年半休業している間に、富山の食は大きく飛躍し、新たな名店も次々と生まれた。その中で、昨年に再開した海老亭別館は、独自の立ち位置が見えてきたように思われる。富山で屈指の店の1つとして、ゴ・エ・ミヨ2023にもさっそく掲載された。店主は「自分はまだまだ」と謙遜するが、安定感のある格調の高い料理と雰囲気で心地よい満足感が得られ、県内外や海外の人たちに訪れてほしいと思える。
1.毛蟹とオクラ
氷を敷き詰めた木箱にガラスの器を沈めた、いかにも涼しげな一皿。岩瀬で揚がった毛蟹と、たたいたオクラにすだちのジュレをかけた。
2.穴子と飯蒸し
煮穴子に、餅米に味をつけて蒸した”飯蒸し”、入善の枝豆。
3.トヤマエビ
カニ漁がお休みのこの時期の富山湾では、生きたトヤマエビが食べられる(カニ漁の時期は、カニを獲っている間にエビは死んでしまう)。身が締まっていて、かむと歯をはじき返すような力強い弾力のものは、富山ならではの醍醐味。
4.甘鯛と胡麻豆腐の吸い物
5.トヤマエビの頭
6.お造り(キジハタと越中バイ)
いくつか種類のあるバイガイの中でも、越中バイは肉質が柔らかくて希少な最高級品とされる。富山で随一の「ふじ居」でも、やはり越中バイをよく使う。キジハタは、ふくよかな甘みと心地よい歯ごたえで、鮮度と下処理のよさがわかる。
7.トウモロコシのすり流し
ほぼトウモロコシだけで作ったすり流しは、力強く自然な甘み。
8.焼き茄子
丸ごと黒く焦がして焼いた吉川ナスを、佐渡産の藻塩とともに。吉川ナスは、福井県鯖江市の伝統野菜で、滑らかできめ細かい肉質が特徴。店主が修行した「松川」では賀茂茄子を使ったものを出していて、それを北陸の食材を使って取り入れた。
9.白エビと菅藻(スガモ)
文字通り宝石のようにきれいな白エビ。とろみの少ないすっきりとした味わいと舌触りで、鮮度のよさと丁寧な仕事が一目瞭然。菅藻の天ぷらのパリっとした食感と磯の風味との組み合わせ。
10.鱧と万願寺唐辛子
地元の食材の個性を生かした工夫をこらした一品。鱧というと湯引きして梅肉で食すのが最もポピュラーだが、富山で獲れる鱧は水分が多めで湯引きして食べるのには不向きなため、揚げた料理にアレンジした。万願寺唐辛子は酢をきかせた塩で和えたもので、辛味がなくやさしい甘みと歯ごたえ。
11.鮎
神通川のアユを20分ほどで丁度良い焼き加減に仕上げている。胸ビレがピンと立ったきれいな姿で焼き上がるのは、魚の生きの良さの証とのこと(直前まで元気に泳いでいた)。
12.池多牛の冷しゃぶ
池多牛は、富山の名店でよく扱われ、塊肉を焼いて赤身の旨味を味わうことが多く、冷しゃぶは珍しい。脂にさっぱりとした旨味があり、赤身・脂のバランスがよく、冷しゃぶでも池多牛らしさが出ている。かんぴょう状にスライスした大根も甘みがあっておいしい。
13.手打ちのうどん
通常は蕎麦を出すが、この日は店で手打ちしたうどん。生地を30分踏んでは寝かせる作業を6回繰り返すという手間をかけたもの。手打ちの麺料理は、「松川」での修行の成果の一つ。
14.お食事
じゃこと山椒を炊いたもの、平飼いの卵、シシトウと塩昆布を炒めたもの、ホタルイカの沖漬け。器は富山の工房・Shimoo Design製。ご飯は、女将の父親が作っている小矢部のコメ、漬物は水ナスとキュウリの浅漬け。どのおかずも程よい塩加減でご飯がすすむ。
15.デザート
①マンゴー
②水羊羹
みずみずしく滑らかな舌触りで、しっかりした味わいがありながら、後味がすっきりしている。これも「松川」にちなんだ一品。
16.お抹茶
【参考情報】
松川べりの桜は、「日本さくらの名所百選」にも選ばれていて、海老亭別館のある場所は、松川の桜の一番端の方で、観光客の姿はまばらだ。電車通りを渡ると、桜並木は「磯部の桜」と名前を変え、苔むして見事な枝振りの桜のトンネルが神通川の堤防と並行して1kmほど続く。ここは、三浦友和主演で富山を舞台にした映画「RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ」の最後の方のシーンにも登場する。
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東山清水
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店名 |
海老亭別館
|
---|---|
ジャンル | 日本料理 |
予約・ お問い合わせ |
076-432-3181 |
予約可否 |
完全予約制 |
住所 |
このお店は「富山市桜木町9-21」から移転しています。 |
交通手段 |
安野屋駅から60m |
営業時間 | |
予算 |
¥20,000~¥29,999 ¥20,000~¥29,999 |
予算(口コミ集計) |
¥30,000~¥39,999
|
支払い方法 |
カード可 (AMEX) 電子マネー不可 QRコード決済不可 |
サービス料・ チャージ |
サービス料10% |
席数 |
16席 (カウンター6席 個室2部屋4人/6人) |
---|---|
個室 |
有 (4人可、6人可) 4人、6人の各一部屋 |
貸切 |
可 |
禁煙・喫煙 | 全席禁煙 |
駐車場 |
有 4台 |
利用シーン |
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ドレスコード | 極度にカジュアルな服装はNG |
ホームページ | |
備考 | |
初投稿者 | |
最近の編集者 |
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海老亭別館は、富山で四代続く格式ある日本料理の名店。風情ある桜並木に面した心やすらぐカウンターで、富山ならではの厳選された新鮮素材を満喫でき、料理・サービス・雰囲気ともに上質で洗練されている。丁寧で繊細な仕事が行き届いた料理は、奇をてらわず素材のよさを素直に生かし、簡潔で自然な味わいと美しさを追求している。
移転オープンから2年が過ぎ、富山を代表する店の一つとして確かに歩を進め、海外からの来客も増えている。いつ行ってもどの料理もはずれがない安定感があり、季節ごとに訪れたいお店だ。それでも店主の村健太郎氏は、謙虚に研鑽を続け、納得のいくレベルと独自の境地を模索している。
香箱蟹とブリが出回る11月から1月にかけては、富山を代表する食材が最も充実した季節だ。おまかせのコース(税サ込み24,200円)は、富山の旬の美味をふんだんに盛り込んでいる(冬場は蟹コースあり)。オプションでその日の特選素材の料理(3~4千円程度)を追加できる。蟹コースでは、富山の一流日本料理店ならではのカニが味わえる。客の目の前で、生きたズワイガニを針の一突きで神経締めしてさばき、焼きガニは、蓋つきの火鉢でゆっくり火を通して、旨味とジューシーさを閉じ込める。ワインを中心にしたペアリングも魅力だ(フルで18,000円、ハーフが10,000円。ハーフでも9種類・ボトル半分ぐらいの量がある)。
(以下は、通常のおまかせコース)
0.紫蘇香煎
1.五箇山豆腐の白和え、あんぽ柿
素材の自然な甘みが口の中にじんわりと広がる一品。店主が修行した東京の名店「松川」では、料理に砂糖もみりんも使っていなかったとのこと。
2.ズワイガニの飯蒸し
ほぐし身のズワイガニとご飯のやさしい旨味が重なり、心が温まる。
3.お造り(ブリ)
鮮度と脂のりのよい上物のブリの身は、あえて薄目に切り、上品な味わいとサクサクした心地よい歯ごたえになっている。大根おろしをブリに巻き込んでいただく。
4.椀物(里芋のしんじょう、甘海老)
口当たりが滑らかで優しい味わいの里芋に、えび味噌で煮た甘海老の旨味と弾力のある食感。ほうれん草、しめじ添え。
5.お造り(メジマグロ、バイ貝)
前出のサクサク新鮮なブリやバイ貝の歯ごたえのある食感との対比を考えて、メジマグロは1週間熟成させてとろける滑らかさを際立たせた。繊細で上品な甘みにあふれてみずみずしい。
6.香箱蟹の沖漬け
メスのズワイガニ(香箱蟹)を2日間お酒に漬けてから、タレに漬け込み、甲羅に内子、外子、脚の身を盛り込み、カニを丸ごと生食する一品。当店のものは、味つけが濃くなくて、カニの自然な味わいを生かしている。ごく少量のご飯が添えられるが、ご飯がさほど進むわけではない。「ふじ居」の香箱蟹の醤油漬けとはまた違った味わいが楽しめる。
7.焼き物(ブリの炭火焼き)
お造りのブリもよいが、温かくふっくら柔らかく焼き上げた身の味わいもまた、ブリの醍醐味。大根とギンナンを添えて。
8.甘鯛の蕪蒸し
きめ細かくなめらかにすりおろしたカブと、とろみをつけた餡のやさしい甘みが甘鯛を包みこむ。
9.蕎麦
自家製の冷たい蕎麦。原木のナメコと辛味大根おろし。きりっと締めてしっかり歯ごたえのある麺は、店主による手打ち。
10.お食事
じゃこ山椒、カラスミ、池多牛のしぐれ煮、キュウリとカブラのぬか漬け+ブリのハラミの串焼き。店主が修行した「松川」のお食事セットを富山の食材を使ってアレンジしたもの。脂の乗ったブリのハラミは、ご飯の上に乗せていただくと、それだけでご飯一杯がなくなる。ご飯は、富山県小矢部市産のコシヒカリ。
11.デザート
デザート2品も「松川」仕込みのもの。
・苺のゼリーよせ
・黒豆の水羊羹
黒豆の水羊羹は、上品な甘さで、みずみずしく滑らか。
12.お抹茶