Z世代が「小文字ばかり使う」のは、意外と“思想的な理由”があるのかもしれない
近年、欧米圏のZ世代の間で、大文字を使わずにすべて小文字で表記する傾向が強まっているという。
この現象は、単なるタイピングの癖ではなく、彼らの価値観やデジタルコミュニケーションにおける新たな表現文化を反映したもののようだ。
小文字文化の台頭
The Guardianの報道によると、Z世代の若者の多くが、スマートフォンの自動大文字機能をオフにし、小文字のみを使用することに親しみを感じているらしい。
彼らにとって、小文字の文章は会話のトーンを柔らかくし、カジュアルで親しみやすい印象を与えるのだという。
『Guardian』の記事によれば、ある24歳はティーンエイジャーの頃にスマートフォンの自動大文字機能をオフにして以来、小文字での入力が習慣となったと述べている。
彼女は「小文字は始まりも終わりもない継続的な会話のトーンのように感じられ、テキストの持つ厳格さを和らげる」と語っている。
また、「小文字で入力するとリラックスした感じがする。正式な大文字を使うと、必要以上に強調しているように感じる」と述べる同世代も。
いまや単にタイピングの省略よりも、意識や嗜好に基づいたものとなってきていることが分かる。
この傾向は音楽業界やブランド戦略にも影響を与えている。
例えば、歌手のビリー・アイリッシュは楽曲タイトルを小文字で統一しているし、「amika」のようなブランドもパッケージデザインに小文字を採用するなど、若者向けのマーケティングでは小文字のみを使用しているケースも。
歴史的背景とフェミニズムとの関係
Guardian誌の説によれば、小文字表記の文化は、20世紀の詩人E・E・カミングスやフェミニスト作家ベル・フックスなどの思想に関連しているという考察もあるらしい。
彼らは権威主義への反発として小文字を使用し、個人の名前よりも思想やメッセージに焦点を当てる意図があったのだとか(ベル・フックスは、自身の名前を小文字で表記することで、個人よりも著作に注目してほしいと述べている)。
一方で、Z世代はSNSを活用して商品の情報を短時間で効率よく収集し、自分にとって価値あるものにいち早く到達する傾向がある。
このような背景から、小文字の使用は、形式よりも内容や感情的なつながりを重視するZ世代の価値観を反映しているとも考えられるようだ。
デジタル時代の言語変化
Z世代は、SNSを活用して情報を短時間で収集し、自分にとって価値のあるものにいち早く到達する傾向がある。そのため、伝統的な文法規則にこだわるよりも、短く直感的な表現を重視する傾向が強まっているのかもしれない。
日本でも、漢字を省きかなを意図的に用いるなど若年層の文字との関わり方は変わり続けている。マーケティング、広告ひとつとっても、若者をターゲットとするなら、一考の余地はあるかもしれない。