
- 作者: ニック・レーン,斉藤隆央
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 2007/12/22
- メディア: 単行本
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読んでから、時々思い出して考えてみたり、また読みなおしたりしている。それぐらい思い入れはある。
タイトルが示すとおり、生物が進化する中でミトコンドリアが果たした役割を追求し、全体像を描き出そうという意欲がみなぎっている。ミトコンドリアは細胞内共生でできました、ミトコンドリアが酸素呼吸でエネルギーを作ります、ミトコンドリアは母親から伝わります、ミトコンドリアがプログラム細胞死(アポトーシス)を起爆させます……なんて、生物学者にとってはおなじみのトピックだろ? とあなどるわけにはいかない。その全てを徹底的に追求し、それがどうして達成できたのか? 本当にそうか? 他のことは考えられないのか? 果ては、なぜ真核生物は多様化し巨大化したのか? なぜ性があるのか? そして、なぜ死ぬのか? という、人類が日常で疑問に思うコアなトピックにディープインパクトしている。
トピックは極めて専門的だけれど、自分の専門性の多寡に読者一般が怖じる必要もない。知識はすべて著者がていねいに提供している。あとは導きにしたがい丹念に読み解きながら、著者と共に問題を考えていけばよい。逆に言えば、私自身は専門的な知識はある程度あったと自負しているけれど、歯ごたえは十分あった。定説は掘り返され掘り下げられ、新しい視界が一章ごとに拓ける。登場する説も当然ながら最終的な結論ではありえない。しかし、そのどれもが極めて説得的で合理的だ。*1
「なぜ真核生物は多様化し巨大化したのか? なぜ性があるのか? そして、なぜ死ぬのか?」
この問いに知的好奇心のある全てのヒトに、この本を読んで欲しい。