人生の経営戦略(山口周)の書評

yellow and black arrow sign

人生の経営戦略
山口周
ダイヤモンド社

人生の経営戦略(山口周)の要約

「人生の経営戦略(ライフ・マネジメント・ストラテジー)」というコンセプトを日常に取り入れることで、人生の後半戦をより豊かで充実したものにする手助けとなるでしょう。この考え方は、自分の人生を単なる流れに任せるのではなく、戦略的に捉え、自らの目標や価値観に基づいて計画的に行動することを促します。

経営戦略から、自分の人生を捉え直そう!

経営戦略論をはじめとした経営学のさまざまな知見を、個人の「人生というプロジェクト」に活用するためのガイドを提供する。(山口周)

私たちの人生は、一つの大きな「プロジェクト」として捉えることができます。そのプロジェクトを成功に導くためには、経営戦略の知見を活用し、日々の選択や行動を意識的に設計することが不可欠です。

しかし、多くの人はその重要性を見逃し、偶然や流れに身を任せる選択をしてしまいがちです。これは、計画もなく競争市場に飛び込む企業が成功を目指すようなものです。成功の鍵は、慎重な分析と明確な戦略にあるのです。 社会の衰退は、個人の責任を他者に押し付ける傾向からも引き起こされます。

何か問題が起きると、すぐに政府や企業のせいだと批判する声が挙がります。しかし、根本的な問題は、「個人の活力の喪失」にあります。活力のある個人が増えることで、社会全体が健全な方向へと向かうのです。したがって、まずは一人ひとりが、自分の人生に対する責任を認識し、主体的に行動する必要があります。

現代は、「選択に時間をかける価値」がこれまで以上に高まっています。どこで生きるのか、誰と関わるのか、何に時間を使うのか。その一つひとつが、将来の成長や満足感に直結します。ランダムな選択を重ねても成長の期待値はほぼゼロであるという現実を考えると、自分の居場所や行動を意識的に選び取ることが求められます。

どのような環境で生きるかを選ぶことは、自分自身の人生の質を大きく左右する重要な要素なのです。 経営戦略の基本は、自社の強みやリソースを最大限に活用することです。人生においても同様に、自分自身の強みや価値観を理解し、それを軸に行動を設計していくことが重要です。

特別な才能がなくても、それを補う努力や工夫を積み重ねることで道は開けます。情熱を注げる分野や得意なことを見極め、それを核にして行動を重ねることが、自分の人生を成功に導く鍵となるのです。 人生に戦略を持つことで、困難や予期せぬ出来事にも柔軟に対応する力が養われます。

戦略があれば、目的地が明確であるため、迷いや不安にとらわれることなく前に進むことができます。さらに、自分の選択が本来の目指す方向と一致しているかを常に確認することで、ブレない軸を持つことができるのです。

私たちは自分自身の「人生というプロジェクト」の唯一の責任者であり、リーダーです。そのような立場にある私たちが、自己のわがままに忠実になって「発言」し、「離脱」することによって、最終的には組織や社会にとってもより良い状態が生まれる、と考えるべきなのです。 

人生は他人任せにするものではなく、自分自身でその舵を取るべきものです。外部の環境や他人の意見に流されるのではなく、自分の意思で進む道を選ぶことが、人生というプロジェクトを成功に導くための最善の方法です。それは簡単なことではありません。時には孤独を感じたり、厳しい選択を迫られたりすることもあるでしょう。

しかし、自分自身の選択と行動によって人生を築き上げていくことこそが、充実感を得るための唯一の道なのです。 重要なのは、自分自身で考え、自分の言葉で発言し、自分にとって不要だと感じるものからは離脱する勇気を持つことです。これらの自律的な行動は、個人としての力を取り戻し、やがて組織や社会にポジティブな影響を与える力となります。

自分自身の足で立ち、自分の意思で行動する人が増えることで、社会全体が活気づき、より良い方向へと進んでいくのです。 人生において戦略を持つことは、決して恐れるべきものではありません。むしろ、それは困難な状況に直面したときでも安心感をもたらしてくれる大切な指針となります。

目的地が明確であれば、迷いや不安に惑わされることなく前進することができます。また、自分の選択や行動が、自分が目指すべき方向性と一致しているかを確認することで、確固たる軸を持って生きることができます。

ルソー的人生論ともマキャベリ的人生論とも異なる、この「3つ目の人生論」を言葉にするなら、 自分らしいと思える人生を歩み、経済的・社会的にも安定した人生を送る。

こうした人生のアプローチは、ルソーのような自由を重視した人生観や、マキャベリのように力や権力を中心に据えた人生観とも異なる、新しい考え方です。それは、経済的・社会的な安定を保ちながら、自分らしさを尊重した生き方を目指すものです。

著者はアリストテレスが説いたように、人生の目的を「エウダイモニア=善き生」に置き、その達成のためには、極端を避けながら「中庸」を意識することが大切だと言います。

この「第三の人生論=アリストテレス的人生論」は、自分らしいと思える人生を送りつつも、現実の社会の中で自らの位置をしっかりと確立することを重視します。夢や理想だけではなく、実際の行動や計画を通じて未来を創り上げていく考え方です。

私たちは自分の人生というプロジェクトの唯一の責任者であり、リーダーです。他の誰かが代わりにその責任を引き受けてくれるわけではありません。だからこそ、自分の価値観や目標を明確にし、それに基づいて計画を立て、行動していく必要があります。人生の舵を取る覚悟を持ち、主体的に未来を創り上げていくこと。それこそが、自分の人生を充実したものにするための最善の方法です。

周囲の状況や他人の評価に縛られるのではなく、自分が納得できる人生を歩むこと。経済的な安定を目指しつつも、自分らしさを見失わないこと。そのような生き方を目指すことで、私たちは個人としての充実を手に入れ、同時に社会全体の成長にも貢献することができるのです。自らの意思で人生を切り拓き、責任を持ってその道を進む――これこそが、現代を生きる私たちに求められる「人生の経営戦略」と言えるのではないでしょうか。

持続的なウェルビーイングのための資本戦略

時間資本を適切に配分することで持続的なウェルビーイングの状態を築き上げ、いつ余命宣告をされても「自分らしい、いい人生だった」と思えるような人生を送る。

人生において「持続的なウェルビーイング」を築くためには、「時間資本」の適切な配分が重要です。この考え方には3つの大切なポイントがあります。 まず、私たちが人生の戦略を立てる際にコントロールできる唯一の資源は「時間資本」であるという点です。

しばしば、他人や社会、組織といった自分では動かせないものに意識を向けてしまいがちですが、それは無駄な努力を生むことがあります。私たちが注力すべきは、あくまで自分で管理できる「時間」というリソースをどう活用するかです。

次に、時間資本の配分が戦略の核心となる理由は、戦略がそもそも「資源の分配」に他ならないからです。私たちが持つ資源の中で唯一有限であり、平等に与えられているのが時間です。この限られた資源を、何に、どれだけ使うかが、人生の成果を大きく左右します。

最後に、人生の目的を「持続的なウェルビーイング」に設定することです。お金や名誉は、幸福感を一時的に高める要素でしかありません。研究によれば、これらは一定の水準を超えると幸福には寄与しなくなります。したがって、これらを目的ではなく手段と捉え、人生を通じて心身の健康と幸福感を維持することを目指すべきです。

さらに、「持続的」であることが特に重要です。私たちは自分がいつ人生の終わりを迎えるか分かりません。そのため、「いつか幸せになる」ではなく、日々の中で「いつも」幸福を感じられる状態を目指すべきなのです。 時間という唯一無二の資源を適切に管理し、日々の選択を通じてウェルビーイングを築いていくこと。それが、人生を豊かで充実したものにする鍵となるのです。

人生において「ウェルビーイング」を実現するためには、時間資本をどのように活用するかが重要です。私たちが持つ時間資本を「スジの良い仕事」に投下することで、良質な経験が積み重なり、人的資本が育ちます。この人的資本が成果や信頼を生み出し、やがて「信用」や「評判」、そして「ネットワーク」といった社会資本を築く基盤となります。

ここで大切なのは、社会資本は人的資本によって育まれるものであり、直接的に時間資本を投入して構築することはできないという点です。同様に、金融資本も社会資本の裏付けなしには効率的に増やすことができません。したがって、まず人的資本を育て、それを基に社会資本を構築することが、金融資本の形成にもつながるのです。

ただし、ここで注意が必要なのは、「仕事に役立つ資本」である人的資本や社会資本、金融資本が、ウェルビーイングを間接的にしか高めない点です。これらの資本を構築することばかりに時間資本を注ぎ込んでしまうと、本来目指すべきウェルビーイングを実現する道を見失ってしまう恐れがあります。

ウェルビーイングを直接的に支えるものとして挙げられるのが、以下の3つの要素です。
①自己効力感:自分が能力を発揮し、意義のあることに貢献できているという実感。他者の役に立つことで自分自身も成長していると感じること。

②社会的つながり:家族や友人、職場の仲間との信頼や親密な関係を築き、周囲とのつながりを感じられること。

③経済的安定性:基本的な生活を維持できる経済的余裕があり、不安を感じずに日々を送れること。

これら3つの要素は、それぞれ人的資本、社会資本、金融資本に対応しており、これらが調和することで、時間資本がウェルビーイングに接続されます。ただし、特に金融資本については、その過度な追求がバランスを崩し、人的資本や社会資本の形成をおろそかにしてしまうリスクがあります。

金融資本は一定の水準を超えると、幸福感への影響が薄れることが分かっています。そのため、金融資本の増加に執着しすぎると、かえってウェルビーイングから遠ざかってしまう可能性があります。本当に大切なのは、世間で一般的に語られる「成功」のイメージに振り回されるのではなく、自分自身にとって何が重要なのかを見極めることです。

私たちの人生は、約80年という長い期間にわたるプロジェクトです。しかし、この長期的な視点を無視し、「短期的な合理性」に囚われた決断を繰り返してしまうと、持続的な幸福や充実感を実現することは難しくなります。 人生を俯瞰し、全体像を意識しながら戦略的な計画を立てることが重要です。そうすることで、世間の一時的なトレンドや短期的な誘惑に流されることなく、自分の価値観や目標に基づいた選択を続けることができます。

山口氏が提唱する「短期の合理は長期の不合理」「短期の不合理は長期の合理」という考え方は、長期的な視野の重要性を教えてくれます。短期的には効率的に見える選択が、長期的な成長や成功を妨げることがある一方で、短期的な努力や不便が結果的に大きな成果を生むこともあります。

たとえば、スキルを磨く努力や信頼関係を築く行動は、すぐには成果が見えなくても、長期的には人生の基盤を強化します。目先の利益に惑わされず、長期的な視点を持ち続けることが、真の幸福や充実を実現する鍵となるのです。

40代以降はイニシアチブ・ポートフォリオでやりたいことにチャレンジ!

適応戦略とは、企業や組織が、固定された戦略や計画に固執するのではなく、事業推進にともなって立ち現れてくる機会や脅威に適応するために、柔軟に対応し、資源配分を調整することで目標を達成するという考え方です。

適応戦略の視点は、企業や組織に限らず、私たち個人の人生においても非常に有効なアプローチです。 人生は、そもそも「膨大な仮説の集合体」としてスタートします。

私たちが立てる目標や計画は、その時点での仮説に過ぎず、行動を通じて一つひとつ検証し、場合によっては破棄しながら進んでいくしかありません。その過程で、想定した戦略や計画がうまくいかないことを経験するのは避けられないことです。

しかし、その状況を「失敗」と捉えるのではなく、「仮説の誤りが検証された」とポジティブに捉えることが、次の一歩を踏み出す上での重要な姿勢となります。 むしろ危険なのは、当初の計画や戦略に執着しすぎることです。現実の状況が想定外の方向に変化したとき、その変化を受け入れられないままでいると、行動は硬直し、最終的には目標達成が遠のく結果を招きかねません。

人生は、個人、組織、社会が常に変化する環境の中で進んでいきます。変化によって計画の修正や場合によっては戦略そのものの破棄を余儀なくされるのは避けられないことです。この現実を前提に、適応戦略を意識することが、柔軟かつ堅牢な生き方を実現する鍵となります。

適応戦略を人生に活用するためには、まず仮説を早い段階で検証することが大切です。たとえ小さな一歩でも、実際に行動を起こし、その結果を確認し、必要に応じて戦略を修正していく。このプロセスを繰り返すことで、当初は脆弱だった戦略も、次第に堅牢なものへと進化します。

一方で、検証を怠り、仮説が正しいと決めつけて行動しないままでいると、戦略の脆弱性はそのまま放置され、いずれ大きな問題として現れることになるでしょう。 私たちは往々にして、計画が失敗することを恐れがちですが、実際には失敗を恐れる必要はありません。

なぜなら、失敗は仮説を検証し、より良い方向に修正するための貴重なデータをもたらしてくれるからです。逆に、失敗を避けるために変化を拒絶したり、計画に固執したりすることのほうが、長い目で見て大きなリスクを生む可能性があります。 適応戦略を実践するためには、自分自身の戦略や計画に対して、しなやかな姿勢を持つことが求められます。

イニシアチブ・ポートフォリオによって、自分の時間資本の配分を可視化することで、ともすると目先の利益に傾斜してしまいがちな時間資本の配分を自分で律することができるようになります。言うなれば、イニシアチブ・ポートフォリオは、自分の時間資本の投資配分に関する「自身によるガバナンス」を効かすためのツールなのです。

私たちは日々、限られた時間という貴重な資本を使って生活しています。しかし、その使い方が目先の利益に偏り、将来への準備や自分自身の成長に十分な時間を投じられていないことも少なくありません。そこで役立つのが「イニシアチブ・ポートフォリオ」です。

このツールを使えば、自分の時間資本の配分を可視化し、意識的に調整することで、長期的な視点から時間の使い方を律することができます。 イニシアチブ・ポートフォリオとは、自分の時間資本をどこに、どのように投資しているかを見直し、バランスを整えるための方法です。

たとえば、現在の仕事や日々のルーチンに多くの時間を割きすぎていると感じる場合、次のステージに備えるための学びや、新たな挑戦のための時間を意識的に確保する必要があります。これにより、単なる忙しさに追われるのではなく、自分の人生を主体的にコントロールする感覚が得られるのです。

特に40代以降は、これまでの本業だけに時間を投じるのではなく、次の人生のステージを見据えて時間を配分することが大切です。たとえば、新しいスキルを学ぶ、興味のある分野に挑戦する、人脈を広げるなど、これまでにないリスク領域への投資を始めることで、自分の可能性を広げることができます。

このリスク領域への時間資本の投下は、将来的に大きなリターンを生む可能性を秘めています。それは、人生をより豊かで多様なものへと導くきっかけとなるでしょう。私自身も40代後半から、本業であるマーケティングに加え、書籍やブログの執筆、さらに社外取締役としての活動や大学での授業を行うなど、新たな領域へ挑戦する時間を意識的に投じてきました。

その結果、視野が広がり、より多くの人々とつながりながら、充実感のある人生を送れるようになったと感じています。 こうした挑戦は最初はリスクに思えるかもしれませんが、時間を投じて取り組むことで、自分自身の成長や新たな可能性を発見する機会を生み出します。未来に向けて積極的にリスク領域に投資することで、これまで想像もしなかった道が開かれ、人生にさらなる豊かさと深みをもたらしてくれるのです。

人生後半戦を楽しむ方法

「組み合わせ」がブルー・オーシャン戦略の実践においては鍵となります。気をつけて欲しいのは、これは「新しい価値」の「組み合わせ」ではなく「既存の価値」の「新しい組み合わせ」だということです。ブルー・オーシャンの実践にあたって重要なのは、「新しい価値を創出する」ことではなく、既存の価値の「新しい組み合わせを創出する」ことなのです。

「組み合わせ」は、ブルー・オーシャン戦略を実践する上で非常に重要な鍵を握る概念です。ここで注意すべきなのは、ブルー・オーシャン戦略が目指すのは「新しい価値そのものを創出する」ことではないという点です。むしろ、「既存の価値を新たに組み合わせる」ことで、競争のない新しい市場を切り開くという考え方が核心にあります。

スキルの新しい組み合わせによって、競争が激しい既存の市場から抜け出し、独自の立ち位置を確立することができるのです。 この考え方は、単にビジネスの戦略に限らず、私たち個人の人生においても大きな洞察をもたらします。新たなチャレンジを重ねることで、斬新な組み合わせが生まれ、オンリーワンの存在になれます。

人生をより充実させ、独自の価値を発揮するためには、「ライフ・マネジメント・ストラテジー」においてもブルー・オーシャンのアプローチを取り入れることが有効です。その要となるのが、「独自の交差点を作る」と「カテゴリーの交差点」という考え方です。

これらの交差点という発想は、個人が自分ならではの価値を見出し、他者と差別化された存在になるための鍵です。一つの分野で突出することももちろん素晴らしいことですが、現代社会ではその分野の中だけで競争を続けることには限界があります。

しかし、複数の異なる分野やスキルを掛け合わせることで、新しい価値を生み出し、全く新しい可能性を切り開くことができるのです。 たとえば、テクノロジーの知識にデザインのスキルを組み合わせることで、革新的な製品を生み出すことができるかもしれません。

また、科学的な知見にクリエイティブな表現力を融合させれば、独自の形で社会にインパクトを与えることが可能になります。このように、異なる分野を掛け合わせることで、自分だけのユニークな価値を築くことができるのです。

さらに、このアプローチは個人のキャリア形成にも応用できます。特定の専門分野での経験を持ちながら、そこに新しいスキルや趣味、興味を融合させることで、自分だけの「市場」を作り上げることが可能です。他者と比較することなく、自分だけの強みを活かせる環境を作ることが、人生におけるブルー・オーシャンを築く秘訣と言えます。

この「新しい組み合わせ」を追求する姿勢は、私たちが生きる世界をより豊かで創造的なものへと変える可能性を秘めています。それは、単に自己実現を目指すだけでなく、周囲の人々や社会に対して新たな価値を提供することにつながります。こうして私たちは、自分自身の人生をより充実したものにするだけでなく、他者にとっても魅力的で意味のある存在となることができるのです。

他人と直接競争するのではなく、自分ならではの独自性を発揮することで、他者との比較を超えた存在となり得ます。 この考え方は、仕事やキャリアにおいて非常に重要です。これまでのように一つの専門分野に特化するだけではなく、その専門性を他のスキルや経験と結びつけることで、新たな市場や役割を生み出すことが可能です。

例えば、データ分析のスキルを持つ人が心理学の知識を取り入れることで、人の感情や行動を深く理解する新たなマーケティング手法を生み出すことができるかもしれません。

また、アートの経験を持つ人がテクノロジーの知識を組み合わせれば、革新的なデザインやクリエイティブなプロダクトを生み出せる可能性があります。 こうしたユニークな組み合わせは、単に競争を回避するだけでなく、自分自身にとっても大きな成長のチャンスをもたらします。新しい分野に挑戦することで視野が広がり、異なる考え方や価値観に触れる機会が増えるため、柔軟性と創造力が磨かれます。

そして、そのプロセスを通じて得られた経験やスキルが、さらに他の分野との新たな交差点を生み出すのです。 このような「交差点」を意識してキャリアを築くことで、働くことがより自由でしなやかになり、伸び伸びと自分の可能性を追求できる世界が広がるはずです。私たち一人ひとりがユニークな価値を発揮できる場を見つけることで、社会全体が多様性に満ちた活力あるものとなり、より良い未来が築かれていくでしょう。

どんなに成功したとしても、私たちはいずれどこかで第一線を退き、立場を後進に譲り、頼られなくなり、最終的に忘れられることになります。このような状況をつらく、悲しいものとして受け止めて意気消沈するか、あるいは、他者を支援し、他者の成長や活躍に新しい喜びを見出すかで、人生後半のクオリティ・オブ・ライフは大きく変わってくることになります。

サーバントリーダーシップが提唱するのは、人生の後半期をただ消極的に過ごすという考え方ではありません。それは、年齢とともに能力の衰えを受け入れ、支援者として脇に控えるだけの存在になるという消極的な提案ではなく、むしろ逆です。

他者を支援し、その成功を手助けすることで、これまでの人生では得られなかった真の喜びや充実感を見出すという、非常に前向きで力強いビジョンを示しているのです。 若い頃のように自分自身の成果を追い求めるエネルギーが少しずつ減っていくと感じることがあっても、人生の後半期には新たな可能性が広がります。

これまでに培ってきた経験や知識、スキルを活かし、それを他者の成長や成功のために役立てるという新しいステージが訪れるのです。人を支援し、その成果を見届ける中で得られる満足感や幸福感は、金銭や名誉といった表面的な報酬では決して得ることができない、深く意義あるものでしょう。

例えば、メンターとして若い世代に助言を与えたり、彼らの成長を支えることで、これまでの自分の経験が新たな価値を持ち始めます。相手の成功や喜びを共有することで、かつて自分が直面した挑戦や成長の過程を振り返り、それらに新しい意味を見出すことができます。

また、他者を支える行動そのものが、自己肯定感を高め、精神的な充実をもたらす力を持っています。支援は一方的な行為ではなく、むしろ双方向の成長の機会となるのです。

サーバントリーダーシップの本質は、他者を支援する行動が単なる助け合いを超え、自分自身の心を豊かにする行為でもあるという点にあります。信頼や人間関係の深さを育み、自分の存在が他者にとって価値のあるものだと感じられることは、人生の後半期において何よりも大きな充実感をもたらします。それは、これまでの人生を振り返り、今後の人生をより価値あるものへと変える大きなきっかけとなるのです。

私自身も、60歳を超えてからサーバントリーダーシップの考え方を実践し、若い世代の支援に注力してきました。現在は社外取締役、投資家、そして大学教授として、次世代の人々が挑戦し成長する場を作ることに力を注いでいます。その結果、私の人生の後半戦はこれまで以上に充実した、ワクワクするものになっています。他者の成功を支えることで自分自身の喜びや成長を感じられる、このような生き方は、すべての人にとって大きな可能性を秘めていると確信しています。

本日ご紹介した戦略コンセプトに加え、キャズム理論や5フォース分析、そしてこのブログでもおなじみのキャロル・ドゥエックの「しなやかなマインドセット」など、人生戦略を考え、実践するための方法が本書には詳しく書かれています。様々なフレームワークを活用することで、人生をよりできるのです。

本書のコンセプトを日常に取り入れることで、人生の後半戦をより豊かで充実したものにする手助けとなるでしょう。 この一冊は、短期的な成果を求めるのではなく、人生を長期的な視点で捉える方に特におすすめです。

最強Appleフレームワーク


Loading Facebook Comments ...

コメント

タイトルとURLをコピーしました