DeNAがメディアを運営している間、多数のクレームが寄せられている。そのなかでも、文章や画像の無断利用を指摘するものが986件、医療に関する指摘が91件にも上る。これだけ多くのクレームがあったにも関わらず、問題は経営陣には共有されず、守安氏が認識したのは昨年の夏頃だったという。
さらに、クレームに対してDeNAの法務部は、自社メディアはプラットフォームであることを意識したテンプレート回答の作成を助言していた。これに対し調査報告書は「法務部は当委員会のヒアリングに対して、キュレーション事業の実態に対する理解が正確でなかったと説明するが、当委員会は、そのような説明を受け入れかねる」(267ページ)と指摘する。
永久ベンチャーという免罪符
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さらに「これまで法務部は(中略)他の事業部門に対するチェック部門を果たしてきたにも関わらず、何故キュレーション事業に対してはこうしたチェック機能を十分に果たせなかったのか、当委員会にとっても不思議でならない」(同ページ)と強い口調で指摘している。
報告書では最後にこの問題の原因として、事業の実態やリスクに対する理解、認識不足、リスクに対する予防策が不十分であったことなどを挙げている。さらに、自己修正を妨げる原因として、関係者間のコミュニケーション不足、DeNAが掲げる「永久ベンチャー」が一人歩きし、慎重な意思決定やリスク分析がないがしろにされてしまったと指摘している。
こうした第三者委員会側の指摘を受け、DeNA側は各種の処分を行った。守安CEOは30%としていた6カ月間の月額報酬減を50%へ拡大。今後については「リスク情報の一元管理し、リスク情報の報告や関連部門間の連携も深める。体制や仕組みだけでは根本的な解決はできない。私を含め全員の意識改革が必要」と話した。
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ペロリの中川綾太郎氏はすでに同社の代表取締役を辞任、村田マリ氏もiemo及びFind Travelの代表取締役を辞任する意向を表明しているが、どちらもあくまで辞任であり、解任ではない。
両名はDeNA本体の人事部に配属されるという。また、柴田大介執行役員や小林賢治執行役員をはじめとした25名について就業規則に基づく処分を行った。
さらに、創業者の南場智子氏が代表取締役へ復帰。会見では「代表取締役として強い意志で会社全体の改革に取り組んでいく」と語った。
同社で問題が起きたのはこれで初めてではない。2011年にソーシャルゲーム事業において独占禁止法違反に基づく排除措置命令を受けており、「コンプリートガチャ問題」は社会問題にもなっている。一連の不祥事は一部の部署の問題ではなく、経営陣のあり方や現場での事業の進め方、さらには法務部や内部監査といった、間接部門におけるチェック体制や会社の風土にまで及ぶことが第三者報告書で示された。
報告書の指摘は多岐に渡るものの、個人に対する責任は明確にされていない。現場責任者に対しては解任ではなく辞任、全体の責任者である代表取締役は辞任や交代ではなく追加という会社側の処分にも、明瞭ではない責任の所在がみて取れる。
それぞれが本来の責務を果たさなかったことが、問題の傷口を広げた。今後の改善は容易ではない。DeNAに巣食った病根は深い。
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