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東京新聞 望月衣塑子記者が後藤田正晴デマツイートをバズらせるまでの軌跡 フェイクはこうして作られる

「安倍晋三だけは首相にしてはいけない。あいつには岸の血が流れている」という血統差別を含んだデマは、ネットにおけるフェイク、デマの拡散モデルとして、教科書に載せてもらいたいほどです。

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現役の新聞記者が捏造RTした後藤田正晴の言葉

「安倍晋三だけは首相にしてはいけない。人としての情がない。恥を知らない」

ネットでフェイクニュース、デマが生産される、とよく言われます。

確かにそのとおりなんですが、そのフェイクニュースが多くの人に拡散されるには、インフルエンサーの介在が不可欠です。

現在拡散中の「後藤田正晴さんの言葉」というデマツイートが拡散されていく軌跡について検証してみました。

 

すでに凍結されているアカウントのツイート

2017年11月26日のツイート

フォロワー6675人だったこのアカウントは凍結されていて現在このツイートを見ることは出来ません。

同じアイコンのアカウントは、似たIDで存在しています。(同一人物かは不明)

この2017年11月26日の(凍結されている)ツイートでは、「安倍晋三だけは首相にしてはならない。あいつには岸(信介)の血が流れている。みんなは岸の恐ろしさを知らない。」までが故後藤田正晴さんの言葉となっていて、「岸の血って、血縁って言うだけじゃないんだよね。人としての情がない。恥を知らない。そこ。岸信介と安倍晋三に共通しているのは、その恐ろしさなんだと思う。」の部分は、このアカウントの個人的な感想コメントとして書かれています。

このツイートの後、通報が殺到したのか、このアカウントは凍結されています。

 

凍結ツイートを後藤田正晴さんの画像と合成

代わって出現したのが、このツイート全体を後藤田正晴さんの画像と組み合わせて、まるで全部が後藤田正晴さんの言葉であるかのように捏造した画像ツイートです。

画像ツイートはソースもなにもなくても、人物の画像と組み合わせることによって、その人の発言であるかのように簡単に錯覚させることができます。

このアカウントが作成したのかは不明ですが、現存している一番古い画像ツイートは2017年12月21日のこれです。


魚拓

 

74回目の画像ツイートをインフルエンサーの東京新聞 望月衣塑子記者が拡散

この画像は、その後、何人かのアカウントが繰り返し繰り返しツイートをしています。

そして、5月1日、最初の画像ツイートから数えて74番目の捏造画像ツイートを東京新聞の望月衣塑子記者が、事実であるかの確認もせずに自身のTwitterで、リツイート拡散しているのです。

現役の東京新聞の記者が自身のTwitterでリツイートすることにより、捏造画像は東京新聞がお墨付きを与えるような形となり、ついにフェイクが多くの人に伝えられていきました。バズの発生です。

同じ画像ツイート(日時順)。RTではなくてこれだけの回数ツイートされている

赤が最初の画像ツイート。青が東京新聞 望月衣塑子記者が拡散したもの。

 

望月衣塑子記者がデマツイートを拡散して4000リツイート

5月3日午後9時07分現在、望月衣塑子記者がインフルエンサーになって拡散されているこのデマツイートは4083リツイート、5021いいねになっています。

魚拓

さすが後藤田正晴氏。 十数年前にこんなことを言っていた。 「安倍晋三だけは首相にしてはいけない。人としての情がない。恥を知らない」

そんなことは、後藤田正晴さんは言っていません。東京新聞の望月衣塑子記者が真偽を検証もせずに、脊髄反射的にリツイートしたことによって大変なことになっています。

 

手当たり次第に後藤田正晴さんの関連本を読んでみました

検証をするために4つの図書館を回って、後藤田正晴さんに関する本を手当たり次第に10冊借りてきて、まる1日かけて読んでみました。

「安倍晋三だけは首相にしてはならない。」の元ネタは確認できました。「安倍晋三」ではありませんが…。

知の格闘 ──掟破りの政治学講義  御厨 貴(ちくま新書)です。

 

「菅直人だけは絶対に総理大臣にしてはいかん」

知の格闘 ──掟破りの政治学講義の61ページに次のような記載があります。

後藤田さんでも「ここは駄目だから消してくれ」ということがありました。それは二カ所です。一カ所は人物批評のところで「菅直人だけは絶対に総理大臣にしてはいかん」と言いました。ちょうど彼が厚生大臣になってスターになっていたときです。「あれは運動家だから統治ということはわからない。あれを総理にしたら日本は滅びるで」と言ったわけです。
「そのまま載せます」と言ったら、「あそこは削りたい」「どうしてですか」「やっぱりまずい。自社さの内閣ができているときにスターをけなしたとなると問題があるから、これだけは削らせてくれ」と言われました。「それなら『これだけは削らせてくれ』と後藤田さんが言っていたということを話してもいいですか」と聞いたら、「それはまずいけれど、うっかりしゃべっちまったらわからないよな」と言われたので、私はその後ずっとしゃべっています(会場笑)。

「だけは」と言っているので他の政治家には言っていないでしょう。

つまり、望月衣塑子記者が拡散している「安倍晋三だけは首相にしてはならない。」は、「菅直人だけは絶対に総理大臣にしてはいかん」の改ざんです。

元ネタは「菅直人」だったものを「安倍晋三」に書き換えているものです。

望月衣塑子記者のしていることは、亡くなった後藤田正晴さんへの冒涜とも言えるでしょう。

 

「岸信介の恐ろしさが分かっていない」

わが「軍師」論―後藤田正晴から鳩山由紀夫ブレーンまで 佐々 淳行 (文春文庫) – 2010/5/7の208ページに次のように書かれています。

ワシントンで9・11を直接体験した私は、飛行再開と共に帰国し、安倍晋三官房副長官に呼ばれて官邸に赴き、憲法前文を援用しての新法(テロ特措法)を通し、海空自衛隊を派遣すべしと意見具申し、小泉総理のとり上げるところとなった。激怒したのは後藤田さんだ。
切りたくても切れない「上司」の怒りの長電話に閉口した。
「君だろう? 安全保障問題、真白な安倍晋三にいらんこと吹きこんだのは? ワシは絶対反対だぞ。いくさになったら君と岡本行夫が戦犯一号、二号だ」

この長電話のエピソードが、2006年9月2日付の毎日新聞に書かれている後藤田正晴さんが、危機管理問題の専門家、佐々淳行元内閣安全保障室長に言ったという次の言葉なのでしょう。

「おまえ、(安倍氏に)変なことを吹き込むんじゃないよ。(岸氏の影響を)心配しているんだ。岸信介の恐ろしさが分かっていない」と語ったという。

(安倍人脈:次期政権像を探る/5止 「長州」の系譜―「毎日新聞」2006.9.02)

 

ここでいう、岸信介さんの影響とは、「憲法前文を援用しての新法(テロ特措法)を通し、海空自衛隊を派遣すべし」という考え方への影響であることであることがわかります。

防衛問題の考えについてだけは、後藤田正晴さんと佐々淳行さんの間で、「しばしば激しい論争になった」と、この本に書かれています。

 

まとめ

  1. 東京新聞 望月衣塑子記者がインフルエンサーになって4000リツイート以上も拡散されている後藤田正晴さんの言葉は全部デマ。
  2. 反安倍の人が、地道に繰り返し繰り返しツイートしていたデマ画像を、東京新聞の現役記者がリツイートすることにより、内容が正しいと勘違いした多くの人たちに拡散されていった。
  3. 「安倍晋三だけは首相にしてはならない」の元ネタは「菅直人だけは絶対に総理大臣にしてはいかん」。
  4. 「あいつには岸(信介)の血が流れている。みんなは岸の恐ろしさを知らない」は、後藤田正晴さんが「海空自衛隊の派遣」に反対した時の佐々淳行さんへの長電話。ただし「血が流れている」の発言は出典確認できず。
  5. 「岸の血って、血縁って言うだけじゃないんだよね。人としての情がない。恥を知らない。そこ。岸信介と安倍晋三に共通しているのは、その恐ろしさなんだと思う。」は、ユーザー(Twitterかブログか掲示板)の個人的なコメントで、後藤田正晴さんの言葉ではない。

以上のように、東京新聞 望月衣塑子記者がリツイート拡散している「さすが後藤田正晴氏。 十数年前にこんなことを言っていた。 「安倍晋三だけは首相にしてはいけない。人としての情がない。恥を知らない」」は、全くのデマです。



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